ドクターコラム

脳動脈瘤に対する新しい治療法:フローダイバーター治療と瘤内フローディスラプター治療

脳血管内治療センター センター長  大石 英則

掲載日:2025年4月22日

脳動脈瘤とは?

脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)とは、脳の血管の一部が膨らんでしまう病気です。これが破裂すると、クモ膜下出血(くもまくかしゅっけつ)を引き起こし、命に関わることもあります。

現在の治療法として、以下のような方法があります。

  1. 開頭クリッピング術:開頭して血管の膨らんだ部分をクリップで挟み、血流を止める方法
  2. コイル塞栓術:血管を通じて細い管(カテーテル)を使い、プラチナ製のコイルを動脈瘤の中に詰めることで破裂を防ぐ方法

コイル塞栓術は体に負担が少ないため、広く行われていますが、動脈瘤の大きさや形によっては適応が難しい場合があります。そこで、より新しいカテーテル治療として「フローダイバーター」と「瘤内フローディスラプター」という治療法が登場しました。

フローダイバーター治療とは?

金属製のやわらかいメッシュ状の筒(ステント)を動脈に入れ、動脈瘤の中に流れ込む血液を減らし、最終的に閉塞させる治療法です。

治療の仕組み

  • フローダイバーター治療のイメージ
  • ① 細いカテーテルを使い、フローダイバーターを動脈瘤ができている血管(母血管)に留置します。
  • フローダイバーター治療のイメージ
  • ② フローダイバーターが動脈瘤の入り口(ネック)を覆うように設置されます。
  • フローダイバーター治療のイメージ
  • ③ 血流が弱まり、動脈瘤の中で血液が固まる(血栓化)ことで、破裂を防ぎます。
  • フローダイバーター治療のイメージ
  • ④ 時間とともに、血栓化した動脈瘤は小さくなり、最終的に消失することが期待されます。

メリット

  1. 動脈瘤ができた血管を補強できる。
  2. 大きい動脈瘤やネックが広い動脈瘤にも適用しやすい。
  3. コイル塞栓術と比べて再発率が低い。

デメリット

  1. 血栓ができるリスクがあるため、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)を一定期間服用する必要がある。
  2. 動脈瘤が完全に閉塞するまでに時間がかかることがある。
  3. 小さい動脈瘤や血管の分かれ目(分岐部)にある動脈瘤には適応しにくい。

瘤内フローディスラプター治療とは?

瘤内フローディスラプター治療とは、動脈瘤の中に直接やわらかい金属製のメッシュ状カプセルを入れ、血液の流れを抑えて動脈瘤を閉塞させる治療法です。

治療の仕組み

  • 瘤内フローディスラプター治療のイメージ
  • ① 瘤内フローディスラプターをカテーテルで動脈瘤内に挿入します。
  • 瘤内フローディスラプター治療のイメージ
  • ② 瘤内フローディスラプターが広がり、動脈瘤の中を埋め尽くします。
  • 瘤内フローディスラプター治療のイメージ
  • ③ 血流が減少し、動脈瘤の中で血液が固まる(血栓化)ことで、破裂のリスクを減らします。
  • 瘤内フローディスラプター治療のイメージ
  • ④ フローダイバーターとは異なり、動脈瘤の外側ではなく内側で血流を制御するのが特徴です。

メリット

  1. 抗血小板薬が不要、または短期間の服用で済む。
  2. 小さい動脈瘤や血管の分かれ目(分岐部)にできた動脈瘤にも適応できる。

デメリット

  1. 動脈瘤の大きさ、形や部位によっては適応できない場合がある。
  2. 血液の制御が十分でないと、動脈瘤が完全に閉塞しない可能性がある。

どちらの治療法が適しているのか?

動脈瘤の大きさ、形や部位によって、適した治療法が異なります。例えば、

  1. フローダイバーター → 大きい動脈瘤やネックが広い動脈瘤に適している。
  2. 瘤内フローディスラプター → 小さい動脈瘤や分岐部の動脈瘤に適している。

ただし、患者さんごとに最適な治療法は異なるため、詳しくは医師と相談しながら、ご自身に合った方法を選ぶことが大切です。

何かご不明な点があれば、遠慮なくご相談ください。

【引用元】
・Medtronic 社
・Terumo 社