広報紙 vol.92しんゆりニュースレター
2026/2/3掲載

糖尿病・内分泌代謝内科特集|広報紙
地域との連携で予防・診断・治療する糖尿病・代謝・内分泌疾患
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新百合ヶ丘総合病院
糖尿病・内分泌代謝内科 部長
糖尿病センター長、糖尿病研究所長 -
【プロフィール】
1982年東京大学医学部卒業。84年自治医科大学内分泌代謝科シニアレジデント。91年東京大学医学部附属病院第三内科助手。94年英国オックスフォード大学生理学研究室リサーチサイエンティスト。99年東京女子医科大学糖尿病センター講師。2007年東京女子医科大学糖尿病センター准教授。12年東京女子医科大学東医療センター(現附属足立医療センター)内科教授。24年現職。
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当診療科が扱う主な疾患は、糖尿病、肥満症、脂質異常症、痛風、骨粗鬆症、甲状腺疾患、その他の内分泌疾患などです。どの疾患も適切に治療されれば、病気を持たない人と変わらない寿命とQOL(生活の質)を得ることができますが、病気を放置していると重大な合併症や併発疾患により命にかかわることもあるので、軽く考えてはいけません。
糖尿病は加齢で発病しやすくなるので、高齢化とともに増加しています。国際糖尿病連合が昨年発表した「糖尿病アトラス」によると、日本人の糖尿病は2000年には710万人でしたが、2024年には1,080万人に増加したとのことです。一方、治療を受けている人は2023年の患者調査では550万人余りに留まっています。糖尿病は、予防・早期発見・早期治療が重要です。
この段階では、適切な食事・運動の実践により、投薬なしでも良好な血糖を維持できます。投薬が必要になっても、11系統もある薬物を上手に組み合わせれば、合併症抑制の目安であるHbA1c7%未満の達成が見込めます。
令和5年の厚生労働省の調査によれば、20歳以上でBMI25以上の肥満者の割合は男性31.5%、女性21.1%とのことです。
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減量により肥満と関連した併発疾患を減らすことができます。
食事・運動療法の重要性は昔から変わりませんが、2024年から非常に効果の高い薬物が使えるようになり、肥満症治療は大きく変わりました。当科でも肥満症専門外来を開設し、優れた成績を上げています。
甲状腺疾患をはじめとする内分泌疾患は、すぐに診断することが難しく、まず問診・身体・検査所見から病気の存在を疑うことが重要です。そして、正しく診断して治療を行うことが我々専門医の努めであると考えます。
当科の力が最も発揮できるのは、血糖管理目標達成が困難な糖尿病、教育(学習)入院により改善が期待できる糖尿病、周術期血糖管理、妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠、薬物投与が必要な肥満症、診断・治療が必要な代謝・内分泌疾患、中等度以上の合併症・併発疾患を持つ糖尿病・代謝・内分泌疾患などです。地域の医療機関の先生方におかれましては、当科への患者さんのご紹介をお待ちするとともに、病状が安定したならば積極的に逆紹介をして、上手に連携していきたいと思っております。
糖尿病を予防するには
糖尿病・内分泌代謝内科医員 江藤 瑠麻
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血糖値が高いという健診結果が届いた方や、かかりつけの医師から糖尿病予備軍と長年いわれている方はいませんか。症状がないからといって放置をしていると、知らぬ間に糖尿病を発症したり、糖尿病による合併症で通院が増えたりする場合があります。
糖尿病予備軍は、医学用語で境界型糖尿病と呼ばれており、空腹時血糖値が110〜125mg/dLまたは経口ブドウ糖負荷試験2時間後血糖値が140〜199mg/dLに該当するグループ群を指します。実は境界型糖尿病の時点で、血糖値が高いことによる合併症が増えるといわれており、脳や心臓などの重大な疾患による死亡リスクが高まることがわかっています。そのため境界型糖尿病の時点で健康状態を見直す必要があり、その上では、食事と運動の管理は非常に重要となってきます。
たとえば、習慣的にお菓子や食後のデザートを摂っている方はいませんか。3食の食事とは別に摂取する食べ物や飲み物は、間食と呼ばれています。間食は生活にうるおいを与えたり、気分転換になったり、人との付き合いで時に必要となる一方で、血糖値上昇や肥満の原因にもなり、摂りすぎには注意が必要です。どうしても間食を食べたくなったら、80kcalを目安(例:リンゴ1/4個、ハイカカオチョコ2〜3粒)に、糖質や脂質を抑えた間食を選ぶようにしましょう。
また日常的な運動不足は、血糖値上昇のみならずメタボリックシンドロームや生活習慣病の原因になることがあります。運動は筋力増加、体重減少、気分転換など、良い効果をたくさんもたらしますが、様々な事情で運動ができない方もいらっしゃると思います。そういった方は、日常生活での運動量(NEAT:非運動性熱産生)を増やすように心がけましょう。具体的には座る時間を少なくし、立ったり歩いたりする時間を増やすことで、日々のエネルギー消費量が増加します。こうした小さな積み重ねが、長い目で見ると大きな変化をもたらし、体重減少や血糖値改善に繋がるのです。
