広報紙 vol.48しんゆりニュースレター

2021年12月1日掲載

呼吸器内科・呼吸器外科特集

子どもの総合医として、日々研鑽に励んでいます

  • 新百合ヶ丘総合病院
    小児科 医長
    さとう まさのり
    佐藤 公則 医師
  • 【プロフィール】
    慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院小児科。東京歯科大学市川総合病院小児科。長野県立こども病院小児集中治療科フェロー。長野県立こども病院小児集中治療科医長。2019年より現職。
    日本小児科学会専門医・指導医/集中治療専門医/小児感染症学会認定医・暫定指導医/ICD
  • 当科は、川崎市北西部地域の小児・周産期医療を担うことを目的に、開院と同時に開設されました。一般小児内科の外来診療に加え、必要な症例の入院管理、主に当該地域で発生した小児救急患者の積極的な受け入れ、当院で出生される早産児を含む新生児の管理を行っています。

    また、一次予防は重要なことと考え、川崎市医師会を通じた母子保健事業(乳幼児検診)に加え定期予防接種事業を行っています。

    小児科医は、子どもの総合医です。子どもの病気の診療を行うだけではなく、健やかな成長や発達をサポートすることが責務であり、子どもはもちろん、保護者の不安に寄り添える人間性も要求されます。診療の範囲は成育医療も含め広範囲に及び、専門によって細分化される多くの診療科と比し、幅広い知識とそれに対応する能力が必要とされる仕事でもあり、その自負を持ち日々研鑽に励んでおります。

    現在、当科は常勤医8人で多くが小児科専門医を取得しており、子どもに関わる幅広い相談に対応できる体制があります。また、時に必要とされる専門診療も幅広くカバーしており、常勤で不足する診療範囲は、慶應義塾大学小児科学教室と連携し専門外来を設けています。

  • 常勤の専門は、小児神経疾患を四家部長をはじめとする3人が、需要が高まるアレルギー疾患を和田医長が、心臓疾患を多喜医長が、腎臓疾患に関しては鈴木医員が担当し、それぞれ専門外来に携わっております。

    私自身は過去、小児病院で集中治療に携わってまいりましたが、集中治療室内での専門診療を続けるのではなく、裾野の広い診療現場を選びました。救急疾患は、初療の良し悪しが予後の多くを規定することが多く、必要な初療を低次医療機関で行うことは非常に重要と考え、自分の経験が当院に搬送、受診されたお子さんの予後改善に少しでも繋がればと思っています。

    また、小児医療では特にコミュニケーションが大切と考えており、医療者の言葉ひとつでご家族が救われも落とされもすることを認識し、診療するよう心がけています。

    2020年より続くコロナ禍で、多くのお子さん、そのご家族が不安な日々を過ごされていることと思います。お子さんの心配事がございましたら、小さなことでもご相談ください。当地域における社会的責任を自覚し、今後更なる診療体制を築いてまいります。近隣の先生方とも連携を強化させていただけましたら幸甚です。何卒よろしくお願い申し上げます。

【目次】

子どもの神経発達症

小児科医長 篠原 尚美

神経発達症(発達障害)とは、発達早期から明らかとなるコミュニケーションや社会性、あるいは行動上の問題をきたす脳機能の障害と考えられています。代表的なものには、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)、注意欠如・多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: ADHD)、限局性学習症(Specific Learning Disorder: SLD)があり、これらを併せ持つお子さんもいらっしゃいます。ASDではことばの発達の遅れや強いこだわり、ADHDでは不注意、多動・衝動性など、何らかの育て難さを示すことが多いといわれます。

  • 子どもの神経発達症
  • 詳細な問診や診察、必要に応じて知能検査、神経心理学的検査(知能検査などは当院では行うことができないため他機関に依頼)などを行い、診断します。同時に、症状が他の原因によるものではないことを見極めることが重要です。
    治療は、適切な対応や環境調整、また症状によっては療育機関へご紹介したり薬物療法を併用することもあります。近年、病態の理解に向け様々な研究が進んでいる分野です。

