脊髄腫瘍・脊椎腫瘍|対象疾患・治療法|脊椎脊髄末梢神経外科
脊髄腫瘍は脳腫瘍の1/10以下の発生頻度で、1年間に10万人に1人の発病率です。非常にまれな疾患ですが、ほとんどは適切な手術により良好な結果を得ることが出来ます。脊髄腫瘍の約30%を占めるのが、脊髄から分岐した神経根(ほとんどが感覚神経)より発生する神経鞘腫です。症状は発生した神経が支配する神経痛ですが、増大により脊髄が圧迫されると脊髄症状が出現します。提示する症例は馬尾神経発症例です(図1)。

次に約20%を占めるのが髄膜腫です(図2)。脊髄を覆うくも膜もしくは硬膜から発生し、脊髄を圧迫することで症状が出現します。神経鞘腫と異なり、胸髄に好発します。

次に、脊髄そのものから発生する腫瘍のうち、約50%を占めるのが上衣腫です(図3)。MRIでは造影剤による明瞭な造影効果を呈します。一般的には良性で、正常脊髄との境界が明瞭であることが多く、全摘出できれば治癒も可能です。約30%を占めるのが星状細胞腫です。

正常脊髄との境界が不明瞭で全摘出は困難であり、細胞の悪性度が高いものもあり、一番治療が難しいと言えます。手術だけでの根治は難しく、脳腫瘍の治療に準じて放射線治療・抗がん剤治療・分子標的薬といった追加治療が必要になります。その他、脊髄内に発生する血管腫(海綿状血管腫)や動静脈奇形といった血管病変が発生することもあります。海綿状血管腫は出血を繰り返し、徐々に増大し、脊髄症状を呈しますが、手術を行うことで良好な結果が得られることが多いです(図4)。

脊椎腫瘍で問題になるのは転移性脊椎腫瘍です(図5)。通常は腫瘍転移に伴う骨破壊による疼痛で発見されますが、脊髄・馬尾神経圧迫による運動麻痺で見つかることもあります。原発癌に対する抗がん剤治療・疼痛管理として転移椎体に対する放射線治療が原則ですが、外科治療を先行させることもあります。患者さんの個々の状態に応じて治療方法を検討しています。提示するのは肺癌からの第4腰椎転移例です(図4)。下肢運動障害・排尿障害で見つかりました。後方除圧及び後方固定術を施行しています。

いずれにおいても上肢・下肢痛といった神経根痛、もしくは運動障害、排尿排便障害といった脊髄症状を示します。少しでもおかしいと感じたときは検査を受けることが重要です。