肩関節の人工関節|スポーツ整形外科|整形外科
肩関節の人工関節について
壮年期以降の肩関節の痛みや機能障害に対して、まず凍結肩や腱板損傷、変形性肩関節などの鑑別が重要となります。最終的に機能障害や痛みが他の治療で改善しない場合には人工関節の手術が必要になる場合があります。肩関節には大きく分けて2種類の人工関節があります。
人工関節が必要な肩関節の痛みや機能障害は、大きく分けて2つの原因があります。①上腕骨頭と肩甲骨窩の関節面が変形することによるものと、②修復できない大きな腱板断裂によるもので、その原因により使う人工関節を選択します。
一般的に、人工関節置換術は関節面が摩耗、破壊されて変形してしまった場合に関節面を人工のものに置換することで症状を改善させる治療法です。したがって関節面が変形し痛みや機能障害がある変形性肩関節症の場合には解剖学的な人工肩関節が適応となります。
一方で肩関節は小さな関節窩の上に大きな上腕骨頭が合わさっている球関節であり、肩関節の周囲を囲むように腱板が付着して周囲の筋肉と協調して動いています。その腱板の中で、棘上筋や棘下筋は解剖学的な特徴から外傷や加齢とともに断裂しやすく、腱板が切れると上腕骨頭が上方化し、肩峰と上腕骨頭が接触してしまいます。それによって腕を自分で上げられなくなり、この状態を腱板断裂性関節症といいます。
腱板断裂性関節症では解剖学的人工肩関節(TSA)をしても、腱板が断裂しているためうまく腕を上げることができませんので腱板断裂性関節症の場合はリバース型人工肩関節(RSA)を行います。リバース型人工肩関節はフランスで開発され、日本では2014年から使用が可能となりました。ガイドラインが作成され、適応として65歳以上の腱板修復が不可能な症例とされており、基準を満たし講習を受けた医師のみが実施することができます。
リバース型人工肩関節のリバースは逆・反対という意味で、肩甲骨側(関節窩側)に半球のコンポーネントを、上腕骨側にカップ型のステムが入るため、これがリバース(関節面の形が反対になる)の名前の由来です。なぜこのような構造にするというと、通常肩関節は腱板筋の力で上腕骨頭を回転させつつ三角筋の力と協調して挙上させます。腱板機能不全に陥った腱板断裂性の関節症では回転中心を内側に移動してテコの作用を利用することで三角筋の力だけで挙上させることができます。
このように肩関節の人工関節置換術には2種類の人工関節があり、適応となる病態が違います。適切な診断と手術をすることで、肩関節機能の改善が見込まれます。
図1:変形性肩関節症(肩甲上腕関節)
図2:腱板断裂性関節症
TSA(Total Shoulder Arthroplasty)
解剖学的人工肩関節全置換術RSA(Reverse Shoulder Arthroplasty)
リバース型人工肩関節全置換術