子どものアレルギー

小児科医長 和田 未来

アレルギーとは、本来私たちの体を守るために備わっている免疫のシステムが、通常体に大きな害を与えない物質に対して過剰に反応し、体に不利益な症状を引き起こすことをいいます。アレルギー疾患にはアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などがあります。

アレルギー体質(アトピー素因)を持つ小児が、これらの疾患を年齢とともに次々と発症していく様子を「アレルギーマーチ」と呼びます。典型的には乳児期のアトピー性皮膚炎、食物アレルギーから始まり、幼児期に気管支喘息、学童期にアレルギー性鼻炎を発症します。

  • 子どものアレルギー
  • 近年、小児のアレルギー疾患が増加してきており、このアレルギーマーチの発症・進展の予防に関する研究も行われていますが、まだわかっていないことも多い分野です。当院小児科アレルギー外来では乳児のアトピー性皮膚炎、食物アレルギーを中心に、科学的根拠に基づき、これらの疾患にお困りの患者さん一人一人に合った治療を行っていきます。乳児湿疹や離乳食でお困りの際もお気軽にご相談ください。

子どもの神経疾患~てんかんの診断~

小児科医長 田村 雅人

てんかんの診断で大切なのは「てんかんらしさ」です。痙攣して病院に運ばれると、てんかんを心配する方が多いと思います。しかし「痙攣≠てんかん」です。痙攣してもてんかんとは限らないし、痙攣しないてんかんもあるのです。食事をしばらく抜いて血糖が下がっての痙攣や熱性けいれんは、てんかんではない痙攣の例です。

また、ぼーっとするだけのてんかんなどが痙攣しないてんかんの例です。その他にも多く例はあります。さらに脳波の異常があっても、てんかんとは限りません。痙攣の様子と脳波の異常が合わなければ関係はないでしょうし、脳波の異常がなくても、30分の検査の間に異常が出なかっただけかもしれません。

  • 子どもの神経疾患
  • てんかん診療で大切なのは問診です。発作を起こす前後、発作時の状況や様子を詳細に聞き取ります。問診票に書いていただいても、改めてしつこく聞くことがあります。さらに脳波も参考にします。診断を誤り、てんかん以外の方がてんかんの薬を飲んでも、上手くいかないからです。発作前後の状況、脳波の異常と発作の様子が合っているかを検討し、よりてんかんらしいかを考えて診断をしています。

子どもの心臓疾患

小児科医長 多喜 萌

子どもの心臓疾患は成人と違い、先天的な構造異常や不整脈などの疾患がほとんどです。お子さん、特に乳幼児は自身で症状を上手く親御さんに伝えることができません。

乳児の場合、一部の心疾患では、おっぱいをとても欲しがるのにあまり量が飲めない(哺乳不良)、いつも呼吸が浅く速い(多呼吸)、おっぱいは飲んでいるのになかなか体重が増えない(体重増加不良)などの他覚的な症状が出現します。頻脈性不整脈では顔色が悪くなったり、嘔吐をしたりすることがあります。

失神(倒れてもすぐに目を覚ますような短い意識消失)を何度も繰り返す場合も、心臓疾患が隠れていることがあるため是非一度ご相談ください。

  • 子どもの心臓疾患
  • 生まれた直後は症状がなくとも、乳幼児健診で異常を指摘されて初めて見つかる疾患も少なくありません。近年では、小児循環器学の進歩により多くの先天性心疾患は就学前に発見されます。小学生以降でも、学校心臓検診の一次検診により心臓疾患が見つかることがあります。当院では、二次検診も請け負っており、手術やカテーテル治療が必要な疾患は、大学病院やこども病院と連携して診療を行っています。

