広報紙 vol.59しんゆりニュースレター

2023/1/1掲載

整形外科特集

整形外科特集|広報紙

  • 新百合ヶ丘総合病院
    整形外科 部長
    さいとう いずみ
    齋藤  医師
  • 【プロフィール】
    1997年秋田大学医学部医学科卒業。2001年横浜市立大学大学院医学研究科運動器病態学卒業。06年横浜市立大学附属市民総合医療センター難病医療センター助教。07年横浜市立大学大学院医学研究科運動器病態学助教。10年横浜市立市民病院整形外科医長。12年より現職。
    日本整形外科学会専門医/日本リウマチ学会専門医/日本人工関節学会認定医/医学博士
  • 整形外科では、運動器の疾患や外傷の治療にあたっています。特に当科で力を入れている対象疾患は、変形性膝関節症変形性股関節症膝の靭帯や半月板損傷です。

    近年、高齢化に伴い介護が必要な患者さんが増えています。2019年の厚生労働省国民生活基礎調査では、介護が必要となった原因の約1/4が運動器の障害で、さらにその4割強が関節疾患となっています。変形性関節症は加齢とともに軟骨が傷んできて関節が変形していく病気です。介護が必要とならないためにも変形性膝関節症や変形性股関節症の治療は重要です。

    若年者でも、膝のクッションとなっている半月板の断裂や膝の靭帯損傷をきたすと、スポーツや生活に支障が出るだけではなく、将来的に変形性膝関節症に進行するといわれています。

    したがって、その予防には適切な手術治療が必要です。壮年期ですでに変形性膝関節症が発症している場合や、膝のO脚変形が認められる場合には、膝の骨を切って膝の形を適切に矯正する膝周囲骨切り術を行っています。高齢者の変形性膝関節症に対しては人工関節全置換術を行い、日常生活動作の維持や改善に努めています。

    私が医師として働きはじめたときに恩師から『大事なことは患者さんが教えてくれる』と言われたことが、今も私の根幹にあります。神経疾患は診断をする上で問診が非常に大切です。

  • 教科書には載っていないけれど、多くの患者さんが同じように訴えられることがあることもよく経験します。患者さんの症状やお困りのことにしっかりと耳を傾け、問題点を整理して診療にあたるように心がけております。

    高齢者の変形性膝関節症に対しては人工関節全置換術を行い、日常生活動作の維持や改善に努めています。一方、変形性股関節症は膝ほど頻度は多くないですが、その発症は日常生活動作を制限します。当科では、人工股関節全置換術を行っています。術後の経過を良好にするためには人工関節の正確な設置を行う必要があり、そのためにロボット支援手術を行っています。当院はこの手術を膝に対しては日本で初めて、また股関節に対しては東日本で3施設目として導入しました。

    手術は、患者さんの年齢や生活環境、希望する生活様式を踏まえて、手術治療が適当か、どの手術方法が良いか、検討する必要があります。患者さんに適切な情報提供を行って、患者さんに合った手術治療を行っていきたいと考えています。膝や股関節の症状でお困りの方は、是非当科を受診していただけたらと思います。

    近隣のクリニックの先生方には、膝および股関節に手術が必要な患者さんをたくさんご紹介いただいております。また術後のリハビリを当院からお願いすることも多く、大変お世話になっております。今後もさらに地域医療のため病診連携を綿密にできたらと思っています。よろしくお願い申し上げます。

【目次】

変形性膝関節症の手術治療

膝周囲骨切り術と人工膝関節全置換術を行っています。膝周囲骨切り術は、膝の周囲の骨を切って、傷んでいる軟骨から正常な軟骨に体重がかかるように膝の形を矯正して、膝の痛みを改善する手術です。この手術によって、体を使う仕事やスポーツに復帰することも可能です。高齢者や変形が著しい場合は、変形した膝を人工膝関節にかえる人工膝関節全置換術を行っています。

膝周囲骨切り術の一つである高位脛骨骨切り術 High tibial osteotomy : HTO

脛の骨を切ってO脚を矯正します。

高位脛骨骨切り術

【様々な膝周囲骨切り術】

変形が著しい患者さんには、大腿骨と脛骨の両方を骨切りする手術を行っています(Double level osteotomy)。

様々な膝周囲骨切り術

【人工膝関節全置換術】

様々な膝周囲骨切り術

変形性股関節症の手術治療

人工股関節全置換術を行っています。この手術では、痛みの改善により、手術を受けたほとんどの患者さんに満足していただけます。長期にわたって、手術の効果が持続することがわかっていて、日常生活動作が制限される患者さんには、高齢者のみならず40歳代でも手術を行います。

