ドクターコラム

不正出血から考えられる病気

産婦人科 医長 浅井 哲

掲載日:2021年6月10日

不正出血という症状

  • 不正出血という症状
  • 不正出血は、我々産婦人科医にとって、もっとも一般的な患者さんからの訴えであり、故にあらゆる産婦人科の病気を診断するにあたって糸口になる症状です。

    「月経以外に生じる性器出血」が、当たり前ですが大切な定義です。一度や二度の症状を気にする必要はありませんが、気になった際にはご自身の症状に注意を払っていただいた上でご相談ください。

では、不正出血があった場合に、何を考えるのか?様々な分類がありますが、実際の現場では「妊娠か否か」「悪性腫瘍か否か」が最も大切だと考えます。妊娠については、もしそうであれば、その後の診療が全く変わるからです。また、当然ですが、悪性腫瘍であれば生命に直結する問題です。まず初めに患者さんのお話を伺い、必要に応じて検査を始めます。これらを検査したうえで異常がなければ、良性腫瘍、感染等による炎症、ホルモンバランスの乱れを考慮します。

見逃してはいけない病気の診断方法

妊娠であれば出血が伴うことは流産、子宮外妊娠等の正常妊娠ではない可能性を探ります。また、悪性腫瘍については子宮頸癌、必要に応じて子宮体癌の検査を行います。ここまでが見逃してはいけない病気の診断方法です。そのうえで、「形に現れる病気」を超音波で検査します。

ここで見つけられる可能性がある病気はポリープや子宮筋腫などです。またそうでない場合は細菌や腟萎縮に伴う炎症による出血を考慮します。卵巣にできる病気で不正出血を認めることは少ないですが、超音波で同時に検査します。

患者さんに伝えたいこと

このように見逃してはいけない病気から順番に探っていきますが、患者さんに伝えたいことは、

  1. 「月経以外の出血を自覚したら、時間を追って注意する。複数回持続することがあれば、ぜひ産婦人科に相談してほしい。」
  2. 「完全な検査はないため、病気が指摘されなかった場合も、その後に症状があれば再度相談してほしい。」
ということです。

決して「不正出血=悪性腫瘍」ではありませんが、可能性を考えること、そして時間経過が診断を明らかにする「後医は名医」という言葉が我々の世界にはあることを頭の隅に記憶してくだされば幸いです。