子宮頸がん|産婦人科|新百合ヶ丘総合病院
子宮頸がんとは
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子宮の細い部分(頸部)の先端が腟の奥に突き出ていて、子宮頸部の上皮(粘膜)から発生するがんのことを子宮頸がんといいます。がんは、はじめは上皮のなかにとどまっています(上皮内がん)が、次第に子宮の筋肉に浸潤(しんじゅん)します。さらに腟や子宮のまわりの組織に及んだり、骨盤内のリンパ節に転移したりします。さらに進行すると、膀胱・直腸を侵したり、肺・肝臓・骨などに転移したりします。
子宮頸がんは、40、50代に最も多い病気ですが、20代の人や80歳以上の人にもみられます。
子宮頸がんの原因と症状
子宮頸がんは他のがんと違い原因が特定されています。 原因として、とてもありふれた ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因で起こることが発見されていますが、性交渉を経験したことのある女性の80%が感染するといわれています。
感染したからといってすぐにがんが発症するわけではありません。 人間の免疫力によって多くの場合、ウイルスは体から自然に排除されます。 しかし、排除されずウイルスが子宮頸部に残り、長い間感染が続いた場合には、その部分の細胞が少しずつがん細胞へと進行してき、子宮頸がんとなります。
症状として、月経中でないときや性行為の際に出血したり、普段と違うおりものが増える、月経血の量が増えたり月経期間が長引くなど気になる症状がある時は、早めに病院を受診することで早期発見につながります。
検査と診断
子宮頸がんの検診は、通常細胞診のみを行いますが、細胞診の結果が疑われた時には、精密検査として組織診、コルポスコープ診(腟拡大鏡による診察)を行います。がんの広がりを診る検査としては、内診、直腸診、超音波検査、CT検査、MRI検査などがあります。また膀胱鏡、直腸鏡、尿路検査などがあります。
細胞診
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子宮の入り口(外子宮口)付近を綿棒、ブラシ、またはヘラのような器具でこすって細胞を採取し、顕微鏡で正常な細胞かどうかを確認します。この検査で生じる痛みは、普通、それほど強いものではありません。
組織診
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細胞診で異常があった場合、疑わしい部分から小さな組織を切り取り顕微鏡で診断します。この検査では、痛みを感じたり、出血したりすることがあります。
コルポスコープ
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コルポスコープという拡大鏡で、子宮頸部の粘膜表面んを拡大して細かい部分を観察します。異常が疑われる部位の組織を採取し、組織診を行います。
超音波(エコー)検査
体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像にして観察する検査です。腟の中から超音波をあてて調べる場合もあります。子宮頸がんの性質や状態をみたり、腫瘍と周囲の臓器との位置関係や、別の臓器やリンパ節への転移の有無を調べたりします。
CT、MRI、PET-CT検査
肺、肝臓など遠隔臓器への転移の有無、リンパ節転移の診断、周辺臓器への浸潤(がんが周囲に広がること)の程度の診断に威力を発揮します。造影剤を使用する場合、アレルギーが起きることがあります。
子宮頸がんのステージ
ステージの種類 | 内 容 | 深達度による分類 |
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ステージⅠA | ⅠA1期・・・組織学的にのみ診断できる浸潤がんで間質浸潤の深さが3mm以内、縦軸方向の広がりが7mmを超えないもの | |
ⅠA2期・・・間質浸潤の深さが3mmを超えるが5mm以内、広がりが7mmを超えないもの | ||
ステージⅠB | ⅠB1期・・・臨床的に明らかな病変が子宮頸部に限局するもの。または臨床的に明らかではないがIA期を超えるもので病変が4cm以内のもの | |
ⅠB2期・・・臨床的に明らかな病変が子宮頸部に限局するもの。病変が4cmを超えるもの | ||
ステージⅡA | ⅡA1期・・・がんが腟壁に広がっているが、子宮頸部の周囲の組織には広がっていないもので、病変が4cm以内のもの | |
ⅡA2期・・・がんが腟壁に広がっているが、子宮頸部の周囲の組織には広がっていないもので、4cmを超えるもの | ||
ステージⅡB | がんが子宮頸部の周囲の組織に広がっているが、骨盤壁まで達していないもの。 | |
ステージⅢA | がんの腟壁への広がりは下方部分の1/3に達するが、子宮頸部の周囲の組織への広がりは骨盤壁にまでは達していないもの | |
ステージⅢB | がんの子宮頸部の周囲の組織への広がりが骨盤壁にまで達しているもの、または腎臓と膀胱をつなぐ尿管ががんでつぶされ、水腎症(すいじんしょう)や腎臓が無機能となったもの | |
ステージⅣA | 膀胱や直腸の粘膜へがんが広がっているもの | |
ステージⅣB | 小骨盤腔を越えて、がんの転移があるもの |
子宮頸がんの治療
