広報紙 vol.74しんゆりニュースレター

2024/7/1掲載

消化器外科特集

小児科特集|広報紙

インターネット空間と子どもの健康

  • 新百合ヶ丘総合病院
    名誉院長・発達神経学センター長
    たかはし たかお
    高橋 孝雄医師
  • 【プロフィール】
    慶應義塾大学医学部卒、医学博士、慶應義塾大学名誉教授。米国マサチューセッツ総合病院小児神経科、ハーバード大学医学部神経学講師を経て、慶應義塾大学医学部小児科主任教授、慶應義塾大学病院副病院長、日本小児科学会会長、日本小児神経学会理事長を歴任。令和5年4月より現職。著書に「小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て」(マガジンハウス)などがある。
  • “子どものことなら何でも診ます”、つまり子どもの総合医であることが、小児科医という仕事の大きな魅力だと言われます。しかし、“何でも”と言っても、特に現代の高度で細分化した医療では現実的には実践は難しいものです。とりあえず自分で頑張ってみる、と言った方が現実に近いかと思います。「自分が助けてあげたい。まずは相談に乗ってみよう」という意気込みです。

    今回は、病院とは関係なさそうな話題、インターネットを取り上げてみました。子どもの成長や健康維持に必要な愛情や栄養、睡眠と同じように、子どもたちが一日数時間を過ごすことも珍しくないインターネット環境について、私たち“しんゆり小児科”も大いに興味をもっているのです。

    日常生活に関わる情報のほとんどがデジタル化され、コミュニケーションの大半がインターネット上で成り立つデジタル社会ができ上がりました。インターネット空間の整備・拡張がもたらした最大の恩恵は情報収集の効率化です。ネット上では場所と時間を問わず、溢れんばかりの情報が共有されています。情報通信技術(ICT)は早期教育や学校教育に活用され、育児、教育における存在感は増すばかりです。

  • 一方、あらゆる社会環境の急激な変動がそうであったように、インターネット上の楼閣には弱点、リスクもあります。

    SNSがもたらした“つながっているという感覚”、孤独からの解放は、一方で無言、孤立という状況を生み出しています。コミュニケーションのための技術によって、真のコミュニケーションが駆逐されているのではないでしょうか。異なる立場、意見にも心を配るという面倒な作業からの解放は、子どもたちから想像力、共感力、意思決定力を奪っています。

    仮想現実(VR)もまた子どもたちの日常に鮮烈な刺激をもって浸透しています。VRの一種であるゲームの魅力はだれもが認めるところです。満足感、多幸感を容易に得ることができる場合、そのリスクにも注意が必要です。仮想空間での非現実的体験は麻薬性があり、実体験を駆逐することによって子どもたちの発達に様々な影を落とします。

    こんなことを考えながら、「子どものことならまずは我々が」という意気込みで頑張っております。

【目次】

子どもの脳の鉄欠乏

発達神経学センター長 高橋 孝雄

鉄と言えば「鉄欠乏性貧血」ですね。しかし、小児神経の視点では、脳の鉄欠乏はかなり深刻な問題です。鉄不足で最初に減ってしまうのが実は脳の鉄です。貧血になる前から、脳は鉄欠乏状態にあるのです。貧血はゆっくり進行していくと症状が出にくいものですが、脳の鉄不足は貧血よりもさらに症状に気づきにくく、検査で調べることもできません。

鉄は、脳内でドーパミンやセロトニンなどの量や働きを調整したりするために必須の元素です。また、脳の活動に不可欠のエネルギーを作るためにも必要です。

乳幼児の脳の健全な発達に、特に鉄が重要であることは見逃されがちです。少しの刺激で過敏に泣く、落ち着きがない、などの症状が、脳の鉄欠乏によるものである可能性もあるのです。

  • 子どもの脳の鉄欠乏イメージ
  • 鉄欠乏状態と因果関係が濃厚なのは、熱性けいれんです。特に、ご家族に熱性けいれんの方がいないのに、お子さんだけが頻繁にけいれんするようなら、鉄を測ったり、補充したりする価値はあるかも知れません。生後半年から2歳くらいまでは、特に鉄が不足しがちです。もしご心配であれば、遠慮なく小児科外来までご相談ください。

