広報紙 vol.49しんゆりニュースレター
2022年1月1日掲載
脳血管内治療(カテーテル治療)を中心とした専門的な医療を提供
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新百合ヶ丘総合病院
脳神経外科(脳血管内治療部門)部長 -
【プロフィール】
2000年昭和大学医学部卒業。昭和大学藤が丘病院脳神経外科に入局、中村記念病院、横須賀市立うわまち病院、葛西昌医会病院に勤務。2015年4月新百合ヶ丘総合病院脳神経外科に勤務。2017年昭和大学大学院卒業。2018年アルゼンチン共和国Clínica La Sagrada Familiaに留学。2020年4月より現職。
日本脳神経外科学会専門医・指導医/日本脳卒中学会専門医・指導医/日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医/宇宙航空医学認定医
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私は2015年4月に当院に赴任いたしました。当時から当院の脳神経外科は治療件数も多く、特に脳腫瘍の患者さんを多く治療しておりましたが、脳梗塞や脳動脈瘤に対する脳血管内治療(カテーテル治療)に関しては専門の医師がいない状況でした。
そこへ私が大学病院時代からの仲間とともに赴任し、当院でも脳血管内治療を始めることになりました。
脳血管内治療は比較的新しい治療方法であり、現在でも常に進化しつづけております。治療対象としては、主に脳動脈瘤(くも膜下出血)や脳梗塞などがあります。特に急性期脳梗塞治療に関しては、今やカテーテル治療はなくてはならない治療法となりました。
また脳動脈瘤の治療も私が医師になった頃には開頭手術が一般的で、カテーテル治療はごく一部でしか行われておりませんでしたが、現在では脳動脈瘤の半分ほどがカテーテルで治療されるまでに至りました。
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手術治療のみ行っているわけではありません。社会の高齢化とともに入院される患者さんの高齢化も進んでおり、多くの患者さんが手術以外の治療やリハビリ治療を受けておられます。
時には回復の難しい病気の方や治療に難渋する方もいらっしゃいますが、そのような時も“自分の家族だったらどうするか”と常に考えて治療にあたるよう心懸けています。
日本中がコロナウイルスの脅威に晒され、我々病院スタッフも感染の恐怖と対峙しながら治療にあたっていますが、脳卒中の治療には一刻の猶予もありません。患者さんが一刻も早く適切な治療を受けられるように当院では様々な対応策をとっており、コロナ禍以前と同様に治療が行われるように努力しています。
当院は多くの診療科を擁する総合病院であり、地域の中核病院としての役割を果たさなければなりません。すでに近隣のみならず、多くの医療施設からご紹介をいただいておりますが、これからも包括的かつ専門的な治療を提供することで、より一層の信頼をいただけるようにスタッフ一同努力してまいります。
脳血管内治療(カテーテル治療)とは
脳血管内治療は聞き慣れない言葉だと思いますが、通常の脳外科手術が皮膚を切開して脳の外側から手術を行うのに対して、カテーテルという直径1mmに満たない細い管を使用して、脳血管の内側から治療を行うため、脳血管内治療と呼ばれています。
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主な治療対象は脳動脈瘤、脳梗塞、頸動脈狭窄、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻など多岐にわたりますが、特に脳動脈瘤や脳梗塞治療における治療の進歩は著しく、もはやなくてはならない治療方法となりました。
脳血管内治療の進歩により、それまでは治療が困難であった脳動脈瘤や、点滴でしか治療できなかった重症脳梗塞も治療できるようになり、世界中で普及してきています。
また頭部を切開する必要がないため、体力のない患者さんでも治療が受けられるようになりました。
当院の特徴
当院には脳血管内治療のできる専門医・指導医が3人在籍しており、脳神経外科医のみならず神経内科医・救急治療医と連携して、いつでも緊急治療に対応できるような体制を整えています。
また2021年から脳卒中専用病棟(SCU)や、CT検査と連動した最新の血管撮影装置が導入され、患者さんにとってベストの治療ができるようになっています。
代表的な治療例
① 脳動脈瘤
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脳動脈瘤は脳の血管にできた小さな血管の瘤で、これが破裂すると“くも膜下出血”をおこします。直径約0.7mmの細いマイクロカテーテルを、血管を通して動脈瘤の中に留置し、このマイクロカテーテルを通して、プラチナ製のコイルといわれる紐状の金属を動脈瘤内に充填して破れないようにします。
② 脳梗塞
脳梗塞は脳の血管が血栓によって閉塞し、脳への血流が途絶えることで脳が障害を受ける病気です。重症の場合には意識障害や失語(言葉が話せなくなる)、運動麻痺などの症状がおこり、寝たきりになったり、時には命に関わることもあります。
カテーテル治療は、このような重症の脳梗塞の場合に行われ、細いカテーテルを閉塞した血管に誘導し、ステントと呼ばれる小さな筒状の道具で血栓を絡め取って血流を再開させます。
脳血管内治療 年別疾患別手術件数
看護部コラム
AEDの操作方法について
救急看護認定看護師 伊藤 奈保美
心停止時にどれだけ早くAED(自動体外式除細動器)を使用するかによって生存率が大きく変わってきます。落ち着いて、素早く操作できるよう日頃からイメージしておきましょう。緊急事態には気が動転して頭が真っ白になってしまうこともあります。また、安全にショックをかけることも大事です。練習の機会があれば是非参加してみるのも良いですね。
AEDの基本的操作
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AEDの基本的な操作は下記の3ステップです(下図参照)。機種によっては開けると自動的に電源が入るものもあります。
当院のAEDの普及活動
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当院では、AEDの普及活動を行っております。毎年2月には、川崎市麻生区にある田園調布学園大学が地域の子どもたちのために開催するイベント「ミニたまゆり」に参加し、子どもたちにAEDの使い方を教えてきました。また毎年9月の救急の日には、新百合ヶ丘エルミロードなどの施設で開催される、当院主催「救急の日」イベントにて、AEDの使い方の講習会を行っています(コロナ禍のイベントは中止となっています)。
今後も、一人でも多くの人をAEDで救える社会を目指して、普及に努めてまいります。