広報紙 vol.50しんゆりニュースレター

2022年2月1日掲載

循環器内科特集

24時間365日、外科との連携診療ですべての患者さんに最善の治療を

  • たかはし よしひで
    髙橋 良英 医師
  • 【プロフィール】
    1997年東京医科歯科大学医学部卒業。土浦協同病院、フランスボルドー大学病院(Haut-Lévêque Cardiology Hospital)、横須賀共済病院、東京医科歯科大学先進不整脈学准教授を経て、2021年4月より現職。Best Doctors in Japan。
    医学博士/日本内科学会総合内科専門医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本不整脈心電学会認定不整脈専門医
  • 当院の循環器内科は8人の医師と前期・後期研修医により構成されています。循環器疾患は重篤な急性疾患が多く、院内急変や救急外来患者に迅速な対応を行うため、当科では24時間365日、当直をおいています。

    循環器内科で扱う疾患には、冠動脈疾患、心不全、不整脈、大動脈疾患、肺血栓塞栓症、心筋炎・心膜炎などがあります。当院では2020年春より新棟が開設されました。新棟の救急外来の隣に新たに急患用のカテーテル室が設置されたことにより、予定のカテーテル検査中であっても、新設されたカテーテル室で救急患者さんを直ちに検査・治療できるようになりました。

    循環器疾患に対するカテーテル治療の多くは内科で行われますが、外科手術が必要な患者さんもいますので、心臓血管外科および血管外科と連携して、個々の患者さんにとって最善の治療を提供しています。

    循環器疾患の多くは加齢に伴い増加します。心不全や心房細動は特に社会の高齢化と関連しており、患者数は著しく増加してきています。心不全に関しては、近年、新たな薬剤が開発され、当院でも従来の薬剤では効果不十分な患者さんには新たな薬剤を積極的に導入しています。

  • 心房細動は症状が徐々に進行するため、自覚症状に乏しい患者さんが多く見受けられます。 しかし、症状の乏しい患者さんでもカテーテルアブレーション治療により正常の脈に回復することで、劇的に症状・QOLの改善をみとめることから、心房細動に対するアブレーション治療のご紹介は増加してきています。

    私は不整脈疾患を専門としていますが、その中でも特にカテーテルアブレーション治療を専門としています。カテーテルアブレーションは心房細動や心室頻拍(しんしつひんぱく)など、脈の速くなる不整脈疾患に対する治療です。研修医を修了してからアブレーション治療に携わり、これまで5,000件以上の治療に関わらせていただきました。現在は新たなアブレーション機器を用いて、より有効で安全な治療の開発に取り組んでいます。

    当科では、あらゆる循環器疾患の個々の患者さんに対して、外科と連携しながら最新のデータに基づいた最善の治療を迅速に提供することを心がけています。

    循環器疾患が疑われる患者さん、これまでの治療では病状が改善しない患者さんがおられましたら、いつでもご相談いただけますよう、よろしくお願いいたします。

【目次】

心房細動と認知症

循環器内科部長(不整脈部門)髙橋 良英

心房細動になると左心房内に血栓が形成されやすく、その血栓が血流にのって脳動脈へ流れてゆくと、脳梗塞を発症します。そこで、心房細動患者には血栓形成を予防する内服薬が用いられ、その結果、最近10年間で脳梗塞発症率は低下してきています。しかしながら、脳梗塞を予防しても、心房細動患者は認知症発症率が高いことが近年の研究で明らかとなってきました。

  • 心房細動と認知症
  • 我々は、心房細動アブレーションの前後で認知機能検査(CANTAB)を施行し、アブレーション治療6カ月後には治療前よりも認知機能が改善していることを確認しました。さらに、頭部MRI検査により脳血流量を調べたところ、持続性心房細動の患者では、治療6カ月後の脳血流量が治療前と比較して9%、記憶と関連している脳の領域である海馬の容積が1.3%増加していることが分かり、学会で報告しています。

この研究結果から、心房細動が持続することにより脳血流量が低下し、慢性的な脳血流量低下が認知機能に悪影響を及ぼしていると考えています。心房細動患者の認知機能低下を防ぐために我々は研究を続けています。

新たなアブレーションシステム

循環器内科部長(不整脈部門)髙橋 良英

  • EnSite Xシステムを用いたアブレーションEnSite Xシステムを用いたアブレーション
  • カテーテル治療ではX線診断装置を用いて、心臓の中にあるカテーテルの位置を認識しますが、心臓の形状はX線ではわからないため、心臓内にあるカテーテルが心臓の壁に当たる感覚を頼りに術者はカテーテルの操作を行っていました。

より正確なカテーテル操作を可能とするために、現在ではカテーテル台に磁場発生装置を設置し、先端に磁場センサーが埋め込まれたカテーテルを用いて、X線を用いずにコンピュータ上にカテーテルの位置を常に表示する3Dナビゲーションシステムがアブレーション治療では使用されています。

Abbott社のEnSite Xシステムは、2021年夏に承認された最新の3Dナビゲーションシステムで、より高い精度で短時間に大量のデータを取得・解析できるようになりました。

このシステムを用いた本邦1例目のアブレーション治療が2021年7月に当院で施行されました。現在、同システムを用いることにより、どのようにアブレーション治療を効率化することができるか当院で検討しています。

  • CARTOSOUND FAMを用いた左心房の3次元像構築CARTOSOUND FAMを用いた左心房の3次元像構築
  • 3Dナビゲーションシステムを使用する際には、術前に造影CT検査を行い、心臓の3次元像を3Dナビゲーションシステムに表示します。

