クリニカルフェロー研修後記|外傷再建センター

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【執筆者】
済生会新潟県央基幹病院 外傷再建外科 部長
濱口 隼人

私は2023年4月から2025年3月までの2年間、新百合ヶ丘総合病院 外傷再建センターにフェローとして在籍し、多くの学びを得ることができました。きっかけは2022年の骨折治療学会で、峰原先生にお声かけいただいたことでした。整形外科医としてこれまで骨折治療を中心に診療を行ってきましたが、日本を代表する外傷治療の専門家が集う新百合ヶ丘総合病院であれば、より幅広く、より深く外傷医療を学ぶことができるのではないかと思い、挑戦することを決意しました。新しい環境での挑戦は大きな決断でしたが、それに見合うだけの学びを得られると考えての選択でした。

実際に赴任してみると、まず症例の豊富さと多様性に圧倒されました。日常的に扱う四肢の一般的な骨折症例に加え、手外科症例、小児骨折、皮弁を用いた再建症例と幅広い領域を経験できました。さらに、変形癒合後の骨盤骨折など、国内でも限られた施設でしか経験できない症例にも関わることができました。これらの症例は、教科書的な知識だけでは到底対応できない難しさがあり、常に「どうすればより良い治療ができるか」を考え続ける毎日でした。時に長時間に及ぶ手術で体力的にも厳しい日もありましたが、そうした場面こそが自分の弱点や課題を浮き彫りにし、次の成長につながったと実感しています。

この2年間で得られたのは、手技や知識の習得だけではありません。むしろ大きかったのは、「チームとしてどう機能するか」「医師としてどう人と向き合うか」といった点でした。外傷治療は迅速な判断とチームワークが求められるため、時に意見が分かれる場面もありましたが、その都度、自分の考えを整理し、他者を理解しようと努めることで、医師としての幅を広げることができたと感じています。

そして最大の財産は、全国から集まったフェロー仲間との出会いでした。彼らは専門性だけでなく人間性にも優れ、日々のディスカッションや症例検討を通じて常に刺激を与えてくれました。また、海外からの留学生とも交流する機会があり、彼らと共に症例に取り組み、日常的に英語で会話する中で、少しずつ英語でのコミュニケーションにも慣れることができました。国際的な視点や文化の違いに触れられたことも大きな刺激であり学びでした。仲間と過ごした時間が、困難を乗り越えるための大きな支えとなりました。

また、澤口先生、峰原先生、高群先生にはAO活動にもお声がけいただき、教育・研究の面でも大きな経験をさせていただきました。AOテーブルインストラクターとして教育に携わったこと、ECTESを含む海外学会で発表の機会を得られたことは、私にとって大きな財産です。これらは決して自分一人では得られなかった機会であり、先生方のご厚意に心より感謝申し上げます。

この文章を書いている現在、私はAO Trauma Fellowshipでドイツ・フライブルク大学の整形外科に短期留学しています。ここでは多様なバックグラウンドを持つ医師たちが互いを尊重し合い、専門性だけでなく人間性の面でも成長できる環境にあります。新百合ヶ丘総合病院での経験があったからこそ、この異なる環境での学びを一層深く受け止めることができていると感じています。異なる文化や組織で診療に携わることは、自分の立ち位置を見直し、医師としての視野を広げる大きな機会です。新百合ヶ丘での2年間の挑戦と、フライブルクでの短期留学という連続した経験は、私にとってかけがえのない学びとなっています。

2年間を振り返ると、数多くの貴重な症例や学術的な機会に恵まれただけでなく、「医師としてどうあるべきか」を深く考える時間でもありました。時に困難や葛藤もありましたが、それらも含めて大きな成長につながったと実感しています。今後も、患者さんにとって最善の治療を提供できる医師を目指して努力を重ね、日々の臨床や後進の育成にも活かしていきたいと思います。

最後になりますが、外傷再建センターの先生方、スタッフの皆様、そして第2医局で共に学んだフェローの仲間達、皆様に心より感謝申し上げます。