薬剤科コラム

脳卒中治療に使われる主な薬剤とその働き

薬剤科

掲載日:2025/8/5

脳卒中とは

脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることによって、脳が障害を受ける疾患です。脳卒中を発症すると、脳が制御している身体機能や言語機能が失われることや、場合によっては死に至ることもあります。

  • 脳卒中のイメージ
  • 医療の進歩により、死に至る場合は少なくなりましたが、発症してしまうと日常生活におおきな影響を及ぼす可能性があります。脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、破れる「脳出血」や「くも膜下出血」があります。

    以下に各疾患の症状と使用する薬剤をご紹介します。

脳梗塞について

脳梗塞の症状

脳の血管の動脈硬化を来した部位に形成された血栓(血の塊)、あるいは心臓で出来た血栓により、脳血管が詰まったり、血流が十分に脳細胞に行き渡らなくなり、脳が壊死してしまう病気です。

血流が悪いまま数時間程度がたつと、脳細胞は死んでしまい、生き返ることはありません。脳の太い血管が閉塞してしまうと、広範囲に脳が障害を受けてしまい、運動麻痺や言語障害だけでなく、意識障害や寝たきりになってしまうことがあります。ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症などがあります。

脳梗塞で使用される薬剤

基本的には血が固まるのを抑える抗凝固薬や抗血小板薬を使用しますが、発症後すぐであれば、血栓を溶かす薬を使用することや手術を行うことができます。
抗凝固薬か抗血小板薬の選択は血栓の原因によって選択薬が異なります。

基本的には心臓でできた血栓が原因の際は抗凝固薬、それ以外の場合は抗血小板薬を使用します。

くも膜下出血について

くも膜下出血の症状

脳の血管にできた瘤(動脈瘤)が破れて出血した状態を 「くも膜下出血」といいます。突然の頭痛や意識障害などの症状が出現します。容易に再出血をおこして致命的になることがある病気です。「バットやハンマーで殴られたような」「これまでに経験したことのない」などの表現をされる程、「突然」の「激しい頭痛」症状を主訴とされることが多いです。

くも膜下出血で使用される薬剤

基本的には手術を行いますが、保存的治療となる場合もあります。血圧管理や抗けいれん薬・血栓予防薬等を使用し、再破裂・再出血を予防します。

脳出血について

脳出血の症状

脳出血とは、脳内にある細い動脈が、何らかの原因で破れることで脳内出血する病気です。脳内に出血した血液は、やがて血腫となり、さらに時間が進むと脳にむくみが生じます。この血腫とむくみがさらに脳を圧迫することで、吐き気や意識障害など様々な症状が出現するとともに、脳へのダメージが大きくなります。

脳出血で使用される薬剤

血圧を下げる降圧剤や脳のむくみをとる抗浮腫剤が用いられます。また、出血量や出血部位によって手術を行う場合もあります。

抗血小板・抗凝固薬の内服で注意すべきこと

抗血小板・抗凝固薬を内服すると、血が固まりにくくなるため、皮下出血ができやすくなったり、血が止まりにくくなります。そのため、転倒や怪我への注意が必要になります。血が止まらなかったり、血尿等の症状があれば病院への受診を検討ください。

ご存じですか?脳卒中の危険因子とは・・・

脳卒中の危険因子は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙、多量飲酒、運動不足などです。日々の生活のなかで、これらを予防・コントロールすることが発症・再発予防につながります。

普段から体調管理を行い、脳卒中を未然に防ぐようにしましょう。