ドクターコラム

小腸内細菌増殖症 SIBO(シーボ)について

消化器内科 科長/予防医学センター 消化器内科部門 部長 袴田 拓

掲載日:2021年04月01日(更新2022/04/02)

【当院にシーボに関する受診をご検討の方へ】
現在診察が大変混み合っております、ご了承ください。
また当院ではSIBO(シーボ)を確定診断する呼気検査等の専門的検査は実施しておりません。健康保険適応の範囲内で可能な対応しかできませんので、あらかじめご了承下さい。

小腸内細菌増殖症(SIBO)とは

便を作る大腸には極めて多数の腸内細菌が存在し、健康に大きな影響を及ぼしていることが知られるようになりましたが、栄養を吸収する場の小腸内にはあまり多くの細菌は存在しません。

しかし様々な要因から小腸内細菌が急激に増殖し、豊富な栄養を分解して多量のガスを産生してしまうケースがあります。これを小腸内細菌増殖症(SIBO)(シーボ)といいます。
小腸は普段液体で満たされ、ガスは少なく細い状態で腹腔内に収納されていますが、発生した多量のガス(メタンや水素ガス)により著しく拡張した時には妊婦のようにお腹が膨らみ、苦しくて車のシートベルトも出来ないと訴える場合もあるほどです。

日本ではまだ一般化されていない疾患

  • 小腸内細菌増殖症
  • 我が国において上下部内視鏡、腹部エコー、腹部CTなどで検査しても原因不明の腹痛、便秘、下痢、腹満感を訴える人の中に、かなりの割合でSIBO(Small Intestinal Bacterial Overgrowth)患者が存在することがわかってきました。

ストレスが原因で発症する過敏性腸症候群(IBS)と考えられていたケースの中にも、このSIBOが数多く含まれていることも判明しつつあります。

世界的には研究が進んでいますが、日本においてはまだ十分に一般化されていない疾患概念ですので、消化器病専門医の間でさえ気づかれていないケースも少なからずあります。

小腸内細菌増殖症の発症要因

発症要因は、本来小腸内への雑菌侵入を防いでいる胃酸の減少(摂食不良や鉄欠乏によるエネルギー不足、ピロリ菌感染、胃酸抑制薬の乱用)、膵液・胆汁の減少(胆のう摘出、慢性膵炎、ストレス)、さらには腸管運動低下による腸内クリーニング機能の低下(糖尿病、低血糖による過緊張)、大腸との境界となる回盲弁の機能低下などです。

小腸粘膜は多くの場合炎症を伴い傷んでいるため腹痛、便秘、下痢、腹満感のほかにも栄養の消化吸収不良からくる様々な全身症状や、別の疾患を合併するケースが多いようです。例えば、ブレインフォグ(頭がボーッとする症状)や不妊、うつ、NASH(非アルコール性脂肪肝疾患)、線維筋痛症との関連が注目されています。

小腸内細菌増殖症の治療

治療としては、小腸内の雑菌を増殖させないよう次の食材①単糖類・二糖類②オリゴ糖③発酵食品④ポリオール(糖アルコール)を3週間ほど控えます(低FODMAP食)。②③は一般にお腹にいい食材と考えられていますが、かえって症状悪化を招く場合もあるのです。そして症状が安定したら項目ごとに再開し、食べられるものの幅を広げていきます。

もし再発する場合はリファキシミンなどの非吸収性抗生物質を投与し、積極的に除菌を試みる場合もあります。しかしカンジダ(カビ)が増殖している場合には抗真菌薬を用いてもなお治療抵抗性を示し、手強い存在となる場合があります。いずれにしても発症要因となっている個別の背景因子(低胃酸、ストレスなど)の解決を図りながら根治を目指します。

【文献】
  1. Emma P Halmos et al. 「A diet low in FODMAPs reduces symptoms of irritable bowel syndrome」Gastroenterology. 2014 Jan;146(1):67-75
  2. 「腸内細菌の逆襲~お腹のガスが健康寿命を決める~」江田証、幻冬舎新書、2020年
  3. 分子栄養学実践講座・資料「根本原因に対する治療のステップ・腸内環境とデトックス」宮澤賢史、2020年