広報紙 vol.56しんゆりニュースレター

2022/10/1掲載

小児科特集

小児科特集|広報紙

  • 新百合ヶ丘総合病院
    小児科部長
    しもざと さちこ
    下郷 幸子 医師
  • 【プロフィール】
    2000年福井大学医学部卒業。慶應義塾大学病院小児科。13年永寿総合病院小児科。16年国家公務員共済組合連合会立川病院小児科。22年4月より現職。
    日本小児科学会専門医/小児神経専門医
  • 当院小児科では、地域の小児・周産期医療に貢献すべく、近隣地域からの救急搬送や診療所からの紹介患者さんを積極的に受け入れております。また、急性期疾患の診療に加え、各種専門外来での専門診療も行っております。

    2020年に始まったコロナ禍により、小児科を受診される患者さんの様相は一変しました。当初は、行動制限や手洗い・消毒の徹底により感染症が激減し、一斉休校や学校行事の中止など大きな環境変化から心身の調子を崩す子どもが増えました。第6波からは子どもの間でも新型コロナウイルス感染が広がり、第7波真っ只中の現在はこれまでになく小児医療が逼迫しています。このような急激な変化に対して、柔軟に対応していくことが求められていると感じております。

    一般外来においては、感染症対策が最大の課題となっています。当科外来では4つの陰圧診察室を用意し、感染症の方もそうでない方も安全に受診していただけるよう設備を整えました。専門外来では、慶應義塾大学小児科学教室と連携して神経、アレルギー疾患、腎臓、リウマチ性疾患、循環器、内分泌、血液、呼吸器疾患などの診療を行っております。

  • 身近な病院で専門的な医療を受けることができ、さらに大学病院や高次医療施設と連携することで、より高度な医療に速やかにアクセスできる体制を整えております。私が担当いたします神経外来では、けいれん性疾患や頭痛、発達に不安のあるお子さん、落ち着きがない、集中できない、コミュニケーションが苦手、など神経発達症が疑われるお子さんの相談、治療を行っております。

    周産期医療においては、新生児の管理、乳幼児健診や定期予防接種事業に加え、RSウイルスにリスクの高いお子さんへのパリビズマブ(シナジス)投与、新生児の遺伝病スクリーニング検査(神経難病、先天代謝異常症など)を行っております。遺伝病に対する治療は近年飛躍的に進歩しており、治療可能な疾患を早期に発見することがますます重要になってきております。

    これからも時代の変化に柔軟に対応しつつ、近隣の診療所や高次医療施設との連携を大切に、安心安全な医療を提供していきたいと考えております。お気軽に患者さんをご紹介いただければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。

【目次】

感染症対策について

陰圧診察室を増設しました

当科外来では、従来からある2つの陰圧診察室に加え、新たに診察用の陰圧テントを2つ設置しました。これにより、発熱のある患者さんと発熱のない患者さんを分けるだけでなく、発熱のある患者さん同士の接触も最小限に抑えられるようになりました。

感染症ではない方に安心して受診していただくことはもちろん、新型コロナウイルス陽性の方や濃厚接触者の方にも対応できるよう、万全の対策を整えております。

  • 陰圧テント陰圧テント
  • 陰圧診察室陰圧診察室

けいれん性疾患について

  • ビデオ脳波モニタリングビデオ脳波モニタリング
  • 小児のけいれんで最も多いのは熱性けいれんです。生後6カ月から5歳くらいまでのお子さんに、発熱に伴って起こるけいれんです。発熱を伴わないけいれんを反復する場合には、てんかんが考えられます。その他、低血糖や電解質異常、急性脳炎や髄膜炎などによってけいれんが起こる場合もあります。また、けいれんと間違えやすいものとして、憤怒 (ふんぬ)けいれん、身震い発作、入眠時ミオクローヌス、夜驚症(やきょうしょう)、チックなどがあります。

    これらを区別し正しく診断するためには、けいれんの様子を詳しく知ることが必要です。診察室で実際にけいれんの様子を観察できることはほとんどないため、けいれんを目撃した方からの詳細な情報が不可欠です。