糖尿病・内分泌代謝内科ページ「糖尿病とその合併症について」はこちらから
当院での肥満症治療
糖尿病・内分泌代謝内科医長 山根 貴裕
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厚生労働省の調査によると、20歳以上の人の肥満(BMIが25kg/㎡以上)の割合は男性31.5%、女性21.1%となっており、特に男性では増加傾向にあります。肥満に加えて肥満に関連する健康障害(高血圧症や脂質異常症など)を合併している場合は肥満症と定義されます。肥満症はお困りの方が多い疾患ではありますが、これまで適応となる薬がほとんどなく、医学的に介入することが困難な状況でした。
しかしその状況がここ最近で一変しました。2024年2月にこれまでは糖尿病にしか適応がなかったGLP-1受容体作動薬(商品名:ウゴービ)が、2025年4月にもGIP/GLP-1受容体作動薬(商品名:ゼップバウンド)が肥満症に対して適応となりました。これらは週1回の注射薬ですが、GLP-1受容体を介して脳に作用することで食欲を抑制する効果があり、優れた減量効果を得られることが論文で示されています。
ただし、保険適応での処方には様々な条件があります。肥満がある皆さんに処方できるわけではなく、受診していただいてからすぐに処方開始できるわけでもありません。BMI>27kg/㎡の方のうち肥満に関連する健康障害を複数持つ方(BMI>35kg/㎡の際は1つ)が対象となります。
当院の肥満外来を受診いただくと医師と治療計画書を作成していきます。治療計画書によって現在の食事・運動の問題点を抽出し、管理栄養士による栄養指導を開始していきます。6カ月間の栄養指導の継続を経てようやく処方開始となります。処方開始後も2カ月ごとの定期的な栄養指導、診察を行い、食事の乱れはないか、副作用(嘔吐や下痢などが多いです)などがないかを多職種でチェックしていきます。
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残念ながら最近はこれらの薬において適応外の使用も増えてきてしまっていることから、厚生労働省は保険適応として処方できる施設基準を厳しく設定しています。当科は処方要件を満たす専門医が複数在籍しており、施設要件も満たしていることから、現在では近隣の医療機関や院内他科から患者さんを多数ご紹介いただき、治療にあたっております。肥満症について気になることがあれば、お気軽に当科にご相談ください。
内分泌疾患の診断と治療
糖尿病・内分泌代謝内科医員 豊福 伸幸
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内分泌疾患とは、ホルモンを生成しそれを血液中に放出することで体内の様々な臓器や細胞に作用させる機構に異常が起きる病気です。異常の種類には、ホルモンの産生過剰や欠乏、ホルモン産生臓器の腫瘍があります。全身には多くの内分泌を担う臓器や細胞がありますが、その代表的なものを下の図に示します。当科で扱う主な疾患は、脳下垂体疾患、甲状腺疾患、副甲状腺疾患、副腎疾患などです。
内分泌疾患の診断方法は、①症状・身体所見・一般検査所見から疑い、②ホルモン検査で機能異常を捉え、③負荷・抑制試験で病態を確定し、④画像検査で原因疾患を特定する、という段階的アプローチが基本です。
内分泌疾患を発見する上で最も重要なステップは、①の症状・身体所見・一般検査所見から疾患の存在を疑うことです。しかし、実際には診断されずに放置されている場合が多いのが現状です。我々専門医が担うのは②以下のステップです。②のホルモン検査で診断が確定する場合もありますが、さらに③のホルモン負荷・抑制試験や④の画像検査(エコー、CT、MRI、シンチグラフィー)を行ってはじめて診断が確定する場合も少なくありません。
内分泌疾患の治療は、ホルモンの欠乏がある場合は、経口薬や注射製剤を用いたホルモンの補充を行います。適切な補充量が決まれば、定期的なホルモン検査と薬剤処方で病状は安定するので、一般クリニックで治療を継続することも可能です。ホルモンの産生過剰がある場合は、薬物で産生を抑制する方法と、腫瘍による産生過剰の場合は手術切除する方法があります。
通常の診断や薬物療法は当院で行えますが、特殊な内分泌疾患や手術が必要な場合は、より高次の専門施設に紹介させていただく場合もあります。
糖尿病・内分泌代謝内科ページ「内分泌疾患について」はこちらから
糖尿病・内分泌代謝内 医師紹介
①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格等- 佐倉 宏
(糖尿病・内分泌代謝内科部長、糖尿病センター長、糖尿病研究所長)
①糖尿病を中心とした内分泌代謝領域/内科全般 ②東京大学医学部 ③日本糖尿病学会専門医・指導医/日本内分泌学会専門医・指導医/日本内科学会総合内科専門医/日本専門医機構内分泌代謝・糖尿病内科領域指導医/医学博士 - 江藤 瑠麻
(糖尿病・内分泌代謝内科医員)
①糖尿病・内分泌領域全般 ②宮崎大学医学部 ③日本専門医機構認定内科専門医/日本糖尿病学会専門医 - 山根 貴裕
(糖尿病・内分泌代謝内科医長)
①糖尿病・内分泌領域全般 ②神戸大学医学部 ③日本専門医機構認定内科専門医/日本糖尿病学会専門医/日本専門医機構内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医 - 豊福 伸幸
(糖尿病・内分泌代謝内科医員)
①糖尿病・内分泌領域全般 ②聖マリアンナ医科大学医学部 ③鍼灸学博士