代表的な治療|脳血管内治療センター|脳神経外科

動脈瘤塞栓術

未破裂脳動脈瘤やクモ膜下出血を起こした破裂脳動脈瘤に対する治療です。動脈瘤とは、血管と血管の分かれ目にできたコブです。このコブは正常な血管の壁と違って、薄い膜のような構造物だけで血液の流れを受け止めている状態です。特にある程度の大きさ(一般的には4-5mm以上)の大きさになると、この膜がさらに弱くなり、血圧が高くなったときなどに耐えきれなくなって破裂します。この状態がクモ膜下出血です。治療は、破裂による出血を予防することを目的に行います。そのため脳動脈瘤の治療では、このコブの中に血液が入り込まないように、開頭手術の場合には動脈瘤の頸部をクリップで挟み、カテーテル治療の場合にはプラチナ製のコイルでコブの内部を充填します。


コイルの種類

様々な形状の動脈瘤にもなじみやすいようにあらかじめ立体形状をつけてあるものや、非常に柔軟でらせん状に形をつけてあるものなどがあります。おのおの形状のコイルとも、様々な大きさや長さのものがありますので、動脈瘤の大きさや形に合わせて選択しながら使用します。

コイルの種類

バルーンアシスト法・ステントアシスト法

動脈瘤塞栓術は動脈瘤の中にコイルを充填しますが、動脈瘤の頸部(動脈瘤の入り口部分)が広い場合(ワイドネック動脈瘤といいます)には、コイルが血管の中に逸脱してしまうことがあり、十分な治療が行えない場合がありました。このような事態を打開する目的で様々な工夫がなされており、柔軟な風船を動脈瘤の頸部で膨らませて、コイルが血管の中に出てこないように押さえながら治療を行う方法(バルーンアシスト法)や、動脈瘤塞栓術補助器材として開発されたステントをあらかじめ動脈瘤の頸部を覆うように留置して、コイルの逸脱を防ぎながら治療する方法(ステントアシスト法)などが考案され、それらを駆使することでワイドネックの動脈瘤も治療できるようになってきています。


  • バルーンアシスト法・ステントアシスト法

  • バルーンアシスト法・ステントアシスト法

動脈瘤塞栓術

動脈瘤が最も見えやすく、特に動脈瘤が発生している血管と動脈瘤とを、きちんと分けて見られる位置に装置を合わせて治療を行います。矢印の部分が動脈瘤です。まず慎重に操作しながらマイクロカテーテル(おおむね直径0.6mm程です)を動脈瘤の中に挿入します。続いて動脈瘤の形や大きさに合わせたコイルを選択して挿入します。さらに少しずつコイルの大きさを小さくしながら、コイルの殻を強いものにしていきます。十分にコイルの殻を作ることができた後は、動脈瘤の頸部(血管との分岐部分)まで、柔らかいコイルを使ってきっちりと詰めていきます。
カテーテルが押し出され、それ以上コイルを充填できない状態となったところで治療は終了です。治療後の写真では、矢印のように治療前に認められた動脈瘤は造影されない状態(動脈瘤の中に血液が入らない状態)になっています。

動脈瘤塞栓術

頸動脈ステント留置術

右足の付け根の動脈からカテーテル (約3mm)を挿入し、目的とする狭窄血管の手前に留置します。まず遠位塞栓(狭窄している血管を広げる際にでる血栓や動脈硬化部のかす)防止用のフィルターを狭窄部の末梢側に留置します。続いてステントが通過できる広さまでバルーンで狭窄部を拡張します。その後、狭窄部位でステントを展開します。ステントはカテーテルのなかに収納されており、ステントを覆っている鞘をはずすことで展開することができます。現在用いているステントは形状記憶された自己拡張型ステントといわれるもので、血管の広さに合わせて広がるだけでなく、外部からの圧迫や頚のねじれなどにも強く、仮に外部から力が加わっても、変形することなく、形状を維持してくれます。
ステント留置後に目的とする血管の広さに合わせたバルーンで再度拡張を行います。最後に造影を行って、十分に血管が拡張され、脳梗塞などの兆候がなければ手術は終了です。

頸動脈ステント留置術

血栓回収療法

MRIなどで確認できる大きな脳梗塞が完成しておらず、さらに発症4.5時間以内に治療を開始できる時には組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)という血栓溶解薬を点滴で投与することで治療できる場合があります。しかしながら、脳の比較的大きな血管が閉塞している場合には、この薬の効果が得られない場合も少なくありません。さらに発症から4.5時間以上が経過していても、MRIなどの画像検査で脳梗塞が完成されていない場合もあります。このような時には、直接閉塞した血管の中までカテーテルを進めて血栓を除去する治療を行う場合があります。すべての方がこうした条件を満たすわけではありませんが、大きな脳梗塞を回避できる可能性がある場合には緊急に治療を行っています。

まずカテーテル造影を行って閉塞している部分を見極めます。続いて閉塞している部分を越えてマイクロカテーテルを挿入し、ここからステント型の血栓除去器材あるいは血栓吸引カテーテルという道具を用いて血栓を除去します。血栓が除去されると、閉塞していた血管が造影されるようになります。右は回収したステント型血栓回収器材です。ステントの網の部分に血栓が絡まって回収されています。下段は回収された血栓です。


血栓回収療法

血栓除去前と除去後の脳血液量を表す画像です。治療前には矢印の部分が青く見えており、脳血液量が低下していることが分かります。血管が再開通した治療後では、この部分が黄色から赤になり、血液量が戻っていることが分かります。

脳血液量

その他

当院では、最新型の血管撮影装置を用いて診断のための脳血管撮影、脳動脈瘤塞栓術や頸動脈ステント留置術などの脳血管内治療を行っています。

血管撮影装置

様々な治療器具の進歩とともに、血管撮影装置も発展を遂げています。3D血管撮影(3D-DSA)という方法では、目的とする病変(動脈瘤など)を立体的に描出することができ、360°方向から自由に病変を観察することができます。

三次元血管画像

脳血液量情報も作成が可能です。

脳血液量画像


先に説明した血栓回収療法や頸動脈ステント留置術など、治療の前後で大きく血液の流れが変わるような場合には、治療効果の判定や血液の流れすぎによる出血の予知(過灌流といいます)などをいち早く把握することができ、脳血管内治療後の対応に生かすことができます。さらに動脈から毛細血管を経て静脈に流れるという一連の血液の流れをカラー画像で表すこともでき(iFlow画像)、脳動静脈奇形や硬膜動静脈ろうなどの病態において、どこに病変の本態が存在するのかを視覚的に捉えることが可能となります。このような様々な手段を用いることで、より安全で確実な治療が提供できるように努めております。

iFlow画像