クリニカルフェロー研修後記|外傷再建センター

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【執筆者】 仲野 隆彦 医師

2021年4月から2023年3月まで新百合ヶ丘総合病院の外傷再建センターでクリニカルフェローをさせていただいておりました仲野隆彦と申します。私は、所属医局である名古屋大学手の外科先代教授の平田仁先生と外傷再建センター長の松下隆先生がお知り合いだった事からクリニカルフェローのお話を頂いて2年間研修させて頂きました。

新百合ヶ丘総合病院の外傷再建センターは整形外科から完全に独立した組織で外傷治療のみ、特に手術に専念できる環境が整っていました。外来は一般整形外科初診がなく、週1回午前だけの術後フォローと紹介患者のみの診察で、それ以外の時間はほぼ全て手術に携われるようになっています。また、周術期管理についても外傷再建センター専属内科医、骨粗鬆症治療医がいるため、高齢患者の管理や術後骨粗鬆症治療の導入を任せることができます。カンファレンスは毎朝行われ、前日の手術症例と、今後手術予定の術前計画を確認しますが、週2回は多職種カンファレンスとなっており、病棟看護師、病棟薬剤師、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカーと入院症例の治療方針を共有します。

カンファレンスの内容は当然ハイレベルで、全国学会のシンポジウムでも揃わないような先生方とディスカッションができるため毎日が刺激的で非常に勉強になります。議論は建設的で、私の様なフェローでもエビデンスがあり納得してもらえる治療方針を示せば自由に治療方法を決めることができ、その意見を聞き入れてもらえます。外傷再建センターは2020年4月に設立されたばかりで、私が所属した当初はまだシステムが整っていないところもありましたが、段々と充実してきており、周囲の救急病院から直接外傷再建センタースタッフに繋がるホットラインを運用してからは、さらに重度外傷症例が集まるようになり、経験できる症例がより多くなったと思います。同時期に研修したフェローも全国から集まっており、それぞれ背景は異なりますが、外傷治療という共通の目的があったため雰囲気はとてもよく、医局内での雑談で外傷治療の知識が格段に増えたような気がします。今でも連絡を取り合い、症例相談をし合える外傷治療仲間が全国にできたことは本当に貴重な財産となりました。

私は、重度四肢外傷治療の中にもsubspecialityがあり、特に、創外固定治療(イリザロフ法)、骨盤寛骨臼骨折治療、マイクロサージャリーの3つが重要だと考えていますが、新百合ヶ丘外傷再建センターは、全てのsubspecialityのspecialistが揃っており対応できない外傷症例はないと言っても過言ではありません。実際に、外傷センターを含めた全国の他施設から、治療困難となった症例が紹介され、日々それらの治療に当たっておりました。ほぼ全症例で良好な成績が得られ社会復帰されています。重度四肢外傷は標準化された治療方針が確立しつつありますが、まだ経験に基づいた治療が必要となる場面も多く、治療戦略を組むには数多くの症例を経験する必要があります。頻度の少ない重度四肢外傷ですが、新百合ヶ丘外傷再建センターのように症例を集約できる施設は、クリニカルフェローにとって短期間で多く症例を見て経験する事ができ、外傷再建医を目指す者の最高の研修施設であると思いました。外傷治療をさらにブラッシュアップさせたい先生は是非一度研修に行かれることをお勧めします。