広報紙 vol.57しんゆりニュースレター

2022/11/1掲載

呼吸器外科特集

呼吸器外科特集|広報紙

  • おだ まこと
    小田  医師
  • 【プロフィール】
    金沢大学医学部卒業。金沢大学大学院修了。1997年金沢大学医学部附属病院講師。2004年石川県立中央病院外科部長(05年がん診療センター長併任)。06年金沢大学附属病院呼吸器外科臨床教授 兼 金沢大学大学院医学系研究科准教授。14年ニューハート・ワタナベ国際病院病院長 兼 呼吸器外科部長)。16年より現職、昭和大学客員教授。
    日本外科学会専門医・指導医/呼吸器外科専門医/日本呼吸器外科学会指導医/日本胸部外科学会指導医/日本呼吸器学会専門医/日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医/日本呼吸器外科学会評議員/日本内視鏡外科学会評議員/日本呼吸器内視鏡学会評議員/癌治療認定医/ダビンチコンソールサージャン・プロクター・メンター/日本呼吸器外科学会胸腔鏡安全技術認定制度認定医/肺がんCT検診認定医/医学博士
  • 当院の呼吸器外科では胸部の肺、気管・気管支、縦隔、胸膜、胸壁などの臓器を対象に、肺がんを中心として縦隔腫瘍、気胸などの手術を行っています。呼吸器内科、放射線診断科、放射線治療科、病理診断科、リハビリテーション科と連携をとって患者さんにベストな治療が行える体制を整えております。

    世界的視野に立った最高水準で最先端の医療を追求し、それを地域の皆様の診療にいかすと共に、地域に根差した最新の医療を世界に発信できる呼吸器外科を心がけております。

    肺がんで手術を受ける患者さんの多くは、手術前には元気に自宅で過ごされていた方々です。肺がんの手術は1,000人中5人ほどの方が、肺炎などの術後合併症により病院で亡くなると報告されております。それを防ぐためにも術後早期に歩き、食事を開始し、点滴量を減らし、早期に退院することが重要です。当科の手術では患者さんが不快となる尿カテーテル(おしっこの管)や硬膜外麻酔チューブ(背中に入れる痛み止めの管)は通常留置しません。

  • 術後も原則として集中治療室や術後回復室には入らず、手術前にいた一般病棟の部屋に戻ります。術後2時間前後で歩行と飲食を開始して点滴を抜去しております。その後は自由にどんどん病棟内を歩行していただき、順調に経過すれば手術翌日に自宅に退院していただきます。このような早期離床、短期入院が実現できた大きな理由の一つが、2018年に保険適用となったロボット手術です。

    「小医は病を医し、中医は人を医し、大医は国を医す」との中国の諺(ことわざ)があります。病、すなわち肺がんは手術で治ったけれど、長期入院で認知症が悪化したり、入院前は自宅生活していたのに施設に転院となったり、手術後寝たきりになったりしないように、手術しても手術前と同等な生活を送れることが目標です。

    「気診心診」の格言のように、患者さんの気持ち、心をいつも考えて、私の夢である「創のない、痛みのない、笑顔で退院して早期社会復帰できる」手術に取り組んでいきたいと考えています。外科医として少しでも皆様のより良き人生のお役に立てるように、今後も精進してまいりたいと思います。

【目次】

肺がんの手術

  • 肺区域切除と肺部分切除肺区域切除と肺部分切除
  • 肺の手術では肋骨の間から胸の中に入る必要があり、そのため胸を大きく開く開胸手術では肋骨を切断したり、胸腔鏡下手術でも肋骨の間にポートと呼ばれる円筒を留置することが必要です。これにより肋間神経が障害されますので、胸部の手術は一番痛い手術に分類されております。現在当科での肺切除術のアプローチ方法の基本方針は以下の通りです。
    肺葉切除 → 2019年4月~ロボット手術
    肺区域切除 → 2020年4月~ロボット手術
    肺部分切除 → 単孔式手術または肋骨弓(ろっこつきゅう)下経横隔膜手術
    もちろん腫瘍の進展状況によっては開胸手術を選択する場合もあります。

早期離床/飲食開始および入院期間短縮の利点と取り組み

術後1時間半から2時間で歩行、飲食を開始し、点滴も抜去します。これにより肺炎の併発や心肺機能低下を起こす可能性が減少し、入院ストレスも減少し、手術翌日退院へとつながります。特に高齢の患者さんでは入院期間延長によって廃用症候群(筋力低下/認知機能低下など)が起こりやすくなります。さらには早期退院により、早期社会復帰も可能となります。経済的にも患者さんにとって入院費用が軽減されるだけでなく、多くは税金で成り立っている国全体の医療費の削減にも役立ちます。

全国の肺悪性腫瘍の平均在院日数 病院指標(令和2(2020)年度)

名称 平均在院日数(当院) 平均在院日数(全国)
胚の悪性腫瘍 手術あり 3.47 10.83

胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術術式別の当科の病院指標 病院指標(令和2(2020)年度)

手術名称 患者数 平均手術日数 平均術後日数
腹腔鏡下肺悪性腫瘍手術
肺葉切除
48 0.92 1.63
腹腔鏡下肺悪性腫瘍手術
部分切除
24 0.83 1.96
腹腔鏡下肺悪性腫瘍手術
区域切除
13 0.92 1.62

肺葉切除術と区域切除術はロボット手術、部分切除は腹腔鏡手術

内視鏡手術支援ロボット「ダビンチXi」を用いたロボット手術

ダビンチXiを用いたロボット手術

ダビンチXiによるロボット手術

当院では、肺がん(肺葉切除、区域切除)、縦隔腫瘍、重症筋無力症に対して、体に優しい低侵襲のロボット(ダビンチXi)手術が保険適用となっております。肺がん手術でのポート数は5個(8mm×4個、12mm×1個)と多いのですが、肋骨に力が加わらないように(てこの支点作用が肋骨に働かないように)ロボットのポートは動きますので、通常の多孔式胸腔鏡手術よりも痛みは少ない印象があります。