子どもの内分泌疾患

小児科医長 馬場 義郎

小児内分泌外来ではホルモンや代謝に関連する病気や体質を診療しています。「成長ホルモン」「男性/女性ホルモン」の異常が代表的な例です。具体的には成長(身長・体重)、二次性徴(思春期)に関する不安、甲状腺疾患、糖尿病、高コレステロール血症、骨折しやすい体質などの問題、先天性代謝異常の検査で異常が見つかった場合など、広くご相談に対応しています。

  • 子どもの内分泌疾患イメージ
  • 例えば低身長を例にとると、子ども100人中2〜3人はその基準に当てはまることになります。しかし、必ずしも全員が治療を必要とする病気というわけではありません。また、女性を例にとると、「大人になった時に145cmあれば十分」という考え方から「160cmはほしい」という希望まで、身長に関する価値観も様々です。つまり、低身長ひとつとっても、その診断や治療方針の決定は意外に難しく、専門医の判断が必要となるものです。当外来では、お子さんのこれまでの発育状況に診察、検査の結果などを組み合わせて将来の成長を予測し、必要に応じて可能な治療法をご提案します。

内分泌や代謝の病気では、これまでの発育状況やご家族の体質が重要な手がかりになります。受診前のアンケートにご協力をお願いいたします。

子どものアレルギー

小児科医長 和田 未来

小児科アレルギー外来では、主にアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎(通年性・季節性)の診療を行っています。また、これらの疾患を複数持つ患者さんも少なくありません。包括的かつ専門的な医療を提供するために、小児呼吸器外来、皮膚科、耳鼻科、眼科と密に連携して診療を行っています。

アレルギー研究の進歩は著しく、ここ数年で“常識”が大きく変わりました。当外来では、最新の科学的根拠に基づいた診療を通じて、患者さんとご家族の生活の質が最大限に保たれることを目指しています。最新の考え方や治療法についても分かりやすくご説明しますので遠慮なくご相談ください。また、1泊2日の食物負荷試験入院など、リスクを伴う専門性の高い診断テストを安全に提供しております。

  • 子どものアレルギーイメージ
  • 行き過ぎた食事制限や無理な環境整備を避け、しかし、タイムリーで十分な介入によってアレルギー症状を和らげ、生活を豊かなものにして差し上げたいと思います。例えば、乳児湿疹やアレルギーに配慮した離乳食の進め方、アレルギーの発症予防や悪化対策に役立つ環境整備など、疑問点や不安があればお気軽にご相談ください。

子どもの腎臓疾患

小児科医長 和田 未来

腎臓は小さな臓器ですが、他の多くの臓器と協力して体内環境を一定に保つ役割を担っています。また、育ち盛りの子どもでは、ビタミンDなどを介して成長を支える重要臓器でもあります。子どもの腎疾患では、今の腎臓の機能を改善し、守ることばかりでなく、数十年後の人生を見据えた治療や管理がとても重要です。そのために、不必要な治療や過度な生活制限をしないことも大切です。

  • 子どもの腎臓疾患イメージ
  • 当科では、3歳検尿や学校検尿の異常(血尿、蛋白尿)への対応から、ネフローゼ症候群、急性腎障害、慢性腎炎、小児の高血圧、夜尿症など様々な腎・泌尿器疾患の診療を行っております。また、生まれつきの腎尿路の形態異常(低形成/異形成腎、水腎症、膀胱尿管逆流症など)の診断や管理も行っております。さらに必要であれば、腎生検などの特殊な検査も行います。また例えば、泌尿器科での手術や透析、さらに腎移植が必要な場合などにも、責任をもって近隣の専門施設へご紹介しております。

子どもの心臓疾患

小児科医長 多喜 萌

子どもの心臓疾患は生まれつきの構造異常や不整脈が中心です。全く症状がないのに、定期健診で心雑音をきっかけに重大な心臓疾患が見つかることも稀ではありません。きちんと健診を受けることが大切です。

症状があっても、子ども、特に乳幼児の場合、自分で上手く伝えることができません。例えば心不全をきたしていても、母乳やミルクを少ししか飲むことができない(哺乳不良)、体重が増えない(体重増加不良)、呼吸が浅くて速い(頻呼吸)などの症状で気づかれることがあります。失神(数秒~数十秒程度の短い意識消失)を繰り返すといった症状から、生まれつきの心臓疾患や不整脈が診断されることもあります。

当院では週に1度の小児心臓外来を設け、診療に当たっております。変だな、と思ったら、まずは当院小児科にご相談下さい。心臓病が疑われる場合には、心臓外来が担当させていただきます。

