膵疾患|対象疾患|消化器内科(内視鏡内科・肝臓内科)

対象疾患

膵疾患(急性膵炎、慢性膵炎、各腫よう疾患『充実性腫よう、膿胞性腫よう』)

膵疾患について

膵臓とは

膵臓は胃の背側にある20cmほどの横長の臓器で、膵頭部・体部・尾部の3つの部分に分けられます。膵臓には何らかの原因で炎症が起きることがあり、膵炎と呼ばれます。また、良性・悪性の腫瘍ができることもあります。

膵臓の働きは、大きく分けて2つの働きがあります。

1 消化液の分泌:外分泌機能

食べ物を消化する膵液を作り、十二指腸に送り出す働きがあります。

2 血糖の調節:内分泌機能

インスリンやグルカゴンなどの血糖を調節するホルモンを分泌します。

膵臓の検査

採血、腹部超音波検査、CT、MRI、内視鏡検査を用いた、内視鏡的逆行性胆道膵菅造影(ERCP)、超音波内視鏡(EUS)などがあります。当院では、いずれの検査も施行可能です。はじめは、負担の少ない検査(採血、超音波、CT、MRI)を行い、精密検査や治療のために内視鏡を用いたERCPやEUSを行います。また、膵臓は体の奥の方にある臓器であるため、一つの検査では判断しにくいことが珍しくなく、複数の検査を組み合わせて、診断に役立てています。

膵臓の病気

1 膵炎

何らかの原因で膵臓に炎症が生じることを膵炎といいます。上腹部 (正中から左側が多い) や背中の痛みや吐気がみられ、発熱や黄疸を伴う事もあります。急激におきた場合には急性膵炎と呼ばれます。膵臓に繰り返し炎症がおきると、膵臓が徐々に小さくなり線維化や石灰化を起こすことも知られており、慢性膵炎と呼ばれます。

1)急性膵炎

比較的、突然の発症で、お腹の上の方に強い痛みを感じます。吐き気や嘔吐、発熱を伴うことも多いです。
原因は、アルコールが40%ほどと言われていますが、アルコールが膵炎を起こす仕組みはまだわかっていません。他には、胆石や高中性脂肪血症、薬剤性、膵管癒合不全などの先天的な形態異常などが報告されていますが、原因不明(特発性)の場合も散見されます。

急性膵炎になると、膵液に含まれる消化酵素により膵臓が自己消化されてしまい、感染などを合併することが多くのケースで認められます。食事をとると悪化するため、入院での治療が必要な病気です。多くの場合、点滴加療により改善が期待できますが、重症化が予想される場合には、膵酵素阻害薬(タンパク分解酵素阻害薬)、抗生剤などで治療を行い、厳重な管理が必要です。膵炎改善した場合でも、膵臓壊死や膵仮性嚢胞に感染を伴う際には、長期間に及ぶ治療を要する事もあります。

膵炎の怖いところは、治療を開始しても、悪化することがある点です。悪化して重症急性膵炎となった場合、呼吸の悪化や腎機能障害なども起こして多臓器不全となり、生命に関わる事態となることがあります。
胆石が原因の場合は、内視鏡による胆石治療(ERCP)も並行して行っていきます。

2)慢性膵炎

膵臓に長期間に炎症が起き、膵臓が徐々に硬くなり(繊維化)、膵臓に石(膵石)が出来る病気です。繰り返した炎症によって生じた膵管の狭窄や膵石が膵液の流出を阻害し、疼痛や炎症の原因になります。膵臓の働きが低下し、消化機能が低下し、糖尿病を発症することがあります。

原因の約7割は長期かつ大量のアルコール摂取によるものと言われていますが、原因不明のこともあります。腹痛や背部痛、倦怠感を自覚されることが知られています。

アルコールが原因である場合には禁酒をし、痛みに対しては鎮痛薬や蛋白分解酵素阻害薬も使用します。膵管狭窄や膵石が問題となる際には、内視鏡を用いてステント留置などの治療を行うことがあります。
膵がんを合併する頻度も高いと報告されています。

3)自己免疫性膵炎

自分自身の免疫の働きの異常により膵臓に炎症が起きて膵臓が腫れる病気です。

はっきりとした原因はまだ解明されていません。症状としては、膵がソーセージのように腫れることによって、膵臓の中を通る膵管が細くなり、胆汁の流れる道である総胆管を圧迫して起こる黄疸症状が最も多い症状だと言われています。倦怠感や腹痛や糖尿病の急激な悪化なども症状として知られています。

診断には、血液検査、CT、MRI検査をまず行いますが、診断を確定させるために、 内視鏡を用いたERCPやEUSが必要になります。これらの検査で、黄疸の改善を図り、膵臓の細胞診、組織検査を行います。