しかし、目の前でけいれんが起こると気が動転してしまい、けいれんの様子を正確に覚えていないこともよくあります。このような時に役に立つのがスマートフォンなどでの動画撮影です。特に、繰り返し起こる場合には撮影をするチャンスも多いと思います。診察時に動画を見せていただけると、より正確な診断に繋がります。

神経発達症(発達障害)について

神経発達症は脳機能の不具合によって生じる発達の特性で、発達早期から、コミュニケーションや社会性、行動面などにおいて困難さを認めます。代表的なものに注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症があります。

ADHDは、じっとしていられない、衝動的に行動してしまうなどの多動・衝動性と、気が散りやすい、ケアレスミスや忘れ物が多いなどの不注意症状が特徴です。これらが2つ以上の状況において(家庭、学校、習い事など)問題となることも特徴です。治療には、心理社会的治療と薬物療法があります。心理社会的治療には、環境調整、ペアレントトレーニング、療育などがあります。薬物療法では、メチルフェニデート(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)、リスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセ)が用いられます。それぞれ効果、持続時間、副作用に特徴がありますので、何をどう改善したいのかをよく話し合った上で最も適した薬物を選択します。これらのうちコンサータとビバンセは「ADHD適正流通管理システム」に登録された医師・薬局でのみ処方が可能です。当院でも処方可能ですので、ご相談ください。

自閉症はコミュニケーションが苦手、行動や興味が限定的、こだわりが強い、感覚の過敏さ・鈍感さ、などが特徴です。治療には、本人の特性に合わせた接し方、環境調整、ルール作りと、療育が中心となります。応用行動分析(ABA)なども有効です。イライラや癇癪(かんしゃく)によって日常生活に支障をきたす場合には、補助的に薬物療法を行うこともあります。

神経外来のご案内

診察日 月曜日 午前、水曜日 午前(予約制)
可能な検査 血液検査、頭部CT検査、頭部MRI検査、脳波検査、ビデオ脳波モニタリング検査など

※検査時に安静を保つことが難しい場合は、鎮静薬を用いて検査を行うことがあります。検査内容によっては入院になることがあります。
※心理検査(知能検査)は現在のところ行っておりません。

小児科専門外来

  1. 心臓外来(先天性心疾患、不整脈、川崎病など。学校心臓病検診にも対応)/第1木曜午後、土曜(第1以外)午後
  2. 腎臓外来(腎炎、ネフローゼ、慢性腎疾患、夜尿症。学校腎臓病検診にも対応)/第2・4金曜午後、第1・3土曜午後
  3. 呼吸器外来(小児喘息・喉頭軟化症などの呼吸器疾患、長引く咳などの管理)/第2・4木曜午後
  4. 神経外来(てんかん、頭痛、神経発達症、くりかえす熱性けいれんの管理)/月曜午前、水曜午前
  5. 内分泌外来(低身長、甲状腺疾患、糖尿病、副腎疾患、性腺疾患、性分化疾患の専門的管理)/木曜午後
  6. アレルギー外来(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの専門的管理)/水曜午前・午後(変動します)、ほか
  7. 血液外来(貧血、白血病の診断、出血性疾患、リンパ系疾患、腫瘍性疾患の診断、など)/第2・4土曜午後、ほか

小児科医師紹介

①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格・公職等
  • 下郷 幸子(小児科部長)

    ①小児科一般/小児神経 ②福井大学医学部 ③日本小児科学会専門医/小児神経専門医

  • 本田 尭(小児科医長)

    ①小児腎疾患/小児リウマチ性疾患 ②慶應義塾大学医学部 ③日本小児科学会専門医・指導医

  • 和田 未来(小児科医長)

    ①小児科一般/アレルギー ②東京女子医科大学医学部 ③日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医

  • 多喜 萌(小児科医長)

    ①小児科一般/小児循環器 ②日本大学医学部 ③日本小児科学会専門医

  • 堤 健太郎(小児科医員)

    ①小児科一般 ②佐賀大学医学部 ③なし

  • 髙橋 哲朗(小児科医員)

    ①小児科一般/小児神経 ②慶應義塾大学医学部 ③日本小児科学会専門医

  • 鈴木 惟子(小児科医員)

    ①小児科一般/小児腎臓 ②慶應義塾大学医学部 ③なし