ドクターコラム

日々のストレスにマインドフルネスはいかがですか

精神科(心療内科) 部長 戸部 有希子

掲載日:2023年3月13日

マインドフルネスとは

  • マインドフルネスとは
  • マインドフルネスとは、現在に目を向け、今この瞬間を生きることに焦点を合わせるワークであり、数ある瞑想法の一つです。マインドフルネスの考え方は、仏教にそのルーツがあり、東洋の精神文化や哲学にも根付いているものでありながら、近年、西洋で注目されたことをきっかけに、広く知られるようになってきました。

マインドフルネスは近年、ストレス解消やメンタルヘルスケアに効果的であると注目されており、多くの人が興味を持っているようです。本コラムでは、近年話題のマインドフルネスについて詳しく解説し、実践する上でのポイントについて紹介します。

マインドフルネスが持つ意味

まず、マインドフルネスが持つ意味について考えてみましょう。人間は、過去の出来事に想いを馳せたり、未だ来ぬ将来のことを想像したり、日常生活で行われるいつもの作業に没頭したりすることがあります。そのような状態では、今ここでまさに起きていることに注意を向けることができず、自分自身の感情や体の状態を十分に意識せずに日々を過ごしているかもしれません。一方、マインドフルネスを実践することは、今この瞬間に意識を向け、自分自身や周囲の状況に注意を払うことになります。こうすることで、過去や未来に囚われてしまって悩むことから解放され、現在の自分に向き合い、今の自分自身を受け入れることができるようになるのです。

マインドフルネスの実践方法

マインドフルネスの実践の仕方としては、瞑想を行うことが一般的です。まずは、椅子やソファーなどに座った状態で、目を閉じ、呼吸に集中します。呼吸を意識しながら、自分の意識が漂っているところに注意を向けます。思考が浮かんできても、その思考を観察することに専念します。そして、その思考を捨てて、また呼吸に集中します。これを繰り返し行うことによって、「現在」に集中し、自分自身と向き合っていくのです。

瞑想の時間は、最初は5分から始め、徐々に時間を延ばしていくと良いでしょう。特に、初めて瞑想をする場合など、十分に集中することが難しい場合は、瞑想アプリやYouTube上の動画を利用してみてもいいですね。

また、瞑想以外にも、日常生活でマインドフルネスを取り入れることができます。例えば、食事中に食べ物の味や香り、食感に集中することで、普通の食事がより味わい深くなります。また、歩くときに、足の動きや、外気に触れる肌、足の裏など、身体の感覚に集中し、自分自身に意識を向けることで、自分自身とのコミュニケーションを深めていくことができます。

マインドフルネスの効果

マインドフルネスの効果は、精神医学や心身医学の分野でも注目されています。うつ病や不安障害などのメンタルヘルス問題の治療においても、マインドフルネスは一つの選択肢として考えることがあります。例えば、うつ病の患者さんや不安障害の患者さんに対するマインドフルネス療法の研究では、うつ症状および不安症状の改善に効果があることが示されています。

さらに、慢性痛に苦しむ人々に対するマインドフルネス療法の研究でも、痛みの強さや不快度を軽減することができたことが報告されています。慢性的な痛みを抱えている人は、心身が緊張していることが多く、この緊張が痛みを増幅していることがあります。マインドフルネスを行うことで、身体の状態に注意を向け、意識的に身体の緊張をほぐし、痛みを和らげることができるのです。

さいごに

最後に、マインドフルネスを取り入れるにあたり、瞑想に慣れていない人や、精神的に不安定な人は少し注意しましょう。例えば、瞑想中に過去や未来のことに心が奪われ、落ち着かなくなくなってしまったり、また、過剰に集中しすぎると、疲れてしまったりするかもしれません。このような場合は、タイマーなどを用いて、1分程度の短い瞑想から、無理なく、行っていくと良いでしょう。

忙しい現代人の多忙な生活の、ストレスを和らげることにも役立つ、マインドフルネスを、日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。