リハビリテーション科コラム

湯船につかるメリットをご存じですか?~入浴を健康づくりに活かそう~

リハビリテーション科 理学療法士 橋詰 誠也

公開日:2026-10-15

朝晩の冷え込みが増してきた10月。暑い時期は「シャワーだけで済ませていた」という方も、そろそろ湯船が恋しくなってきたのではないでしょうか。

もちろん、汗を流して身体を清潔に保つことだけを考えればシャワーでも十分です。しかし、浴槽につかって身体を温めることには、シャワーとは異なるメリットがあります。

① 血流・循環への良い影響

温かいお湯につかると皮膚の血管が拡張し、末梢の血流が増加します。

  • 湯船につかっているイメージ
  • 日本の中高年873名を対象とした研究では、週5回以上温浴する習慣がある人では、動脈硬化の指標であるbaPWVや中心血圧などが良好であることが報告されています。ただし、これは観察研究であり、「入浴すれば心血管疾患を予防できる」と直接証明したものではありません。

② 痛みや身体のこわばりを和らげる可能性

温熱はリハビリテーションでも、疼痛や筋・関節のこわばりに対して利用されることがあります。

2026年に発表された水中浸漬療法に関するシステマティックレビュー・メタ解析では、水中浸漬によって疼痛が有意に軽減しており、特に37~40℃程度の温水で良好な結果が報告されています。

膝関節症などの筋骨格系疾患や慢性疼痛のある方では、温浴が痛みを和らげ、その後の身体活動を行いやすくする一つの方法になる可能性があります。

ただし、家庭での一般的な入浴と治療目的の水中療法は完全に同じものではないため、「お風呂に入れば痛みが治る」という意味ではありません。

気温が下がるこの時期は、身体がこわばりやすくなります。温浴を上手に取り入れてみましょう。

③ 睡眠を整えるきっかけになる

入浴のメリットとして比較的エビデンスがしっかりしているのが、睡眠への影響です。

2019年のシステマティックレビュー・メタ解析では、就寝前の温浴によって睡眠の質や睡眠効率が改善し、特に就寝1~2時間前に10分以上温まることで、入眠までの時間が短くなることが示されました。

入浴で一度身体が温まった後、手足から熱を放散して深部体温が下がっていくことが、自然な眠りにつながると考えられています。

夏の疲れが出やすい秋は、睡眠のリズムも乱れがちです。寝る直前ではなく、就寝の1〜2時間前に入浴して時間を空けることは、睡眠環境を整える方法の一つになります。

④ リハビリの視点では「入浴そのもの」が大切な生活動作

私たちリハビリ職から見ると、入浴は単に身体を温めるだけの行為ではありません。

入浴には、

  • 浴室まで安全に移動する力
  • 衣服の着脱をする力
  • 浴槽をまたぐ力
  • 立ったり座ったりする力
  • 身体を洗う力

など、さまざまな能力が必要です。

秋の入浴で注意したいこと

一方で、入浴時は血圧の変動に注意が必要です。温かい浴槽につかると血管が拡張して血圧が下がり、寒い脱衣所や浴室との温度差では血圧が急に上下します(ヒートショック)。特に高齢者、降圧薬を服用している方、起立性低血圧のある方は注意が必要です。

2026年の日本老年医学会・日本高血圧学会による、要介護高齢者の降圧療法に関する提言では、入浴時は湯温41℃以下、入浴時間は10分程度までとし、入浴前後の水分摂取や、浴槽からゆっくり立ち上がることなどが推奨されています。
(対象は主に要介護の高齢者ですが、血圧が変動しやすい方は参考にしてください。)

脱衣所や浴室をあらかじめ暖めておくことも有効です。無理に熱いお湯につかったり、長時間入浴したりする必要はありません。

まとめ

浴槽につかって身体を温めることには、

  • 血流・循環への良い影響
  • 疼痛や身体のこわばりを和らげる可能性
  • 睡眠を整える効果

などが期待できます。

ただし、「毎日必ず湯船につからなければならない」という医学的根拠があるわけではありません。体調や持病に合わせながら、無理のない範囲で湯船を生活に取り入れることが大切です。

涼しくなるこれからの季節、ゆっくり湯船につかって身体を整える時間を作ってみてはいかがでしょうか。

【参考文献】
Haghayegh S, Khoshnevis S, Smolensky MH, Diller KR, Castriotta RJ. 就寝前の温かいシャワーまたは入浴による受動的身体加温が睡眠に及ぼす効果:システマティックレビューおよびメタ解析. Sleep Med Rev. 2019;46:124-135. doi:10.1016/j.smrv.2019.04.008.
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