リハビリテーション科コラム

身体に力が入っていませんか?~防御性収縮とリラクセーションの話~

リハビリテーション科 理学療法士 河田 円

2022/5/28掲載

  • 身体に力が入っていませんか?~防御性収縮とリラクセーションの話~
  • 肩・首周りの筋肉が硬くて肩が凝る」、「なんだか全身が固くなっている感覚があって、腰や背中が痛い」という症状をお持ちの方はいませんか?コロナ渦が続き、外出や親しい人と話したり気晴らしをしたりする機会も減り、ストレスがたまり、なんだか体までこわばって感じることはないでしょうか?ここでは、「防御性収縮とリラクセーション」という観点から、お困りの身体の症状に対する解決方法をみつけるお話をしたいと思います。

筋肉の状態について

筋肉は通常、使っているときには収縮して緊張状態にあり、使っていない時には緩んでいる弛緩(しかん)状態にあります。ところが、知らず知らずのうちに、身体に力が入った状態の緊張状態が続くと、弛緩状態が得られにくくなってしまい、筋肉のいわゆる「コリ」に繋がっていってしまいます。

防御性収縮とは?

リハビリで関節を動かしたりストレッチをしたりする際に、筋肉の緊張がなかなか得られにくい状態になっていると感じることがあります。これを防御性収縮といって、無意識に力が抜けにくくなってしまう状態のことを指します。例えば、股関節や膝関節の手術後、手術を受けた周囲の関節や筋肉を動かそうとすると、防御性収縮が起こることがあり、これは痛みを避けようとして「痛くならないように筋肉を固くさせて動かないようにする」という無意識の体の反応が起きてしまうことを指します。

力の入っていない筋肉は滑らかに動いてしまうので、筋肉を固く収縮させて、関節が動かないようにしてしまうのです。また、この時、自分の意志ではなくリハビリの担当者に「動かされてしまう」という恐怖心も相まって、筋肉をこわばらせてしまうという機序も働きます。無意識に感じる「体の危機的な状況」を避ける身体の反応として防御性収縮が起きてしまうわけです。

防御性収縮に対するリハビリでの対処方法

このような防御性収縮が起きた時、リラックスした身体の状態を作り、筋肉の緊張を緩和することが必要となります。そのため、私たちリハビリ担当者は気を逸らせるためや呼吸が止まらないように違う話題の話をしながら筋肉を緩めるマッサージを続けたり、筋肉のこわばりがとれるような姿勢に修正・誘導したりします。

リラクセーションとは?

先程述べたリハビリ場面での防御性収縮に対する対処法は、リラクセーションという一つの手技として扱います。

リラクセーションとは、「広辞苑」によると、「心身の緊張をときほぐすこと、リラックスすること」とされています。医学的には「ストレス反応として交感神経が興奮するのに対し、副交感神経の働きを優位にすること」と捉えることが多く、そのような状態をもたらす方法を指します。(「交感神経」=活動しているときに働く神経、「副交感神経」=休んでいるときに働く神経と考えていただくと良いと思います。)リラクセーションの種類として、マッサージやストレッチ、楽な体位、呼吸介助法などの指導等があります。

生活場面での対処方法について考える

こうした防御性収縮の機序と全く同じではありませんが、日々の生活の中でストレスからくる身体の筋肉の緊張状態は、無意識な体の防御反応からくるものと考えられることも出来ます。精神的な負担と身体の反応は切り離して考えることは出来ません。

リラクセーションの一つとして、緊張状態の筋肉に対して①振動刺激(筋肉を揺さぶる)を加えることや、②深い呼吸を促すことによって筋肉の緊張状態を緩和する方法を用いたりしますが、これを日々のセルフケアとして取り入れることを提案したいと思います。

①振動刺激(筋肉を揺さぶる)を加える

硬くなってしまっている筋肉が力を抜きやすい身体の位置を探して、身体の力を抜き、ぶらぶらとその箇所を揺らしてみてください。

②深い呼吸を促す

腹式呼吸がおすすめで、こちらについてはリハビリテーション科コラム:2020年11月掲載の「皆さん、呼吸使えていますか?」の腹式呼吸の方法を参考にしていただければと思います。

*首・肩の後ろの筋肉や腰の筋肉は体を後ろへ反らせる作用があります。
→力を抜く姿勢は前傾姿勢

  • トレーニング動画はこちらから
  • 方法

    椅子に座り、前かがみになり、腕や肩・首の力を抜いてだらりとします。その姿勢のまま、ぶらぶらと頭や肩まわり、腕をゆすってみましょう!

    ※机の上にクッションを置き、そこに顔をうずくませる姿勢も良いです。布団や毛布等の厚みのある物を抱きかかえるようにリラックスしても良いでしょう。