卵巣がん|産婦人科|新百合ヶ丘総合病院
卵巣がんとは
-
卵巣がんは、子宮の両脇にある卵巣に発生するがんです。卵巣がんは、その発生する場所によって上皮性・胚細胞性・性索間質性などの種類がありますが、90%以上が上皮性のがんです。
また、悪性度が比較的低く、境界悪性腫瘍と呼ばれる卵巣がんも存在します。
年齢別にみた卵巣がんの罹患率は、40歳代から増加し、50~60歳代がピークですが、卵巣がんの死亡率は、50歳以降増加して高齢になるほど高くなります。
卵巣がんの原因と症状
卵巣がんの原因
卵巣がんの発生には、複数の要因が関与していると考えられ、卵巣がんで遺伝的関与があるのは5~10%ですが、近親者に卵巣がんにかかった人がいる場合は、いない人に比べて発症の確率が高いといわれています。家族性腫瘍として、乳がんと同じく、BRCA1、BRCA2遺伝子の変異が知られています。
- 妊娠、出産経験が少ない人
- 骨盤内炎症性疾患
- 多のう胞(たのうほう)性卵巣症候群
- 子宮内膜症
- 肥満
- 食事
- 排卵誘発剤の使用
- 10年以上にわたるホルモン補充療法をしている人
卵巣がんの症状
卵巣がんができても、はじめはほとんど自覚症状はありませんが、症状としては、
- 下腹部にしこりを触れる
- 圧迫感がある
- 膀胱が圧迫されて尿が近くなる
などの症状があって受診することが多いのですが、このようなときは既にがんが進行していることも少なくないのです。卵巣がんは進行すると転移し、がんが大きくなる前に転移する場合もあります。卵巣がんの場合、腹腔内(おなかの中)の臓器にがん細胞が散らばっていく播種(はしゅ)という転移が中心になりますが、おなかの中にがんが広がることでおなかに水がたまって腹部全体が張ってくる、胸にまでがんが広がることで胸に水がたまって息切れがするといった症状が出て初めて異常に気づくことも少なくありません。
卵巣がんは症状を自覚しにくいため、受診が遅れがちになり早期発見の有効な方法はまだありませんが、腹部の違和感があった場合は、早めに婦人科を受診することが大切です。
検査と診断
卵巣がんの検診は、がんの拡張を調べる検査は、内診/直腸診・超音波検査・CT検査/MRI検査等です。卵巣がんは、良性の卵巣腫瘍との鑑別が難しく、手術して組織を 顕微鏡で調べる病理検査をして診断が確定されます。
内診・直腸診
子宮や卵巣の状態を、腟から指を差し入れて調べます。直腸やその周囲に異常がないかを、肛門から指を差し入れて調べることもあります。
超音波(エコー)検査
体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像にして観察する検査です。腟の中から超音波をあてて調べ る場合もあり、卵巣腫瘍の性状をみたり、腫瘍と周囲の臓器との位置関係やほかの臓器やリンパ節への転移の有無を検査します。
CT・MRI・PET-CT検査
肺、肝臓など遠隔臓器への転移の有無、リンパ節転移の診断、周辺臓器への浸潤(がんが周囲に広がること)の程度の診断に威力を発揮します。造影剤を使用する場合、アレルギーが起きることがあります。
腫瘍マーカー(血液検査)
腫瘍マーカーとは、体のどこかにがんが潜んでいると異常値を示す血液検査の項目のことです。卵巣がんの場合、がんの可能性や転移・再発の指標として、また治療の効果判定などのためにも用いられています。卵巣がんではCA125と呼ばれるマーカーが代表的ですが、卵巣がんであっても腫瘍マーカーに異常が認められない場合もあります。また、治療効果や転移、再発の診断には腫瘍マーカーの推移が重要です。
卵巣がんのステージ
ステージの種類 | 内 容 | 深達度による分類 |
---|---|---|
ステージⅠA | がんが片側の卵巣だけにある | |
ステージⅠB | がんが両側の卵巣にある | |
ステージⅠC | がんが片側または両側の卵巣にある場合で、がんにより被膜(外層)が破裂している場合(ⅠC1、ⅠC2)、腹腔から採取した液体または腹膜を洗った洗浄液からがんが見つかった場合(ⅠC1、ⅠC2、ⅠC3) | |
ステージⅡA | がんは子宮または卵管(卵子が卵巣から子宮へと通過する細長い管)の両方またはどちらかに進展 | |
ステージⅡB | がんは骨盤の中にあるその他の臓器にまで広がっている | |
ステージⅢA1 | がんは肉眼的には骨盤内にとどまっているが、がん細胞が骨盤外の腹膜に広がっている(顕微鏡だけで診断可能) | |