子どもの腎臓疾患

小児科 鈴木 惟子

小児の腎臓疾患は多彩であり、身体へ様々な症状を引き起こし、身体機能への影響も多彩です。当院で治療を行なっている腎臓疾患には学校検尿や健診で指摘された血尿や蛋白尿などの異常をはじめ、急性糸球体性腎炎、慢性糸球体性腎炎、ネフローゼ症候群、尿路感染症、紫斑病性腎炎、水腎症、先天性腎尿路奇形、高血圧、夜尿症などが挙げられます。

高度な医療、先進医療についても、主に慶應義塾大学病院や都立小児総合医療センターなどと連携しながら診療を行なっています。また、他県へ転居される場合も、それぞれの地域の専門病院へのご紹介を行うことも可能です。

  • 子どもの腎臓疾患
  • 当科では月に3度腎臓外来を設けており、腎臓専門医の慶應義塾大学病院小児科学教室井口智洋先生、および国立病院機構埼玉病院小児科部長の上牧勇先生をお招きしており、症例について検討を加え、対応しております。

    成長期にある子どもたちにとって最適な治療をご提案し、思春期や成人期へ向けた治療設計を行なっていますので、是非ご相談ください。

小児科専門外来

  1. 心臓外来(先天性心疾患、不整脈、川崎病。学校心臓病検診にも対応)/第1木曜午後、土曜(第1以外)午後
  2. 腎臓外来(腎炎、ネフローゼ、慢性腎疾患、夜尿症。学校腎臓病検診にも対応)/第1水曜午前、月2回土曜午後
  3. 呼吸器外来(小児喘息・喉頭軟化症などの呼吸器疾患、長引く咳などの管理)/第2・4木曜午後
  4. 神経外来(てんかん、頭痛、発達障害、くりかえす熱性けいれんの管理)/火曜午後、水曜午後
  5. 内分泌外来(低身長、甲状腺疾患、糖尿病、副腎疾患、性腺疾患、性分化疾患の専門的管理)/木曜午後
  6. アレルギー外来(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの専門的管理)/水曜午前・午後(変動あり)
  7. 血液外来(貧血、白血病の診断、出血性疾患、リンパ系疾患、腫瘍性疾患の診断、など)/第2・4土曜午後

小児科医師紹介

  1. 専門分野/得意な領域
  2. 卒業大学
  3. 専門医・指導医・資格・公職等
  1. 四家 達彦(小児科部長)
    ①小児科一般/神経
    ②福島県立医科大学卒業
    ③日本小児科学会専門医・指導医/臨床研修指導医/ 川崎市児童虐待防止医療ネットワーク委員

  2. 篠原 尚美(小児科医長)
    ①小児科一般/小児神経
    ②慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業/東海大学医学部医学科卒業
    ③日本小児科学会専門医・指導医

  3. 佐藤 公則(小児科医長)
    ①小児科一般/小児感染症/小児集中治療
    ②慶應義塾大学医学部卒業
    ③日本小児科学会専門医・指導医/集中治療専門医/小児感染症学会暫定指導医/ICD

  4. 和田 未来(小児科医長)
    ①小児科一般/アレルギー
    ②東京女子医科大学医学部卒業
    ③日本小児科学会専門医

  5. 田村 雅人(小児科医長)
    ①小児科一般/小児神経
    ②昭和大学医学部医学科卒業
    ③日本小児科学会専門医

  6. 多喜 萌(小児科医長)
    ①小児科一般/小児循環器
    ②日本大学医学部卒業
    ③日本小児科学会専門医

  7. 堤 健太郎(小児科医員)
    ①小児科一般
    ②佐賀大学医学部卒業
    ③日本小児科学会所属

  8. 鈴木 惟子(小児科医員)
    ①小児科一般/小児腎臓
    ②慶應義塾大学医学部卒業
    ③日本小児科学会/日本小児腎臓病学会/日本腎臓学会所属