病期による治療の選択
1.手術
早期子宮頸がんの一般的な治療法は手術ですが、がんの広がりによって、手術の方法(術式)が変わります。
子宮切除の方法
- 円錐切除術・・・がんのある子宮頸部の組織を円錐状に切除する方法
- 単純子宮全摘出術・・・おなかを切り開き、子宮、卵巣、卵管を切除する方法
- 準広汎子宮全摘出術+卵巣・卵管切除術・・・子宮と卵巣・卵管に加えて、子宮を支える組織の一部を切除する方法
- 広汎子宮全摘出術・・・子宮、卵管、卵巣、腟および子宮周囲の組織を含めた広い範囲を切除する方法
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頚部組織を円錐状に切除します。主に、診断の確認のためです。異形成や上皮内がんの場合は治療としても行います。
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子宮を切除する手術です。腟式単純子宮全摘出術(子宮を腟から摘出した場合)、腹式単純子宮全摘出術(腹部を切開して手術が行われた場合)があります。時には、両側付属器切除術(卵巣・卵管も切除される方法)を採用することもあります。
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広汎子宮全摘出術と単純子宮全摘出術との中間的な術式で、前部子宮支帯前層を切断し、尿管を側方に寄せた後に全子宮支帯と腟壁を子宮頸からやや離れて切断します。
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子宮と腟の一部を含め、骨盤壁近くから広い範囲で切除します。
後腹膜リンパ節郭清
- 骨盤リンパ節
- 骨盤リンパ節+傍大動脈リンパ節
2.放射線治療
化学療法は、抗がん剤を用いて体内のがん細胞の増殖の抑制を狙います。薬剤は、通常、点滴静注注射で投与をおこないますが、経口剤としての内服や筋肉注射で投与することもあります。 化学療法は術後の補助療法としてのほか、子宮頸がんが子宮の外に拡がっている場合にも適応となります。
1.外照射
直線加速器(リニアック)と呼ばれる大型の機械で、体の外から体内の病巣部に放射線を照射し、1日1回の治療を5~6週間かけて行います。治療が必要な範囲の形に合わせた正確な照射範囲を定めるために、専用のコンピュータを用いて最適な照射計画を選択します。
2.腔内照射
子宮内に治療用器具を挿入し、子宮の中から放射線治療を行う方法です。子宮の近くにたくさんの放射線をあてることができます。通常週1回、計4回程度行います。
3.化学療法
化学療法は、抗がん剤を用いて体内のがん細胞の増殖の抑制を狙います。薬剤は、通常、点滴静注注射で投与をおこないますが、経口剤としての内服や筋肉注射で投与することもあります。 化学療法は術後の補助療法としてのほか、子宮頸がんが子宮の外に拡がっている場合にも適応となります。
よくある質問
- 子宮頸がんになる原因は?
- 子宮頸がんの原因は、ほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスへの感染です。主に性交渉によって感染します。ヒトパピローマウイルスには100種類以上ものタイプがあり、その中で子宮頸がんの原因となるのは約15種類です。
- ヒトパピローマウイルスに感染したら、誰もが子宮頸がんになるの?
- 性交体験のある女性の8割が一生に一度はヒトパピローマウイルスに感染するといわれています。ヒトパピローマウイルスに感染しても、通常は体の免疫機能で自然に排除されます。ただし、免疫力の低下などによって感染が長期化してしまうと細胞に変化が起こり、数年を経て、がん化してしまうことがあるのです。
- ヒトパピローマウイルスに感染した後で、がん化するのを防ぐ方法はある?
- 症状として、今のところ、ヒトパピローマウイルスに感染した後で、子宮頸がんの発生を防ぐ方法はありません。子宮頸がんを予防するためには、定期的な検診で細胞を調べ、早期発見することが非常に重要です。
- 子宮頸がんの症状にはどんなものがありますか?
- 初期の子宮頸がんは、ほぼ無症状です。進行すると不正出血、おりものの変化、性交時の出血や痛み、下腹部痛や腰痛、月経の変化(月経が長引く、量が増えるなど)などの症状が見受けられるようになります。
- 子宮頸がんになったら、もう出産はできないの?
- 早期発見した場合は、子宮頸部の異常な組織だけを取り除く治療ができます。この方法では子宮を温存できるため、将来の妊娠・出産も可能です。しかし、がんが進行してしまい、子宮を摘出しなければならなくなると、妊娠や出産は望めなくなります。
- 子宮頸がんは、ワクチンで治すことはできないの?
- 子宮頸がん予防ワクチンには、既に感染しているヒトパピローマウイルスを排除する効果はありません。また、病変やがん細胞を治すこともできません。予防ワクチンは、あくまでヒトパピローマウイルスへの感染を防ぐものです。
- 子宮頸がんをコンドームで予防することはできる?
- 子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスは、外陰部や肛門などコンド ームではカバーしきれない範囲にも存在します。そのため、コンドームだけで 子宮頸がんを予防することはできません。