歯科口腔外科
当科の特徴(概要)
一般に地域かかりつけ歯科医院では、虫歯や歯周病の治療、普通の抜歯やその後のブリッジ治療や義歯治療が行われています。それ以外の歯や口の病気にどんなものがあるでしょう。実は口腔(こうくう)粘膜の病気、歯が原因の顎アゴの骨の中に発生するふくろの病気、歯肉(はぐき)の腫瘍、上下の顎骨(アゴの骨)骨折など実に多彩な病気があります。それを治療する診療科が、「歯科口腔外科」です。当科での診断治療は、口腔外科専門医・指導医や認定医所持医が担当します。
当科は、日本口腔外科学会認定の「准研修施設」で、口腔外科疾患全般に対応する体制を整えています。2022年度の外来新患患者数は2,824件、入院患者数は325件、全身麻酔外科手術数は287件でした。開業歯科医院では困難な骨の中に埋まった親知らずなどの抜歯は毎日、外来手術枠で行っています。昨年は約1,500名の難しい抜歯などを外来で行いました。神奈川県内の総合病院歯科口腔外科では非常に多い手術件数を誇っています。口腔顎顔面専用CB-CTもあり、毎日多くの患者さんの顎骨内の病変を三次元的に検査・診断しています。
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当科の治療はくちの機能に関係した病気を治すことで、食べる、飲み込む、楽しく会話する、笑顔で笑うなどの口腔(こうくう)機能を回復する治療を行います。また、当院救急科と連携し、急性の歯が原因の感染症や口腔顎顔面の外傷治療も行います。一方、心臓疾患や脳機能障害などの患者さんの抜歯は抗血栓療法(血液サラサラ療法)が行われている場合が多く、抜歯後出血や元疾患の悪化など大きなリスクがあります。内科的基礎疾患を持つ、いわゆる有病患者さんの歯科外科治療を安全に行っており、日本有病者歯科医療学会認定の専門医が担当します。
当科は歯科医師臨床研修施設に認定されており、毎年1名の優秀な研修医が在籍しています。また、歯科衛生士学科の3年生の学生実習病院にもなっており、数週間実習に来科しています。臨床、教育と学会活動を精力的に行っています。
臨床研修歯科医募集について
治療対象疾患
歯性感染症
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悪い歯が原因で顔がひどく腫れて痛み、口も開かなく食事が摂れなくなる炎症(歯性蜂巣炎)。多くはむし歯や埋伏智歯が原因です。抗生物質の点滴や歯茎やあごの下の皮膚を切開して膿を出す場合があります。腫れがなおったら、抜歯です。
埋伏歯
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あごの骨の中に埋まった歯を言います。抜歯は歯肉切開と骨削除で埋まった歯を露出し、歯を分割して取り出します。一般に外来の局所麻酔で行いますが、埋まり方が深く、根が湾曲・肥大している場合は全身麻酔で行う場合もあります。
顎骨のう胞
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歯が原因ののう胞(ふくろ)の病気です。大きくなると鶏卵大にもなります。悪い歯があって長年放置すると時として根の先に袋ができることがあります。また、歯があごの骨の中に埋まった状態でいると、歯を含む大きな袋になることもあります。
顎骨骨髄炎
悪い歯や放射線治療後であごの骨髄が化膿して、歯茎や頬部の皮膚が破れて膿が出る顎骨骨髄炎があります。腐骨と呼ばれる膿が貯まる骨を摘出することになります。ひどい場合は、あごの骨を切り取る場合もあります。
口腔腫瘍(良性、悪性)
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くちの粘膜にでき物ができる腫瘍性病変があります。良性では、がんになる直前の病気として白板症が良く知られています。細胞や組織を少し取る検査で病理確定診断して治療方法を決定します。舌、歯茎の悪性腫瘍では、大きく切除をしたり、あごの骨を切り取って丈夫なチタニウム性プレートであごの連続性を維持する方法もあります。進んだ例では、大きく切除し、他の部分から組織を移植するチーム治療の場合もあります。