血液検査では、ガンマグロブリンやIgG、IgG4の値が高くなります。IgG4関連疾患(硬化性胆管炎、硬化性唾液腺炎、後腹膜線維症、腎症など)を合併することが時々あります。

治療は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の投与を行いますが、治療初期は入院で行うことが多いです。時に、膵臓がんとの鑑別を要することもあり、注意が必要な病気です。

2 膵臓がん

膵がんは、多くが膵臓内部の膵管(膵液の流れる管)に発生します。一般に膵がんといえばこの膵管にできたがん(膵管がん)を指します。厚生労働省の平成25年度人口動態統計では、わが国の膵がん死亡数は、3万人を超え、悪性新生物による死亡順位も肝がんを抜き、肺がん、胃がん、結腸がんに次いで第4位になっています。

原因は未だ解明されていませんが、喫煙や膵がんの家族歴、慢性膵炎、膵嚢胞性病変:膵管内乳頭粘液産生腫瘍(IPMN)、大量飲酒などがリスク因子として知られています。

初期症状はほとんどないことが多く、発見が難しい病気の一つです。進行するとみぞおちのあたりや背部痛がみられるようになりますが、がんのできる場所によって症状は異なり、十二指腸近くの膵頭部にがんができた場合は黄疸として発症することがあります。また、急な糖尿病の発症や、治療中の糖尿病の悪化、検診での腫瘍マーカーの上昇をきっかけに発見されることもあります。

膵癌が疑われる場合には、血液検査、超音波検査、造影CTやMRIなどで精密検査を行います。さらに必要な場合には、内視鏡検査(ERCPやEUS)による組織の採取など、より詳しい検査を行う事もあります。

治療は、手術可能な場合は、外科手術でがんを切除しますが、早期発見が難しく切除できる患者さんは30%程度となっています。

診断時に他臓器に転移がある場合や周囲の脈管・臓器に浸潤して手術が困難なときには抗がん剤治療が行われます。また、手術可能な患者さんにも、腫瘍が縮小することを期待して手術前に行ったり、術後の再発予防目的に行ったりしています。

膵腫瘍により黄疸が出現した場合(閉塞性黄疸)には、胆汁の流出路を確保するためにERCPによるステント留置など、黄疸を改善させる治療を行います。

膵臓にできる固形の腫瘍の多くは膵臓がんですが、ほかに膵神経内分泌腫瘍(p-NET)といわれる腫瘍が見つかることがあります。p-NETが疑われる場合や癌の確定診断をつける際には、超音波内視鏡下吸引細胞診 (EUS-FNA)を行い病理診断します。

3 膵嚢胞性病変

嚢胞(のうほう)とは、水分や粘液など液体を含んだ袋状のもので、膵臓の内部や周りにできたものを膵嚢胞と言います。近年、検診などで、症状がない状態で発見される事が多くなっています。全人口の2〜3%に合併するという報告もあります。

特に注意が必要なものは、腫瘍性膵嚢胞といって、がん化のリスクを伴うものです。膵管内乳頭粘液腫瘍 (IPMN) が圧倒的に多く見られます。ほかに、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、漿液性嚢胞腫瘍(SCN)などが知られています。

典型的な膵がんとは異なり、良性から悪性までさまざまであり、まずは正確な診断が必要になります。MRCPや造影CT、超音波内視鏡検査 (EUS)、ERCPなどそれぞれに適した検査を行います。

・膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)
膵管上皮に粘液を産生する腫瘍ができ、粘液が溜まることで膵管が袋状に拡張する病気です。腫瘍ができた病変の部位により、主膵管型、分枝型、混合型に分けられます。明確な原因は不明ですが、慢性膵炎、アルコール、肥満、喫煙などがリスクとして知られています。

良性から悪性まで様々な段階があり、良性から悪性へ長い年月の間にゆっくりと進行していくと言われています。このため、発見時の精密検査や定期的な検査が重要です。一般に、主膵管型は、癌を合併する可能性が高く、主膵管の太さが10ミリ以上の場合、高リスクとして手術が勧められます。

その他のタイプでも、嚢胞内に隆起が見えたり、嚢胞が急に大きくなったりする場合は、注意が必要です。

分枝型や混合型は、嚢胞の大きさや嚢胞内部のポリープ様結節の有無、主膵管の太さ、黄疸の有無などにより評価を行い、定期的に経過観察をしていく必要がありますが、悪性が疑われる場合には手術を検討します。またIPMNは分枝型であっても嚢胞以外の場所に癌が発生する事も知られており、定期検査がとても重要です。

当院で施行可能な胆膵疾患の検査・治療方法

  1. 血液検査
  2. 腹部超音波検査
  3. 単純・造影CT
  4. MRI (MRCP)
  5. 超音波内視鏡検査 (EUS)、超音波内視鏡下吸引細胞診 (EUS-FNA)
  6. 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)
  7. 陽電子放出断層撮影 (PET)