変形性股関節症の手術治療

ロボット支援人工関節置換術

  • 変形性股関節症の手術治療
  • 長期にわたって安定した手術成績を得るためには、正確な人工関節の設置が必要とされています。ロボットによる膝および股関節に対する人工関節置換術は、正確な人工関節の設置が可能で、欧米ではすでに20万件以上の手術がなされています。日本では2018年から膝および股関節に対して健康保険での手術が許可され、同年に当科でも開始しました。術前のCT検査で手術計画を立て、ロボティックアームを医師が操作して手術を行います。

膝半月板損傷および靭帯損傷の手術治療

  • 半月板縫合術の関節鏡写真半月板縫合術の関節鏡写真
  • 半月板は大腿骨と脛骨(すねの骨)の間にあり、三日月状の形をしていて、膝の安定や衝撃吸収などの役割を担っています。前十字靱帯とは膝の中央付近に位置する靭帯であり、主に脛骨が前方に動くのを制動する強力な靭帯です。半月板や前十字靭帯は主にスポーツ中に損傷することが多いです。

  • 自家腱(ハムストリング)を使った前十字靭帯再建術自家腱(ハムストリング)を使った前十字靭帯再建術
  • 膝半月板損傷および靭帯損傷の手術は関節鏡(内視鏡)を使って行います。半月板損傷は従来、切除することが多かったのですが、当院では、可能な限り縫合術を行います。そのほうが将来的に変形性膝関節症になるのを防ぐことができるからです。前十字靭帯損傷に対しては、自家腱(患者さん自身の他部位からとった腱)を骨に掘ったトンネルに通して再建します。前十字靭帯断裂を放置すると、膝が不安定でスポーツや日常生活に支障が出るばかりでなく、将来的に変形性膝関節症に進行します。

これらの専門的な手術治療を提供するために、当科では横浜市立大学整形外科のスポーツ整形外科と協力して手術を行っています。

整形外科医師紹介

①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格・公職等
  • 齋藤 泉(副院長/整形外科部長)

    ①膝関節・関節リウマチ ②秋田大学医学部 ③日本整形外科学会専門医/日本リウマチ学会専門医/日本人工関節学会認定医/医学博士

  • 藤崎 真理(整形外科医員)

    ①人工関節・関節リウマチ ②横浜市立大学医学部 ③日本整形外科学会専門医/日本整形外科学会認定リウマチ医

  • 宮前 祐之(整形外科医長)

    ①人工股関節 ②横浜市立大学医学部 ③日本整形外科学会専門医/医学博士

  • 津村 碧(整形外科医長)

    ①人工関節 ②秋田大学医学部 ③日本整形外科学会専門医

  • 川島 大輔(整形外科医長)

    ①人工関節 ②杏林大学医学部 ③日本整形外科学会専門医/日本整形外科学会認定リウマチ医/日本整形外科学会認定リハビリテーション医

  • 都竹 伸哉(整形外科医員)

    ①超音波、スポーツ整形外科 ②横浜市立大学医学部 ③なし

  • 別府 保男(骨軟部腫瘍研究所所長)

    ①骨軟部腫瘍 ②長崎大学医学部 ③日本整形外科学会専門医/日本専門医機構認定整形外科専門医/日本整形外科学会名誉会員/日本骨粗鬆症学会認定医/日本医師会認定産業医/緩和ケア研修修了医/Best Doctors in Japan 2010-2011, 2012-2013, 2014-2015, 2016-2017

  • 【非常勤】稲葉 裕

    ①股関節、関節リウマチ、小児整形外科 ②自治医科大学医学部 ③日本整形外科学会専門医/日本リウマチ学会指導医/日本人工関節学会認定医/医学博士/横浜市立大学整形外科教授

  • 【非常勤】藤澤 隆弘

    ①スポーツ整形外科、関節鏡手術 ②滋賀医科大学医学部 ③日本整形外科学会専門医/日本整形外科学会認定スポーツ医/横浜市立大学整形外科スポーツクリニックチーフ