    造影CT検査は造影剤アレルギーの患者さんには施行できません。また、患者さんのX線被曝もあることから、CT検査を施行せずに心腔内超音波により心臓の3次元像を構築する新しいソフトウェア(CARTOSOUND FAM, Johnson & Johnson)が開発され、当院では本邦で唯一このソフトウェアを導入しています。

本ソフトウェアは、まだCT検査と比較して精度は劣るため、現在は可能な患者さんにはCT検査を術前に受けていただいていますが、我々の今行っている試みが、未来のアブレーション治療につながるものと期待しています。

重度石灰化を伴う冠動脈病変に対する新たな治療

循環器内科部長(冠疾患部門)櫻井 馨

冠疾患部門における新しいトピックとして、2022年はじめには当院でも単独使用可能になる予定のDiamondback 360® Coronary Orbital Atherectomy システムがあります。これは重度石灰化を伴う冠動脈病変の石灰化を切削するデバイスです。

  • ダイヤモンドバック(メディキット株式会社ホームページより)ダイヤモンドバック
    (引用元:メディキット株式会社ホームページより)
  • ダイヤモンドコーティングされているクラウンと呼ばれる部分が1分間に8万回あるいは12万回の軌道回転することで遠心力を利用して石灰化病変を360度大きく治療することが可能です。病変形態に応じて既存のロータブレーターとダイヤモンドバックを使い分けて、あるいは併用することでより安全な石灰化病変の切削を心がけています。

右小開胸下心臓手術(MICS)

心臓血管外科 前場 覚

  • 右小開胸下心臓手術の様子右小開胸下心臓手術の様子
  • 基本的に心臓手術は、前胸部の真ん中を20~25cmほど縦に切開し、胸骨を切断して手術をするのが一般的です。

    しかし、一部の心臓病に対しては、右の第3あるいは第4肋間を7cmほど切開し、肋骨と肋骨の間から手術を行っています。これを、Minimally Invasive Cardiac Surgery、通称MICS(ミクス)と呼んでいます。

  • 右小開胸下心臓手術の切開範囲右小開胸下心臓手術の切開範囲
  • 右小開胸下心臓手術後右小開胸下心臓手術後

この方法は創部が小さいだけでなく、感染や出血が少ないという利点があります。主には、僧帽弁疾患、大動脈弁疾患などの弁膜症、先天性心疾患の一部を対象疾患としています。本手術に関するお問い合わせは、心臓血管外科外来までお気軽にご連絡ください。

循環器内科の受診について

循環器内科を受診の際は必ずご予約をお取りの上ご来院ください。
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循環器内科医師紹介

  1. 専門分野/得意な領域
  2. 卒業大学
  3. 専門医・指導医・資格・公職等
  • 畔上 幸司(あぜがみ こうじ)(副院長、循環器内科 統括部長)

    1. 不整脈、カテーテルアブレーション、心臓突然死、心臓植込み型デバイス治療
    2. 群馬大学医学部卒業
    3. 医学博士/日本内科学会認定内科医・指導医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本不整脈心電学会認定不整脈専門医/日本不整脈心電学会ICD/CRT研修修了/日本循環器学会認定FJCS
  • 櫻井 馨(さくらい かおる)(循環器内科 部長(冠疾患部門))

    1. 虚血性心疾患、心血管インターベーション、循環器疾患一般
    2. 東京慈恵会医科大学卒業
    3. 医学博士/日本内科学会総合内科専門医・指導医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本心血管インターベンション治療学会専門医/日本不整脈心電学会ICD/CRT研修修了
  • 髙橋 良英(たかはし よしひで)(循環器内科 部長(不整脈部門)

    1. 不整脈診療、カテーテルアブレーション
    2. 東京医科歯科大学医学部卒業
    3. 医学博士/日本内科学会総合内科専門医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本不整脈心電学会認定不整脈専門医/日本不整脈心電学会ICD/CRT研修修了
  • 佐藤 弘典(さとう ひろのり)(循環器内科 医長)

    1. 不整脈診療、カテーテルアブレーション、心臓植込み型デバイス治療、循環器疾患一般
    2. 北海道大学医学部卒業
    3. 医学博士/日本内科学会総合内科専門医・指導医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本不整脈心電学会認定不整脈専門医
  • 福島 琢(ふくしま たく)(循環器内科 医長)

    1. 虚血性心疾患、心血管インターベーション、循環器疾患一般
    2. 札幌医科大学医学部卒業
    3. 日本内科学会認定内科医・指導医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本心血管インターベンション治療学会認定医
  • 土方 禎裕(ひじかた さだひろ)(循環器内科 医長)

    1. 虚血性心疾患、心血管インターベーション、循環器疾患一般
    2. 大分大学医学部卒業
    3. 日本内科学会総合内科専門医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本心血管インターベンション治療学会認定医
  • 前野 遼太(まえの りょうた)(循環器内科 医員)

    1. 虚血性心疾患、心血管インターベーション、循環器疾患一般
    2. 宮崎大学医学部卒業
    3. 日本内科学会認定内科医/日本心血管インターベンション治療学会認定医
  • 秋元 耕(あきもと こう)(循環器内科 医員)

    1. 不整脈診療、カテーテルアブレーション、循環器一般
    2. 日本医科大学医学部卒業
    3. 日本内科学会認定内科医