ドクターコラム

貧血について

血液内科

掲載日:2017年12月

貧血とはどういう症状でしょう?長時間立っていたらふらついた、動いた時にめまいがする、などでしょうか。 今回のテーマは貧血です。

1 貧血とは?

  • 貧血とは
  • 血液中の赤血球が減少することです。

    ヒトは骨の中心=骨髄で幹細胞という白血球・赤血球・血小板の源となる細胞をつくっています。幹細胞は白血球・赤血球・血小板へ分化し、血管内へ流れます。

赤血球は、酸素を各臓器に運搬する役割があります。そのため、赤血球が減少すると、酸素の巡りが悪化し、酸素欠乏のような症状を起こします

2 貧血の原因は?

赤血球の産生~成長の段階別に貧血の原因を考えます。

  • 骨髄に疾患がある場合、赤血球ができなかったり、機能しない赤血球がつくられたりします。
  • 赤血球が作られる際、材料不足(鉄やビタミンなど)で赤血球がつくられないことがあります。
  • 赤血球がつくられていても、出血(血管の破綻)により喪失します。
  • 免疫疾患で赤血球が溶けることがあります。

3 貧血の診断

貧血の診断は、血液検査で行います。残念ながら、患者さんご自身の「貧血」という症状は注意が必要です。冒頭に述べた各症状は、真の貧血ではないことも多いからです。また、無症状でも、検診で貧血を指摘されたり、他の疾患や症状で受診時に、偶発的に発覚する場合もあります。

では、貧血と診断されたら、どうすればよいでしょう。

貧血の所見で、直ちに血液内科の受診が必要ということはありません。 前述のとおり、貧血にはさまざまな原因があり、血液検査によって、どのパターンの貧血かは、おおよそ見当がつきます。

貧血の最も多い原因は、材料不足の代表である鉄欠乏性貧血です。 若年女性であれば、婦人科疾患の合併もありますし、全年齢層で、消化管出血の有無は考えなければなりません。また、食事が極端な偏食であったり、食事がとれない場合、消耗が強い場合など、血清鉄が低下する原因検索が必要になります。

同じ材料不足であっても、ビタミンB12 欠乏性貧血は、主に胃摘出術が原因とされますが、手術歴がなくても、生じることがあります。高齢で胃壁の老化現象(萎縮性胃炎など)があると、食物からのビタミンB12 の吸収が低下することがあります。

出血など、明らかに貧血の原因がある場合は、出血自体を処理しなければ意味を成しません。そのため出血源の検索が必要です。

これらの病態はクリニックや一般内科で対応可能なタイプの貧血です。

一方、骨髄に疾患がある場合は血液内科で検査・治療が必要になります。

4 市販の造血剤について

  • 市販の造血剤について
  • 現在、各種「造血剤」が市販されています。これらは、主に鉄剤を主としたものであり、時にビタミンB12 や鉄吸収補助のためのビタミンCを合わせたものが大多数です。 つまり、患者さんの貧血が、鉄欠乏であるならば貧血を改善してくれるかもしれません。

しかし、貧血の原因が、骨髄疾患や活動性出血・溶血など、材料不足でない場合は無効です。