ドクターコラム

「意外と侮れない高血圧」―自覚症状がなくても進むリスクとは

循環器内科 医長  秋元 耕

掲載日:2026年2月24日

日本人の約4人に1人が高血圧

数ある疾患の中でも、最も目にする頻度が高いものの一つが高血圧症でしょう。実際に、厚生労働省の調査による「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」によれば、収縮期血圧(いわゆる「上の血圧」)が140mmHg以上の方の割合は、男性で27.5%、女性で22.5%と報告されています。大まかにいえば、日本人の4人に1人以上は高血圧症である、ということです。

最新の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、診察室血圧が140/90以上の場合を高血圧と定義していますが、診察室血圧が130~139/80~89の場合を高値血圧、120~129/80未満の場合を正常高値血圧、と定義しています。すなわち、120/80以上の全ての方を血圧管理の対象と位置づけており、降圧目標は年齢や基礎疾患に関わらず、「130/80未満が原則」とされています。なお、上記の値は全て診察室血圧であり、家庭血圧の値はさらに収縮期、拡張期血圧とも、5ずつ低い値が定義となります。

  • 血圧測定イメージ
  • 人によっては、目標が厳しいと感じることもあるかもしれませんが、ここまで厳密に設定されているのには理由があります。高血圧が脳卒中、心筋梗塞、腎臓病など多臓器の障害を引き起こすことは広く知られていますが、140/90未満の正常高値血圧、高値血圧であっても、血圧上昇とともに脳卒中や心筋梗塞のリスクが上昇していくのです。

具体的には、収縮期血圧140未満でコントロールされていた患者群と比べて、120未満でコントロールされていた患者群は、心イベント、脳卒中、死亡が約3.3年の経過で25%も低下した、との報告があります。((J T Wright Jr, et al. N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2103-16.)ガイドラインはこれら多くの研究結果に基づいて作成されています。)

実際に血圧を下げるにあたっては、薬物治療の重要性は言うまでもありませんが、それとともに、非薬物治療も極めて重要です。例えば、以下のようなものがあります。

非薬物治療で血圧を下げるいくつかの方法

① 食事療法

カロリー制限に加え、特に塩分制限が重要です。基本的には食塩量で6g/日以下が目標とされます。
(高血圧管理・治療ガイドライン2025)

② 適度な運動

軽度~中等度の有酸素運動を週75分、可能なら週150分行うことが推奨されます。軽く息が弾む程度の有酸素運動と考えてください。
(L Garcia, et al. Br J Sports Med. 2023 Aug;57(15):979-989.)

③ 肥満の方は減量

BMI<25を目標に減量しましょう。いきなりの減量が難しければ、まずは「現在の体重から4%減量」でも効果があるとされます。
(厚生労働科学研究:津下班 平成23年度報告書)

④ 節酒、禁煙

お酒を飲まれる方は、飲酒量を減らすのも効果的です。適正量はビールなら350ml/日以下、日本酒なら100ml/日以下が目標です。たばこを吸っている方は禁煙により血圧が下がることも報告されています。
(M Roerecke, et al. Lancet Public Health. 2017 Feb;2(2):e108-e120. ) (P V Gaya, et al. Tob Induc Dis. 2024 May 16:22. )

非薬物治療の次に考える薬物治療

上記のような、非薬物治療を行ったうえで、まだ血圧が高いようであれば薬物治療の出番です。カルシウム拮抗薬(きっこうやく)、アンギオテンシン変換酵素阻害薬/受容体拮抗薬、降圧利尿薬、など多くの種類がありますが、心機能、腎機能など含めた患者背景にあわせ、どの薬剤を使用するかは人によって異なります。近年は新しい薬剤も開発されており、薬物治療はかかりつけ医の指示にしたがって進めてください。

血圧は定期的に測定・記録することが大切です

いずれの場合においても、特に重要なことは、高血圧を「よくあること」と無視をせず、自宅血圧を測定・記録することです。健康診断を1年に1回以上受け、血圧が高いと指摘されたら、自宅血圧を測定・記録するようにしましょう。特に指摘がない場合でも、40歳以上の方は定期的に血圧測定を行うよう心掛けることが望ましいです。

見逃されやすい“隠れ高血圧”とは

自宅血圧を測定すると、病院で測ると血圧が高いのに、自宅では高くない場合があります。そのような状態を「白衣高血圧」と言い、薬物治療の対象とはなりませんが、白衣高血圧の患者さんは、時間経過とともに通常の高血圧に移行することが多く、脳心血管リスクが高くなることが分かっています。

また、逆に自宅では血圧が高いのに、病院で測ると低い場合もあります。これを「仮面高血圧」と言います。仮面高血圧の患者さんは、健診などでは一見正常に見えるため発見が遅れやすい一方で、脳心血管リスクは通常の持続性高血圧と変わらないことが分かっています。
(T. Ohkubo et al. J Am Coll Cardiol. 2005 Aug 2;46(3):508-15. doi: 10.1016/j.jacc.2005.03.070.)

まとめ

これらの病態を見逃さず、脳梗塞や心筋梗塞を予防して元気に過ごすため、まずは健診結果の確認と、自宅血圧の測定を心がけましょう。当院は循環器専門医も多数在籍しており、患者さんにあわせた治療をご提案します。気になるようならいつでもご相談ください。

【参考文献】
厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」
日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
(J T Wright Jr, et al. N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2103-16.)
高血圧管理・治療ガイドライン2025 (L Garcia, et al. Br J Sports Med. 2023 Aug;57(15):979-989.)
厚生労働科学研究:津下班 平成23年度報告書
(M Roerecke, et al. Lancet Public Health. 2017 Feb;2(2):e108-e120.)
(P V Gaya, et al. Tob Induc Dis. 2024 May 16:22.)
(T. Ohkubo et al. J Am Coll Cardiol. 2005 Aug 2;46(3):508-15. doi: 10.1016/j.jacc.2005.03.070.)