肝疾患|対象疾患|消化器内科(内視鏡内科・肝臓内科)
対象疾患
肝疾患(ウイルス性肝炎、肝硬変、脂肪性肝疾患、自己免疫性肝疾患、アルコール性肝疾患、薬物性肝疾患、肝臓がん)
肝疾患について
主な症状
肝臓に障害がみられてもすぐに症状が出ないことが多く、そのため肝臓は「沈黙の臓器」といわれています。
障害が高度になると
・目や体が黄色くなる(黄疸)
・手のひらが赤くなる(手掌紅斑)
・体の表面の細い血管が浮き出てくる(血管腫)
・出血しやすくなる(出血傾向)
・口臭がある
・おなかがふくれてくる(腹水)
・すぐ眠ってしまう(肝性脳症)
などの症状がみられることがあります。進行すると食道の静脈が太くなり(食道静脈瘤)、出血して吐血をきたすこともあります。
主な原因
ウイルスによる肝炎とウイルス以外が原因で起こる肝障害とに分けられます。
ウイルス以外が原因で起こる肝障害には、脂肪性肝疾患、アルコール性肝疾患、薬物性肝障害、自己免疫性肝疾患、先天性肝疾患などがあります。
ウイルス性肝炎
感染しているウイルスにより、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎と名付けられています。 D型肝炎は日本ではあまり見られません。 A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、E型肝炎は、いずれも急性肝炎で発症することがあります。 A型肝炎とE型肝炎は、主に食物を介して感染し、ときに集団での感染が見られます。
肝炎が重症化すると肝臓の機能が低下し、肝不全に陥り、出血傾向、肝性脳症、腹水などが出現することがあります。 この状態を 劇症肝炎といい、患者さんの生命が危険な状態に陥るため集中的な治療が必要になります。 内科的な治療では約40%、肝移植では約70-80%が救命できるといわれています。
B型肝炎、C型肝炎は慢性化することがあり、適切な経過観察や治療が必要です。 これらの肝炎は、患者さんの血液や体液が、傷口や粘膜に接触することで感染します。感染源が特定されないこともあります。
B型肝炎は、新生児期や幼少期に感染すると高率に慢性化します。
近年、成人での感染でも慢性化する例が増加しています。ウイルスの増殖を抑制する薬( 核酸アナログ製剤、インターフェロン)が開発されており、適切に使用することで、肝炎の進行を抑えることが可能になってきました。
C型肝炎は、急性肝炎で発症した際に無治療で放置すると、70%が慢性肝炎になります。 適切に治療を受けると90%は慢性化を阻止できます。
C型肝炎が慢性化した場合には、 内服薬での治療により、大きな副作用なしに約95%程度の方はウイルスを排除できるようになりました。治療を行うかどうかについては、検討が必要ですので、担当医にご相談ください。慢性肝炎が進行すると肝硬変に至り、さらに肝臓がんを合併することがあります。
ウイルス | A型肝炎 | B型肝炎 | C型肝炎 | E型肝炎 |
---|---|---|---|---|
潜伏期間 | 2-6週 | 2-6ヶ月 | 2週-6ヶ月 | 2-5週 |
慢性化 | なし | あり | あり | なし |
劇症化 | 0.1 % | 1-2 % | 0.1 % | 2-5 % |
予防ワクチン | あり | あり | なし | なし |
集団感染 | あり | なし | なし | あり |
感染経路 | 食物から 感染 | 血液、体液から感染 | 血液、体液から感染 | 食物から 感染 |
脂肪性肝疾患
脂肪性肝疾患と診断するには、ほかに肝障害の原因となる病気がないかを精査し、画像上肝臓に脂肪の沈着があるかどうかをみることが重要です。脂肪性肝疾患の中には、 単純性脂肪肝と、進行して肝硬変に移行する可能性がある脂肪性肝炎とがあります。
肝硬変に至ると肝臓がんを合併する可能性があります。 脂肪性肝炎は肝生検を行い診断します。治療で重要なのは、まず食事療法と運動療法で体重を減らしていただくことです。薬物での治療効果は限られています。
自己免疫性肝疾患
免疫とは、本来は外界の細菌、ウイルスやその他の微生物から体を守るために備えられている人体の機構です。リンパ球やマクロファージといった免疫細胞が微生物の体内への侵入を感知し、感染に対して人体を守る働きを示します。しかし、さまざまな要因によりその機構が異常反応を起こすことにより、免疫細胞が自分自身の肝臓を攻撃してしまうことがあり、そのような病態を自己免疫性肝疾患と呼んでいます。
自己免疫性肝疾患には、 原発性胆汁性胆管炎、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎があります。いずれも難治性ですが、早く病気を見つけることにより、病気の進行を遅らせることができる場合があります。
アルコール性肝疾患
アルコールの過剰摂取により、肝臓は障害を受けます。進行度や病態により、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝線維症、アルコール性肝硬変に分類されます。肝臓を守るためには、とにかく禁酒をお守りいただかなければなりません。禁酒をお守りいただかなければ、病気の進行を食い止められません。
薬物性肝疾患
どのような種類の薬や健康食品でも肝障害を起こす可能性があります。薬は必要なものを最小限飲んでいただくことをお勧めします。
薬物性肝障害が疑われた場合は、対象となる薬物をすぐに中止することが何より重要です。
その他の肝疾患
肝臓に銅がたまるウイルソン病、鉄がたまるヘモクロマトーシス、特殊な蛋白質がたまるアミロイドーシスなどがあります。
胆道感染などにより肝臓に膿がたまる 肝膿瘍という病気もあります。健康診断の超音波検査でしばしば見つかる肝嚢胞や肝血管腫も定期的な検査をお勧めします。
肝硬変
肝疾患が進行すると肝臓に線維化が起こり、肝臓が次第に硬くなっていきます。さらに進むと 肝硬変に至ります。肝硬変は各種肝疾患の終末像と言えます。
肝硬変の原因は、ウイルス性(約40%)、アルコール性(約30%)が多く、そのほか脂肪性肝炎(約10%)、自己免疫性(約10%)などが挙げられます。肝硬変が進むと肝臓が機能しなくなり、肝不全という状態になります。その際には、黄疸、浮腫、腹水、肝性脳症、出血傾向などの症状が現れますが、肝硬変の初期にはこれといった症状がみられないこともあります。
まず肝障害の原因への対策が重要で、ウイルス性の場合には可能であれば抗ウイルス療法、困難であれば肝庇護療法を行い、アルコール性の場合は禁酒が必要です。腹水、脳症や合併しやすい 食道静脈瘤(食道表面の血管のこぶ)に対する対策も必要です。
肝がん
他の臓器からの転移を除けば、肝臓がんの中で一番多いのは肝細胞がんです。肝細胞がんは、ウイルス性肝炎の方に多くみられていましたが、近年はアルコール性肝疾患、脂肪性肝疾患などを基礎疾患としてみられることが増えています。肝障害がない方にいきなり肝細胞がんが出現することは稀です。
治療法としては、外科的切除、ラジオ波焼灼療法、経カテーテル的肝動脈塞栓術、肝動注化学療法、分子標的薬治療などが挙げられます。腫瘍の大きさや個数、肝機能の状態、全身状態により治療法を選択します。