内分泌疾患|糖尿病・内分泌代謝内科
主な症状
- 甲状腺疾患:甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、慢性甲状腺炎(橋本病)、甲状腺機能低下症、破壊性甲状腺炎、甲状腺腫瘍
- 間脳下垂体疾患:高プロラクチン血症、クッシング病、先端巨大症、バソプレシン分泌低下症(中枢性尿崩症)、バソプレシン分泌過剰症(SIADH)
- 副甲状腺疾患とカルシウム代謝異常:副甲状腺機能亢進症、骨粗しょう症
- 副腎疾患:原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、副腎不全
- 性腺疾患:性腺機能低下症
内分泌疾患とは
内分泌とはホルモンとほぼ同じ意味です。ホルモンのおもな作用は成長、生殖、抗ストレス、緻密な体内環境の維持です。ホルモンは、視床下部(間脳)、下垂体(前葉、後葉)、甲状腺、副甲状腺、副腎、膵臓、腎臓、性腺などで産生・分泌されます。たとえば、下垂体だけでも8種類のホルモンが産生されます。
内分泌疾患はこれらのホルモンの産生・分泌の過剰または欠乏の結果起き、全身に様々な症状が現れます。症状だけで診断できることもありますが、軽症では見逃されることも稀ではなく、心身症などと誤診されることがあります。
バセドウ病
内分泌疾患の中でも最も頻度が高く、甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気です。甲状腺ホルモンは全身の新陳代謝を高めるホルモンであるため、このホルモンの異常高値によって代謝が異常に活発になることで、心身に様々な影響を及ぼします。ほかの甲状腺の病気と同じように女性に多い病気です。発病年齢は、20歳代、30歳代が全体の過半数を占めます
下記のような症状が複数ある場合、バセドウ病疑われますので、早期に医療機関を受診してください。
- 首の正面が全体に腫れる
- 眼球が突出する、瞼が閉じにくい
- 動悸がする、脈が速くなる
- 手足や体が細かく震える
- 暑がりになり、汗をたくさんかく
- 食欲はあるのに太らない、あるいはやせる
- 精神的に不安定になる、イライラする、集中力がなくなる、落ち着かない
- 下痢をしがちになる
おもな検査内容
甲状腺疾患
- 甲状腺ホルモン(fT4、fT3)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、TSHレセプター抗体(TRAb)、抗サイログロブリン抗体、抗TPO抗体
- 甲状腺エコー
- アイソトープ(放射線ヨウ素)検査:バセドウ病では甲状腺に放射性ヨウ素が集まります。
- 生検・病理検査:甲状腺腫瘍の場合、他診療科や他施設で行うことがあります。
その他の内分泌疾患
- それぞれの内分泌臓器から分泌されるホルモンとその上位ホルモンの血中濃度
- 各種負荷試験:負荷試験を行うことによって、内分泌臓器の異常部位の詳細な診断ができます。
- CT・MRI:腫瘍が疑われる場合
- 骨粗しょう症:骨密度検査
- 静脈サンプリング:手術を前提にホルモン産生腫瘍の部位診断のために行います。院内他診療科または他施設に依頼します。
バセドウ病に対する治療方法
内服薬(抗甲状腺薬、場合によりヨウ素)
甲状腺ホルモンの合成を抑える薬(抗甲状腺薬)を服用する方法で、患者さんの状態に応じて、適量の薬を飲んでいれば、1~3カ月で血液中の甲状腺ホルモンの濃度が正常になります。そうなれば自覚症状もとれ、普通の人とまったく変わらない生活ができるようになります。服薬治療で大事なことは、定期的に甲状腺ホルモンの量を測定しながら、適量の薬を服用することです。バセドウ病の病勢が軽い方の場合は、抗甲状腺薬の必要量が減少していきます。
以下の治療法については、当院他診療科または専門医療機関に紹介させていただきます。
アイソトープ(放射性ヨウ素)治療
放射性ヨウ素を服用して、甲状腺に集まった放射性ヨウ素の働きで甲状腺の細胞の数を減らす方法です。甲状腺細胞の数が減少すれば、分泌される甲状腺ホルモンの量も少なくなり、放射性ヨウ素を服用後、およそ2~6カ月で甲状腺ホルモンの分泌は減少してきます。手術のように傷が残らず首の腫れが縮小し、薬より早く治るのがこの方法のよいところです。
ですが、同じように治療しても細胞が減りすぎて、逆に甲状腺の機能低下を起こす場合があり、残念ながら、これを完全に防ぐことはいまのところ困難です。しかし甲状腺の機能低下は、甲状腺ホルモン薬を服用していれば簡単にコントロールでき、甲状腺ホルモン薬自体には副作用はありません。
手術療法
過剰にホルモンを分泌している甲状腺を切除する方法で、手術は基本的に全身麻酔で行い、ホルモンの過剰産生を是正するためです。手術療法を行う目的は、「内服薬を必要としない甲状腺機能の正常化」ですので、これを実現するために、「甲状腺亜全摘術(適正な量の甲状腺を残し、残りの甲状腺を切除するという方法)」を標準方法として採用しています。
しかし、残す甲状腺の量が多いと機能亢進症が再発し、少ないと機能低下症になります。さらに、患者さんごとに適正な甲状腺の量は異なるため、残すべき適正な量を手術前に予測することは困難です。 一方で、機能亢進症の再発がみられる患者さんもいるので、再発は手術後何年経っても起こる可能性があり、生涯にわたり検査が必要となります。
手術療法が望ましい患者さんには、甲状腺の全て、またはほぼ全てを切除することをお勧めしています。この手術方法によって、手術後に再発することはなくなりますが、一方で全ての患者さんが甲状腺機能低下症になるため、甲状腺ホルモン薬の内服が必要となります。
甲状腺ホルモン薬を飲み続けるということに抵抗がある方もいるかもしれませんが、機能亢進症に比べて心身への負担も少ないですし、内服する量が決まれば甲状腺機能は一定になり体調も安定します。副作用の心配もなく、長期の処方も可能になりますので、通院回数も少なくなります。