単孔式手術

複数の肋間にポートを留置することによる複数レベルの肋間神経損傷に基づく疼痛を避けるため、1つの肋間にだけポートあるいは切開創をおいた単孔式胸腔鏡下手術です。

肋骨弓下経横隔膜手術

肋間操作による肋間神経障害に起因する疼痛を最小限に抑えるために、肋間には最小径のポートを設けた経横隔膜下アプローチを開発して、100人以上の患者さんに施行してきました。この方法では、肺部分切除では3mmの創を2カ所肋間にあける手術を行っております。肋間以外にもう一つ、1.5㎝程度の創を肋骨のないところにあけます。主に肺部分切除術で行っています。

ロボットニューテクノロジーが呼吸器外科手術にもたらした1泊2日の肺がん手術

  • 当院でのロボット手術当院でのロボット手術(340例)
  • 肺がん肺葉切除術肺がん肺葉切除術

当科のロボット手術では患者さんの苦痛になる尿カテーテル(おしっこの管)、動脈ライン(血圧を測定)、硬膜外麻酔チューブ(背中の痛み止めのチューブ)は通常留置しません。これによって術後早期(術後1.5~2時間)の歩行・飲食が可能となり、静脈に留置した点滴ラインも抜去します。その後は手術翌日退院へ向けて、どんどん歩行し、麻酔の影響で吐き気などがなければ好きなものを好きなだけ食べていただきます。

最近、肺がんで肺葉切除術を受けられた患者さん100人中、83人の患者さんが手術翌日に自宅退院されました。
詳細は動画でご覧いただけます(小田医師による健康講座動画)

当院が、肺葉切除のダビンチ手術における症例見学施設に認定されました

  • ダヴィンチ症例見学施設認定証書ダヴィンチ症例見学施設認定証書
  • 当院は2021年10月に、内視鏡手術支援ロボット「da Vinci(ダビンチ)Xiシステム」を用いた肺葉切除手術について、製造元であるインテュイティブサージカル社より、“ダビンチ手術の豊富な経験と高い技術を持つ指導者が従事する施設である”との評価を受け、「症例見学施設(メンターサイト)」に認定されました。

    ダビンチを用いた手術を行うためには、関連学会のガイドラインに定められた一連のトレーニングを受けることが義務付けられており、このトレーニングのひとつに、メンターサイトにおいて手術症例見学を行うことが定められています。

この度の認定は、当科のダビンチを用いた肺葉切除手術の技術やこれまでの実績が評価されたものです。

医師紹介

①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格・公職等
  • 小田 誠(呼吸器センター長、呼吸器外科統括部長)

    ①呼吸器外科全般、肺がん、縦隔腫瘍、胸壁腫瘍、気胸、胸腔鏡手術、ロボット手術 ②金沢大学医学部 ③日本外科学会専門医・指導医/呼吸器外科専門医/日本呼吸器外科学会指導医/日本胸部外科学会指導医/日本呼吸器学会専門医/日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医/日本呼吸器外科学会評議員/日本内視鏡外科学会評議員/日本呼吸器内視鏡学会評議員/癌治療認定医/ダビンチコンソールサージャン・プロクター・メンター/日本呼吸器外科学会胸腔鏡安全技術認定制度認定医/肺がんCT検診認定医/医学博士

  • 濱中 瑠利香(呼吸器外科医長)

    ①呼吸器外科全般 ②東海大学医学部 ③日本外科学会専門医/呼吸器外科専門医/ダビンチコンソールサージャン・プロクター/日本呼吸器外科学会胸腔鏡安全技術認定制度認定医/医学博士

【専門外来のご案内】ストーマ外来

皮膚・排泄ケア認定看護師 吉岡 百合子

ストーマ外来とは

ストーマ(人工肛門や人工膀胱など)を保有されている方(オストメイト)が、ストーマと共に、より快適な日常生活を送れるよう支援する専門外来です。

ストーマ外来の実際

ストーマの専門的知識をもった看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師)が担当し、実際にストーマの装具交換を行いながら、日々のケア方法の確認、ストーマや周囲皮膚の状態の評価、適切なストーマケア方法をご提案しています。

  • ストーマ外来
    1. ストーマの定期チェック
    2. 装具交換や、周囲のスキンケア方法の説明
    3. ストーマや腹壁の状態に合わせた装具の選択
    4. ストーマ周囲皮膚障害への対応
    5. ストーマ合併症への対応
    6. 日常生活における情報提供
    7. 社会生活(趣味やお仕事など)に合わせた装具の提案
    8. 新商品の紹介
    9. ストーマに関する様々な悩みごとの相談

患者さんへ

ストーマのことでお悩みの方、定期受診されていない方、他院でストーマ造設された方など、外来受診ご希望の方はお気軽にご連絡ください。

診察日時

・消化器外科 ストーマ外来(消化管の人工肛門)

毎週金曜日 14:00 ~ 17:00
担当医師:小林 徹也(消化器外科部長)
担当看護師:吉岡 百合子(皮膚・排泄ケア認定看護師)

・泌尿器科 ストーマ外来(人工膀胱や尿管皮膚瘻など)

毎週月曜日 14:00 ~ 17:00
担当医師:伊関 亮(泌尿器科部長) 
担当看護師:吉岡 百合子(皮膚・排泄ケア認定看護師)

外来診療予約専用TEL(通話料無料) 0800-800-6456【予約制】

※あらかじめ外来診療担当表をご確認の上、ご予約をお取りいただいてからご来院ください。