ドクターコラム

急増するナッツアレルギーに注意

小児科 医長  和田 未来

掲載日:2025年11月15日

ナッツアレルギーの特徴

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  • 食物アレルギーとは、無害なはずの食べ物に反応して、蕁麻疹や咳、嘔吐などを引き起こし、日常生活に大きな支障をきたす疾患です。以前は、鶏卵、牛乳、小麦が主要なアレルゲンとして知られていましたが、近年、ナッツ(木の実)アレルギーが増加しており、現在小麦を抜いて食物アレルギーの原因食物第3位となっています。ナッツの内訳としては、くるみ、カシューナッツ、マカダミアナッツ、アーモンド、ピスタチオ、ペカンナッツ、ヘーゼルナッツの順に多くなっています。

ナッツアレルギーの特徴は、少量の摂取でも強い反応が出ることがある点です。口の中のかゆみや唇の腫れといった軽い症状だけでなく、蕁麻疹、咳、呼吸困難、血圧低下など全身のアナフィラキシーを起こすこともあります。特にくるみではアナフィラキシーが多いと報告されています。ナッツはお菓子やパン、加工食品に広く使われており、知らないうちに口にする機会も多くなっているため注意が必要です。

ナッツアレルギーで気をつけなければならないこと

現在食物アレルギーの根本治療はなく、治療の基本は「原因食物を避けること」です。ナッツは、ひとくくりにして除去をする必要はなく、それぞれのナッツについて症状の有無を確認する必要があります。ただし、カシューナッツとピスタチオ、クルミとペカンナッツの間には強い交差抗原性があるため、どちらかにアレルギーがあれば、両者を除去する必要があります。

ナッツアレルギーで特に困るのは、加工食品にナッツが“隠れて”使われていることです。カレー、ドレッシング、チョコレート、クッキー、パン、シリアル、アイスクリーム、さらにはアジア料理やエスニック料理にも使用されることがあります。

外食時や旅行先では原材料の確認が難しく、大きな不安要素となります。ナッツのうち、食品表示法により表示が義務付けられている特定原材料は、くるみのみです。アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツは特定原材料に準じるものとされているものの、表示は任意(推奨)となっています。すべてのナッツが対象ではないため注意が必要です。

また鶏卵、乳、小麦アレルギーは60-80%が耐性を獲得する(食べられるようになる)という報告がある一方で、ナッツアレルギーの自然寛解は10%程度と報告されており、治りにくいアレルギーです。最近では「症状がでない安全な範囲で食べて治す」経口免疫療法の研究も進んでいますが、標準治療として確立されていないため、専門施設で安全管理のもとに行われる必要があります。

さいごに

当院でも、食物アレルギーの診療や生活指導、学校生活への対応についてご相談を受けています。不安や疑問があれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。ナッツアレルギーを持つ方やご家族が、安心して生活できるようにサポートしていきたいと考えています。

【参考文献】
食物アレルギーガイドライン2021
令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書(消費者庁)