  • 子どもの腎臓疾患イメージ
  • 必要に応じて、心臓超音波検査などを行います。一方、カテーテル治療を含め、手術が必要な場合などは、慶應義塾大学病院や近隣の専門施設と連携し、最適な治療法をご提案できるようにします。

〈小児科専門外来〉

※専門外来の曜日・時間などは、ホームページの外来診察担当表にてご確認ください。

  1. 発達神経外来 (てんかん、頭痛、神経発達症、くりかえす熱性けいれんの管理)
    月曜午前・午後、水曜午前、金曜午後
  2. 心臓外来 (先天性心疾患、不整脈、川崎病、など。学校心臓病検診にも対応)
    土曜(第1以外)午後
  3. 腎臓外来 (腎炎、ネフローゼ、慢性腎疾患、夜尿症。学校腎臓病検診にも対応)
    第2・4金曜午後、第1・3土曜午後
  4. 呼吸器外来 (小児喘息・喉頭軟化症などの呼吸器疾患、長引く咳などの管理)
    第2・4水曜午後
  5. 内分泌外来 (低身長、甲状腺疾患、糖尿病、副腎疾患、性腺疾患、など。学校糖尿病検診にも対応)
    月曜午後、木曜午後
  6. アレルギー外来 (気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの専門的管理)
    第3水曜午前・午後
  7. 血液外来 (貧血、白血病の診断、出血性疾患、リンパ系疾患、腫瘍性疾患の診断、など)
    第2・4土曜午後
  8. 舌小帯外来 (舌小帯短縮症、上唇小帯短縮症)
    月曜午前、金曜午前
  9. 小児外科外来 (臍ヘルニア、鼠径ヘルニア、肛門疾患、膀胱尿管逆流症、など)
    火曜午前、第4土曜午前・午後
  10. 遺伝・代謝・内分泌外来 (神経難病、先天代謝異常症、遺伝子診断、など)
    木曜午前

小児科 医師紹介

小児科 医師紹介ページ

①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格等
  1. 高橋 孝雄(名誉院長、発達神経学センター長)
    ①東京慈恵会医科大学医学部 ②虚血性心疾患、心血管インターベーション、循環器疾患一般 ③医学博士/日本内科学会総合内科専門医・指導医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本心血管インターベンション治療学会専門医/CQSO(最高質安全責任者)1期生
  2. 下郷 幸子(小児科部長)
    ①小児科一般、小児神経 ②福井大学医学部  ③日本小児科学会小児科専門医/日本小児神経学会専門医
  3. 馬場 義郎(小児科医長)
    ①小児科一般、小児内分泌代謝 ②浜松医科大学医学部 ③日本専門医機構認定小児科専門医
  4. 和田 未来(小児科医長)
    ①小児科一般、アレルギー ②東京女子医科大学医学部  ③日本小児科学会小児科専門医/日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
  5. 本田 尭(小児科医長)
    ①小児腎疾患、小児リウマチ性疾患 ②慶應義塾大学医学部 ③日本小児科学会小児科専門医・認定指導医/日本腎臓学会腎臓専門医
  6. 多喜 萌(小児科医長)
    ①小児科一般/小児循環器 ②日本大学医学部  ③日本小児科学会小児科専門医
  7. 堤 健太郎(小児科医員)
    ①小児科一般 ②佐賀大学医学部 ③日本小児科学会所属
  8. 髙橋 哲朗(小児科医長)
    ①小児科一般、小児神経 ②慶應義塾大学医学部 ③日本小児科学会小児科専門医
  9. 鈴木 惟子(小児科医員)
    ①小児科一般、小児腎臓 ②慶應義塾大学医学部 ③日本専門医機構認定小児科専門医
  10. 木村 あやの(小児科医員)
    ①小児科一般 ②慶應義塾大学医学部 ③日本小児科学会所属

【非常勤】

  1. 衞藤 義勝(小児科 先端医療研究センター長/遺伝病研究所所長)
    ①小児科・遺伝相談・代謝内分泌(ライソゾーム病治療を含む)②東京慈恵会医科大学医学部 ③日本小児科学会小児科専門医・指導医/日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医・指導医/日本小児神経学会専門医・指導医
  2. 伊藤 泰雄(舌小帯外来)
    ①舌小帯手術・上唇小帯手術 ②慶應義塾大学医学部 ③日本外科学会専門医・指導医/日本小児外科学会専門医・指導医
  3. 宮國 憲昭(小児外科)
    ①小児外科一般 ②東京慈恵会医科大学医学部 ③日本外科学会専門医