リハビリテーション科コラム

骨粗鬆症について

リハビリテーション科 理学療法士 浅沼 彩

2022/8/6掲載

骨粗しょう症とは、骨の量(骨量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。日本には約1000万人以上の患者さんがいると言われており、高齢化に伴ってその数は増加傾向にあります。

骨粗鬆症の症状について

  • 骨粗鬆症について
  • 骨粗しょう症になっても、痛みはないのが普通です。しかし、転ぶなどのちょっとしたはずみで骨折しやすくなります。骨折が生じやすい部位は、背骨(脊椎の圧迫骨折)手首の骨(橈骨遠位端骨折)太ももの付け根の骨(大腿骨頚部骨折)などです。

骨粗しょう症の種類と原因

原発性骨粗しょう症

加齢や生活習慣の乱れ、閉経などが原因で起こる骨粗しょう症です。高齢になると骨を形成するスピードが落ちるため、骨密度が低下して骨粗しょう症を発症しやすくなります。また、生活習慣の乱れも発症の原因になります。食事のバランスが悪いと骨を形成するために必要なカルシウムやビタミンD、ビタミンKなどが十分に摂れなくなります。さらに運動不足によって骨への刺激や負担が少なくなると、骨量が落ちてしまいます。特に女性の場合は閉経によって女性ホルモンのエストロゲンが減少することで骨粗しょう症を発症しやすくなります。

続発性骨粗鬆症

骨を弱くする原因となる疾患や、薬などによって引き起こされる骨粗しょう症です。副甲状腺機能亢進症やバセドウ病、性腺機能低下症などの内分泌系の疾患のほか、運動器や内臓疾患、糖尿病などの生活習慣病が主な原因となります。これらの疾患が原因の場合は、治療と同時に骨粗しょう症の予防や対策を進める必要があります。また、ステロイドの長期服用は骨の形成を促すホルモンの分泌を減少させ、これが原因で骨粗しょう症を発症することもあります。

特発性骨粗鬆症

原発性や続発性のように加齢や疾患などが原因ではなく、突発的に起こって急激に進行する骨粗しょう症です。「妊娠後骨粗しょう症」が代表的なものです。これは妊娠や授乳に伴う一時的な骨粗しょう症ですが、産前産後の長引く腰痛が、実は骨がもろくなったことが原因の腰椎圧迫骨折だということも少なくありません。妊娠中や授乳中は胎児へカルシウムを供給するため、おのずと母体のカルシウムは減少します。

介護保険による公的援助

「骨折を伴う骨粗鬆症」は介護保険法の「特定疾病」に指定されています。そのため、通常の介護保険は65歳以上で適応されますが、要介護と認定された場合、骨折を伴う骨粗鬆症の患者さんは40歳以上から介護保険サービスを受けることが可能です。

骨粗鬆症を予防するには

骨粗鬆症は予防が大切な病気です。以下のことに注意して、日々の生活を送りましょう。

  1. カルシウムを十分にとる。
  2. ビタミンD、ビタミンK、リン、マグネシウムをとる。
  3. 適量のたんぱく質をとる。
  4. 禁煙し、アルコールは控えめにする。
  5. 運動、日光浴をする。

骨粗鬆症の治療

食事療法や運動療法よる治療を行います。骨折が生じた場合はそれに応じた治療が必要です。当院外傷再建センターでは、大腿骨の骨折をされた患者さんに2次骨折予防の取り組みとして薬物治療も実施しております。

また、閉経後の女性は整形外科医師の定期的な検診をおすすめします。

日本は世界でもトップクラスの長寿国です。現在では単に長寿を目指すだけでなく、健康で自立した生活を送れる期間を表す「健康寿命」を伸ばすことへの関心が高まっています。日本人の平均寿命と健康寿命の差を比べてみますと、男性では約9年、女性は12年もの差があります。健康でイキイキとした人生を送りたいと誰しも願うものですが、実際には多くの人が長い間「健康ではない」状態ですごしているのです。骨は私たちの体や日常の活動を支える大切な器官です。骨粗鬆症を予防し、骨を健康に保つことは、健康寿命を延ばすことにもつながるのです。