顎変形症
出っ歯や受け口などの上下のかみ合わせが悪い状態を言います。歯並びでなく、顎骨の前後、左右、上下の位置が悪いために歯が正常にかみ合わない状態です。そのために口唇が出たり、引っ込んだりした状態、左右的に不均衡で顔がゆがんだ状態を言います。上下の顎の骨をずらして正常なかみ合わせに回復する手術を行います。手術の前後に健康保険適応の歯列矯正治療を併用します。
顎変形症の治療について
顎顔面骨骨折
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路上で転倒したり、スポーツ、交通事故やけんかで殴られたりして口唇、歯、上下のあごの骨が折れたりします。それをなるべく早くかみ合わせを元に戻す整復固定手術が必要です。術後1週間程度で退院し、早期社会復帰して頂く治療を行います。
内科疾患を持つ患者さんの歯科外科治療
不整脈、脳血管障害、深部静脈血栓症などで抗血栓療法を行う循環器疾患、インシュリンでコントロールしている糖尿病、B・C型肝炎、ステロイド服薬の膠原病などの基礎的疾患を持つ患者さんの抜歯は術後出血、感染など時として非常に危険なこともあります。また、基礎的内科疾患が増悪しないよう点滴確保、モニター監視で安全歯科外科治療を行います。抜歯前に充分な検査を行って、術後出血がないように注意して行います。
歯科治療恐怖症
歯科治療がとても怖くて、診察台に座ると震えが来る患者さんがいます。当科では痛みや不安のないリラックスした状態の治療を行います(全身麻酔、鎮静法)。そして治療目的を達して患者さんの自信を回復していただく減感作治療です。
精神鎮静麻酔を用いた口腔外科処置について
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当科では抜歯に対しての恐怖や不安を解消するために、精神鎮静麻酔という方法で対応しています。外来通院では静脈内鎮静法と笑気鎮静法の2種類の精神鎮静麻酔を行っています。
詳しくは歯科口腔外科医師によるコラムにてご紹介しております。
コラム「「本当は抜歯が不安で怖い方」への安心・安全な方法
周術期口腔機能管理
がん治療に伴う口腔関連の弊害事象があります。口腔常在菌が術創部に感染し、傷が開いてしまう。術後の誤嚥で肺炎になる。がんに対する化学放射線療法で口腔粘膜炎が出る。以上の有害事象を少しでも低減する歯科的治療があります。がん治療前に口腔ケアを行って、悪い歯は抜歯しておく。術前後の口腔ケアの支援などです。また、高度な治療(臓器移植、心臓手術、脳神経外科手術など)を受けられる前後の歯科外科治療や口腔ケアも担当します。
その他
顎関節疾患(顎関節症、顎関節脱臼)、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、インプラント治療、舌痛症など口腔外科全般に幅広く対応いたします。
検査内容
口腔粘膜疾患の検査
一般に口腔歯肉粘膜はピンク色ですが、時に白くなったり、凹凸不正な腫瘤となったりする事があります。顎骨病変では、単純歯科用X線検査やパノラマX線検査を行います。詳しく診る場合は下記のCT検査となります。
MR検査
舌や頬粘膜の病巣範囲を調べます。
CT検査
顎骨内の病巣を診る際に行います。特に歯牙に関連する疾患では口腔専用のCT検査も行えます。
細胞診断検査
歯肉粘膜の病変部の表面細胞を診る検査です。Class 1~5まで分類されます。Class 4、5になると悪性が強く疑われます。
組織生検病理検査
局所麻酔で病変部を数mm切除して病理診断する検査です。腫瘍や潰瘍の鑑別診断をします。その結果から治療方針を立てます。
治療実績
外来診療実績
入院症例実績
学会活動
日本口腔外科学会、日本口腔科学会、日本有病者歯科医療学会
日本口腔顎顔面外傷学会、国際歯科医療安全機構、その他