頭部外傷について|対象疾患|脳神経外科

頭部外傷とは

何らかの外力が加わって頭部の軟部組織(皮膚、皮下組織)、頭蓋骨、頭蓋内(脳、髄膜など)に 損傷が起こることを「頭部外傷」と言います。軽いたんこぶで済むものから、頭蓋内に命に係わる大出血を来すものまで、加わった外力の程度 により、病態や予後は大きく変わります。

通常は、加わった外力が大きければ大きいほど、損傷の程度も大きくなりますが、「軽い打撲」と思い込み、頭部外傷直後は「見た目には何も障害がないように」見えても、実は脳損傷を負っている場合や、時間が経って重大な脳損傷を来すことがあります。
「頭部外傷は侮ることなかれ」です。

頭部外傷は侮ることなかれ

頭部外傷の変遷

経済(バブル崩壊やコロナ危機)、情報処理端末(スマートフォンの登場)、個人間のコミュニケーション(ソーシャルネットワーキングサービスの登場)が、この10年で大きく変わったのと同様に、頭部外傷は大きく変化しました。厚生労働省の統計では、かつて外因死亡原因の第1位であった交通外傷は第5位まで減少し、代わって転倒転落が外因死亡の第2位となっています。また、日本頭部外傷データバンクの統計では、高齢者の割合が約20%も増え、現在では頭部外傷の約半数 が高齢者になっています。つまり、この10年で頭部外傷は、
  1. 若年から高齢へ
  2. 交通外傷から転倒・転落へ
  3. 重症から軽中等症へ
と変化しています。また、脳震盪後に生じる様々症状の理解や、スポーツ頭部外傷への高い関心などもあり、頭部外傷治療のゴールも大きく変化しています。
交通外傷から転倒・転落へ

当院での頭部外傷の対応

当院では「脳神経救急外傷センター」を立ち上げ、24時間365日、いつでも頭部外傷に対応できる体制となっています。
子供から高齢者まで、軽症から重症まで、いつでも診察、診断、治療をいたします。
脳神経救急外傷センターのホームページも併せてご覧ください。

子供の頭部打撲

子供の鈍的頭部外傷(頭部打撲)の多くは、脳損傷や後遺症を残すことはほとんどありません。
しかし、外傷直後に神経症状(意識障害、麻痺、感覚障害など)がなかったとしても、3~10%の子に、CTで出血などの頭蓋内外傷性変化が認められることが知られています。約1%には濃厚な入院管理や時に外科的な治療、あるいは持続的な神経機能評価が必要になると言われています。

だからと言って、頭を打ったお子さん全てにCT検査をするわけにはいきません。CT検査は被曝をしてしまうからです。何度もCT検査をすると癌や白血病になる可能性が増えてしまいます。

残念なことに、日本ではまだ外傷後どのような子にCT検査をすべきか決まったルールがありません。
我々の施設では、海外のルールを参考にし、患児を診察して検査をすべきか判断しています。

高齢者の頭部打撲

日本頭部外傷データバンクの結果から、高齢者の頭部外傷は増えています。その多くは、転倒・転落による頭部打撲が原因です。転倒・転落は、現在日本での外因死亡原因の第2位となっており、転倒・転落による頭部外傷が外因性死亡の増加に関連していると考えられます。

年を重ねるとどうしても足腰が弱り、転倒しやすくなります。転倒した際にとっさに受け身が取れず強く頭部を打撲する可能性が、若年者より高いと思われます。

高齢者で最も問題なのは、抗血栓治療薬(血をサラサラにするお薬)を飲んでいる患者さんが、頭部を打撲することです。直後は問題なくても、時間が経って意識がなくなることがあるのです。これは頭を打ったことで頭蓋内に出血が起こり、抗血栓治療薬(血をサラサラにするお薬)を飲んでいるため血が止まらず出血が続き、脳を壊してしまうことで起こります。現在、日本では10~20人に1人が抗血栓治療薬を内服していると言われています。このような患者さんは、転びやすく、出血しやすいことも知られています。

抗血栓治療薬を内服している患者さんは、頭を打った時には専門の機関でご相談することをお勧めします。当院では24時間365日診療、診断、治療が可能です。

このように、頭を打った後に徐々に意識が悪くなる病態を「トーク アンド デターリオレイト」と呼びます。当院 脳神経救急外傷センター長の鈴木倫保 医師が中心となって、このような患者さんの啓蒙活動を行っています。

  • 【Think Fast campaign】
    抗血栓治療薬内服者の頭部外傷の危険性の理解、医療関係者への啓発活動を実施しています。
    ホームページもご参照ください。

頭部外傷の各々の病態

頭部外傷は、何らかの外力が加わって起こります。
外力の程度により、頭部の損傷の程度は変わってきます。
大きな外力が加われば、軟部組織だけでなく、頭蓋骨や頭蓋内にも損傷を来してしまいます。また、頭部に加速による力や回転する力が加わると、軟部組織や頭蓋骨の損傷がなくても頭蓋内に損傷を来すことがあります。

