膝前十字靱帯(ACL)損傷|スポーツ整形外科
前十字靱帯損傷(ACL:anterior cruciate ligament injury)

前十字靭帯損傷とは
膝の前十字靭帯とは、後十字靭帯とともに膝の中央(顆間部)でそれぞれの靭帯がお互いに十字になるよう交差しており、膝の安定性をもたらしています。
主にスポーツにおける膝の怪我でよくみられるのが前十字靭帯損傷や内側側副靭帯損傷、半月板損傷です。前十字靭帯損傷は主にスポーツ中などに受傷することが多く、膝の機能障害をおこします。受賞は急激な減速動作や方向転換、ジャンプ着地などや、タックルなどにより膝を外反(膝が内側に入る)して捻ることで発生します。受傷時には断裂音(Pop音)や脱臼感(膝がずれる、ぬけるような感覚)を感じるという患者さんが多いです。最初は膝が腫れて痛みも強く歩くことも難しいこともありますが、徐々に腫脹や疼痛も改善していき、そのままでも日常生活は可能です。しかし膝くずれ(膝がガクッとずれる)を繰り返し、徐々に関節の軟骨や半月板などの正常組織が損傷する恐れがあります。ですので、膝の不安定感や膝くずれを自覚する人やスポーツに復帰したい人には手術が必要です。

MRI:正常な前十字靭帯
MRI:損傷した前十字靭帯
前十字靭帯損傷の治療
前十字靭帯損傷は自然に治癒することは期待できないため、保存治療(手術をしない治療)としては膝の機能低下を防ぐための筋力トレーニングや可動域訓練が中心になります。前十字靭帯損傷では膝の不安定性によりスポーツ活動や日常生活に支障をきたすことが多く、そのような場合にはスポーツへの復帰が難しく保存療法では経年的に半月板損傷、変形性関節症に進むことが多いため、機能不全を生じている場合には手術療法が望まれます。
手術は関節鏡による自家腱(半腱様筋腱・薄筋腱・大腿四頭筋腱・膝蓋腱など)を用いた靭帯再建術を行います。再建靭帯を採取して、脛骨および大腿骨の靭帯付着部に骨孔(骨のトンネル)をあけ、そこに再建靭帯を通して大腿骨、脛骨で固定して靭帯を再建します。再建術後に再びスポーツ復帰ができるまで8-9か月程度の長期の治療が必要です。
手術時の関節鏡の画像
断裂し緊張を失った前十字靭帯
ハムストリング腱により再建された前十字靭帯
使用する移植腱の種類

当院での前十字靭帯再建術の術後リハビリテーションの例
(あくまで目安ですので手術の内容や年齢、競技レベルによって変わります)
術後 | 術後1日から松葉杖での歩行(手術した足に体重をかけないように) |
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術後7日 | 徐々に膝の可動域(曲げ伸ばし)訓練を開始し、患肢に体重をかけ始める (同時に半月板を縫合した場合には術後2週から可動域訓練、体重をかけるのは術後3週以降から) |
術後7-12日 | 退院 |
術後4週~6週 | 日常生活動作(歩行、階段昇降など)の獲得を目指す |
術後8~12週 | ジョギングから開始 |
術後3か月前後 | 装具を外す |
術後5~6か月 | ダッシュ、アジリティトレーニング |
術後8~9か月 | 競技完全復帰 |