掲載日:2022年6月18日
【目次】
はじめに
肝臓は人体内で最も大きな臓器であり、蛋白の合成、胆汁生成、解毒、代謝などを行っています。耐久力の強い臓器であり、相当壊れない限り体に症状がでないため沈黙の臓器と言われております。しかしながら、肝臓も壊れ続けると倦怠感や黄疸などの症状が出現する場合もございます。しっかり検査を行って、病気が進行する前に助けてあげましょう!

肝機能検査でわかること
図1
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肝機能検査では、肝臓の細胞が壊れた時に血液中に出てくる酵素のAST(以前はGOT)とALT(以前はGPT)が測定されます。この数値は肝臓が壊れるスピードを反映します(図1)。
一方、γ-GTPは胆道系酵素と呼ばれており、肝臓から作られる胆汁の流れが悪くなると上昇してきます。アルコールによっても上昇しますし、そして肝臓が壊れ続けると、肝硬変に至ります。
肝硬変
肝硬変に至ると、肝臓が作られるアルブミン(Alb)やコリンエステラーゼ(ChE)が低下し、肝臓で代謝されるビリルビン(bil)の上昇(図2)やアンモニア(NH3)の上昇(肝性脳症)が生じ、さらに腹水(図3)が認められると、肝臓が機能不全に至ります。
図2:黄疸
図3:腹水
こうなると、自然治癒力を持った肝臓でさえも回復が困難になります。最近では脂肪肝由来の肝硬変(図4、5)も増えており、注意が必要です。
図4:肝硬変の外観(脂肪肝由来)
図5:肝硬変の組織(脂肪肝由来)
痛くない!肝臓の最新検査!
肝臓が壊れ続け、肝硬変に至る前に病気を見つけることが重要です。これまで、肝臓の硬さ(線維化)は肝臓に針を刺して組織を評価する、肝生検で診断されておりました。しかしながら、最近では超音波やMRIを用いて、肝臓の硬さを痛みなく検査できるようになっております。これをエラストグラフィと呼びます。これを行うと、肝臓の硬さのみならず、脂肪の量も正確に評価できます。近年、爆発的に増加している脂肪肝の診断に極めて有用な検査です。肝臓の異常を指摘されましたら、まずこちらの検査を受けてみましょう!
超音波エラストグラフィ(フィブロスキャン)
MRエラストグラフィ
正常な肝臓
肝硬変
体への負担の少ない肝癌治療について
肝細胞癌ラジオ波焼灼療法
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肝硬変に至り、その後肝臓癌ができてしまった場合、どのような治療があるかご存知ですか?癌というと、お腹を切って、肝臓を大きく切ってというイメージがあるかもしれません。ただ、当院ではある程度の大きさであれば、お腹を切らずに針を刺して焼いてしまう、ラジオ波焼灼療法やマイクロ波凝固療法を積極的に行っております。通常であれば痛い治療ですが、鎮静剤、鎮痛剤を用いてほとんど寝た状態で治療することが可能です。また、カテーテル治療や放射線治療の一つであるサイバーナイフ治療も行っており、手術や穿刺が難しい場所の癌も治療可能です。これらの治療は肝細胞癌のみならず、転移性肝癌に対しても適応を十分検討の上、行うことが可能です。ぜひ一度ご相談ください。
肝細胞癌ラジオ波焼灼療法前
ラジオ波焼灼療法後
まとめ
肝臓は沈黙の臓器のため症状に出にくいため、必ず健康診断を受けましょう!
肝機能障害が指摘されたら、黄疸や腹水が出る前に一度専門医を受診しましょう!