軟部組織の損傷や、変形の大きな陥没骨折では外見上の診察で診断が可能ですが、その他の頭蓋骨 あるいは頭蓋内病変は画像検査が必要になります。

【頭蓋骨の損傷(頭蓋骨骨折)】

① 線状骨折

頭蓋骨が線状に折れたものを線状骨折と言います。線状骨折は治療が必要ありません。
また、頭蓋骨の骨の継ぎ目が開く「縫合離開」も、治療の必要はありません。

② 陥没骨折

頭蓋骨が骨折し、陥没したものを言います。脳を圧迫したり、美容上問題がある場合は手術をします。

【頭蓋内の損傷】

直接的な強い外力や加速による力や回転する力が加わると、頭蓋内出血を来します。頭蓋内とは頭蓋骨より内側にある部分で、頭蓋骨と脳の間には硬膜、くも膜、軟膜の3枚の膜があり、これらの膜の間、あるいは脳の中に出血を起こすことが頭蓋内出血です。頭蓋骨と硬膜の間に出血するものを「硬膜外血腫」、硬膜とくも膜の間に出血するものを「硬膜下血腫」、くも膜と軟膜の間(くも膜下腔)に出血するものをくも膜下出血、脳の中に出血するものを「脳内出血」と言います。脳内出血は通常、脳挫傷と呼ばれる脳の打撃による損傷を伴っています。これらの病態は単独で存在することもありますが、それぞれの出血が混在していることがよく見られます。

① 硬膜外血腫

頭蓋骨と硬膜の間に起こす出血を言います。多くは頭を打った直下に骨折と伴に見られます。硬膜を栄養する動脈や硬膜内を灌流する太い静脈が損傷して出血を起こします。受傷直後に意識消失し、意識が元に戻っても出血の拡大により再度意識障害が起こる可能性があります。特に、10歳以下の子供は後頭部の打撲により、硬膜外血腫が起こることが多い(後頭蓋窩硬膜外血腫)と言われており、注意が必要です。

硬膜外血腫

② 硬膜下血腫

硬膜とくも膜の間に出血を来します。脳表の動脈や静脈が損傷することで、出血を起こします。硬膜外血腫と違って、直撃損傷だけでなく、加速による力が加わったことで起こる対側損傷や回転する力が加わることで起こる脳の損傷(脳葉破裂)によっても起こります。硬膜外血腫よりもより重症で、予後が悪いことが知られています。

硬膜下血腫

③ (外傷性)くも膜下出血

くも膜の下、くも膜下腔に出血を起こします。単独で生じるよりも、脳挫傷やびまん性の脳損傷に伴って起こることが多いです。くも膜下出血とは病気ではなく、病態を示す言葉で、あくまでも出血した場所を示しているにすぎません。テレビや新聞でよく聞く「くも膜下出血」と同じ場所に出血していますが、その原因が違います。「くも膜下出血」の多くは動脈瘤の破裂により起こりますが、外傷でも生じます。

(外傷性)くも膜下出血

④ 脳内出血(脳挫傷)

脳内出血の多くは脳挫傷に伴って起こります。時には直接的な血管損傷や外傷性動脈瘤破裂なども原因になります。脳挫傷と脳出血は厳密には異なりますが、脳挫傷内には大小何らかの血管障害を含んでいます。出血は時間とともに拡大することもあり、特に抗血栓治療薬(血をサラサラにする薬)や血液凝固異常(肝臓の悪い人、お酒飲み、先天性疾患など)がある方は、注意が必要です。

脳内出血(脳挫傷)

【頭部外傷の治療】

頭部外傷の多くは、先の病態が種々混在しています。外傷の治療は一般的に、「外傷の機序(どのように頭をけがしたか)」、「意識、神経障害の程度」、「画像所見(CTやMRI検査の結果)」を総合的に判断して行われます。当院ではこれらに加え、外傷の予後に関わる様々なモニタリング(脳の圧測定、経時的な血液凝固異常検査など)を行い、より良い治療を行っています。
詳しくは「脳神経救急外傷センター」ホームページをご覧ください。

頭部外傷の治療

【脳震盪について】

脳震盪は、受傷部の診察でも、一般的なCT・MRI検査でもわからない、唯一の外傷の病態です。頭部の打撲により、脳に傷がなくとも脳の機能が低下している状態です。

脳震盪は様々な症状を起こします。これら症候性となったものは「脳震盪後症候群」と呼ばれます。典型的には、軽度の頭部外傷後は意識がしっかりしていたが、徐々に(あるいは急速に)意識障害、頭痛、嘔吐、痙攣発作などを起こします。驚くことに、軽症頭部外傷の約半数に起こると言われており、そのうちの約10%の患者さんは、症状が1年以上持続します。小児では、頑固な頭痛が後遺することが知られており、頭部外傷は急性期治療はもちろん、慢性期の管理も大切です。

頭部外傷の治療