ステージⅢA2 |
||
ステージⅢB | がんが骨盤外に広がっているが、その大きさは直径2cm以下 | |
ステージⅢC | がんが骨盤外に広がっていて、その大きさは直径2cmより大きく、または後腹膜あるいは鼠径リンパ節に広がっている | |
ステージⅣA | 胸水中に悪性細胞を認める | |
ステージⅣB | がんが遠隔部位に転移しているか、あるいは肝臓実質に転移している |
卵巣がんの治療
病期による治療の選択
1.手術
卵巣がんは、手術によって正確な病期が決定されます。また、必要に応じて転移巣の切除が行われ、手術は病期、転移の状態や年齢・病状などによって異なります。通常は、卵巣と卵管、子宮、大網を切除しますが、後腹膜リンパ節や腸管(大腸、小腸)、脾臓などを切除することもあります。
将来子どもを生みたいと希望する場合には、担当医と十分に話し合い、治療を受けましょう。
卵巣の切除
片側の卵巣、卵管だけを切除する場合と両側の卵巣、卵管、子宮を含めて切除する方法があります。
大網切除
大網とは胃から垂れ下がって、大腸小腸をおおっている大きな網のような脂肪組織です。大網は卵巣がんの転移が最もよく起こる組織であり、切除しても大きな影響はありません。
後腹膜リンパ節郭清(かくせい)
後腹膜リンパ節は卵巣がんの転移が起こりやすい部位のひとつです。転移が疑われるリンパ節を採取して検査することをサンプリングといい、リンパ節とリンパ管を系統的に全て切除することをリンパ節郭清といいます。
腸管などの合併切除
腹腔(ふくくう)内の転移をできるだけ切除するために、大腸、小腸、脾臓などをがんと一緒に切除することもあります。
2.化学療法
卵巣がんは、抗がん剤治療が比較的よく効くがんです。複数の抗がん剤を併用し、静脈注射で投与することが多いのですが、腹腔内に管を留置して、そこから注入することもあります。抗がん剤の副作用は人によって異なるため、効果と副作用をみながら行います。
3.放射線治療
放射線治療は、高エネルギーのX線やガンマ線でがん細胞をたたき、がんを小さくする効果があります。卵巣がんでは、取りきれないがんに対して、以前はよく放射線治療が行われてきましたが、最近では主として抗がん剤治療が行われています。現在放射線治療は、脳や骨などへの転移の症状を緩和するために行われることがあります。
よくある質問
- 卵巣がんは発見が遅れるとよく言われますが、どうしてですか?
- 卵巣は骨盤の奥深くにあります。多少の大きさでは症状が出ずらく、大きくなっても痛みが出ずらいので、放って置かれやすいということがあります。多少太ったかなと思った程度でも、卵巣がんの場合もありますので、その他の症状、たとえば出血や下腹部痛、排尿、排便での不快感などの症状があれば、特に閉経後には気軽に婦人科での受診・検査を受けてみてください。
- 卵巣が腫れていると言われましたが、どんな時に手術となるのでしょうか?
- 年齢にもより、妊娠の可能性のある年齢では5-6cmにまで大きくなることもあります。閉経後ではありえないことですので、精密検査が必要です。CT,MRI,超音波、さらには腫瘍マーカーという血液検査を受けてください。その結果、異常があれば、総合的に判断して手術が必要かどうかを判断します。
- 卵巣腫瘍というのは、すべて悪性でしょうか?
- 卵巣腫瘍は卵巣が腫大しているものすべての総称です。ですのでほとんどは良性の腫瘍で、一部が悪性腫瘍(ガン)ということになります。さらに卵巣腫瘍では低悪性度群の腫瘍があり、ちょうど良性と悪性の中間のものとなります。また、卵巣がんは実は一種類ではなく、幾つかの種類に分類でき、主に上皮性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍に分かれます。上皮性腫瘍が最も一般的なものです。胚細胞性腫瘍は若年者に多く見られます。
- 卵巣がんの治療法はどんなものがありますか?
- 卵巣がんの治療の基本は手術療法です。たとえ初期のもので進行している場合でも、とにかく初回手術で可能な限り腫瘍を切除し、残存腫瘍を少なくすることが重要なのです。その他の重要な治療法として抗がん剤を使った化学療法がありますが、卵巣がんは固形がん(血液以外のがん)の中でも非常に抗がん剤が効きやすいがんの一つです。よって、抗がん剤の使用によりより高い治療効果が期待できます。放射線治療は日本ではあまり卵巣がんにはおこなわれてはいません。