リハビリテーション科コラム

ウォーキングからはじめましょう

リハビリテーション科 理学療法士 立野 学

2022/6/20掲載

  • ウォーキングからはじめましょう
  • 初夏となり、5~6月にかけては公園や街路樹に色鮮やかな花々が咲き始め、外出意欲も湧いてくる季節だと思います。

    コロナの影響で外出控えが続き、皆さん運動不足になっていませんか?

活動量の低下は血圧や血糖を上昇させ、生活習慣病など様々な病態を引き起こす原因となります。
今後もしばらく続くであろうコロナ禍に対し、感染予防を続けながらも日頃の運動量を確保するために、まずは近所のウォーキングから始めてみてはいかがでしょうか!

運動の効果

運動の効果としては、筋肉量・骨密度の上昇、肥満や血栓形成の減少、免疫能向上などが挙げられます。

これらの機能改善による主な疾病予防としては、高血圧・高脂血症・糖尿病などの代表的な生活習慣病の予防・改善だけではなく、がんや感染症・認知症の予防効果も証明されています。

特に高齢者にとっての歩行は、起き上がり動作と共に日常生活の中で比較的早期から低下する能力です。生活の中で歩行を運動として積極的に行なうことは、日常生活動作障害に対する初期予防活動として有効であり、運動量の向上は寝たきりや死亡率の減少に効果があると言われています。

ウォーキングと腰痛

韓国の一般住民48482名を対象に歩行量と腰痛の関連性を調査したものでは、週3日以上のウォーキングは腰痛と負の相関が認められています。つまり、ウォーキングをしている人ほど腰痛が少ないということが分かっています。また「早歩きが腰痛の予防や回復に有効」であり、歩行速度によっても効果が変化すると言われています。

減量効果

有酸素運動が減量に効果的であることはよく知られておりますが、、ウォーキングももちろん有酸素運動に該当します。ウォーキングによる減量の効果を計算してみましょう。

普通の速度(67m/分)でのウォーキングの場合、1時間運動を続けた時の運動強度を[3Met’s]、30分続けた場合はその半分の[1.5Met’s]となります。

体重60kgの方が30分のウォーキングを週3日行なうと約283kcalとなり、
(60kg×1.5Met’s×1.05(定数)=94.5kcal×3回=283.5kcal)
1ヶ月で約1134kcal、1年で13608kcalの運動量になります。

1キロの減量には7000kcalの運動量が必要なことから、1.9キロの減量ができることになります。早めのウォーキング(93m/分)であれば1年で約2.5キロの減量が可能です。

普段の生活に加えて上記の運動を追加することで食事量を変えなくても減量の効果は現れますが、ぜひ食事量も一緒にコントロールしてより効果的な減量を実践してみてください。

1日1万歩

「健康日本21」では身体活動量と死亡率との関連をみた疫学的研究結果から1日の歩数を1万歩確保することが理想であると示されています。歩数計を携帯したり、スマートフォンの健康管理アプリなどにも歩数をカウントする機能があるので、減量を目的としていない場合にも、日頃の歩数を確認し、運動量の目安にしてみてはいかがでしょうか。

健康な方であれば、10分の歩行で約1000歩の歩数が得られ、600〜700mに相当する距離となります。

ウォーキングのペース(運動強度)

  • 修正ボルグスケール
    0 何とも感じない
    0.5 非常に弱い
    1 やや弱い
    2 弱い
    3 中等度
    4 多少強い
    5 強い
    6
    7 とても強い
    8
    9
    10 非常に強い
  • ウォーキングをする際の理想的なペース(運動強度)は年齢やその方の体力によって異なります。一般的には「息が少しはずむ」程度で行うことが安全かつ生活習慣病の予防に効果が得られる運動強度となります。

    自覚的運動強度「修正ボルグスケール」を参考にすると3〜5が「息が少し弾む」に該当し、この範囲でウォーキングを継続することが望ましいとされていますが、体調に合わせて無理せずに行いましょう。

歩く姿勢

正しい姿勢を確認して、関節などに負担が偏らいないよう次の点に注意しながらウォーキングを行いましょう。

  1. 踵から地面に接地する。
    (つま先から接地したり、足裏全体で接地するとつまずいたり、ふくらはぎに過度な負担となり、長い距離を歩くことが難しくなります。)
  2. 膝はしっかり伸ばす。
    膝が曲がったまま歩くと、太ももの前の筋肉を必要以上に使うこととなり、膝関節にも大きな負担がかかってしまいます。
  3. 腰はそらずに、お腹を引き締める。
    足に疲労が出たり、もともとお腹の筋肉が弱い方は腰で頑張りすぎてしまい、徐々に腰痛が出る可能性があります。お腹を引き締めることで腰への負担を軽くして腰痛を予防できます。
  4. 胸を開き腕と一緒に肩甲骨を動かしましょう。
    胸を開くようにすることで、肩甲骨が後ろに引き寄せられ背中が伸び猫背を予防できます。無理に背中を伸ばし腰が反りすぎると、腰痛の原因にもなるので注意しましょう。
地域資源

川崎市ウォーキングマップ

参考資料

・健康日本21(身体活動・運動)