閉塞性動脈硬化症|主な治療法|血管外科

閉塞性動脈硬化症について

動脈硬化とは

人口の高齢化や食生活の欧米化により動脈硬化を有する患者さんが増加しています。動脈硬化とは、血管の壁にプラーク(よごれ)が沈着することで血管が細くなり、最終的には詰まってしまう状態です。こうなると、血流が低下しますので、様々な臓器が酸素不足(虚血)となります。部位により症状は異なり、頭であれば脳梗塞ですし、心臓であれば心筋梗塞となります。そして、下肢では閉塞性動脈硬化症となります。最も大事なのは、動脈硬化を来す要因(リスク)を減らすことです。

動脈硬化02

動脈硬化のリスク因子:喫煙、コレステロール(LDL)の上昇、糖尿病、高血圧

これらのリスクを改善することが、動脈硬化を予防・改善することにおいて最も重要となり、下肢の症状が出現している方は、なお厳しく管理をすることが奨められております。また、運動療法も非常に効果的です。筋肉痛が出現するまで歩行することによって、狭くなった血管を迂回する新たな血管(側副賂)の増生が強化され、歩ける距離が伸びてくることが期待できます。しかしながらこのような薬物療法や運動療法を施しても症状の改善が得られなかった場合、足への血流を増やすため、血行再建術が必要となります。

動脈硬化の症状

下肢閉塞性動脈硬化症の症状

  • 歩行時の疼痛(間欠性跛行)
  • じっとしていても痛む(安静時痛)
  • 潰瘍の出現(壊疽)

下肢閉塞性動脈硬化症の症状は多岐にわたりますが、血流障害が軽度であれば無症状です。しかし血流障害が強くなると「間欠性跛行」が出現します。間欠性跛行とは、一定の距離を歩くと、太ももやふくらはぎの疲労感や筋肉痛が出現し、立ち止まってしばらく休むことでこれらの症状は消失し、再び歩けるようになる症状です。しかし、脊柱管狭窄症による神経障害でも似た症状が出現するため、鑑別が必要となることが多くあります。

歩行したら痛い:閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症

歩行最初から痛い、前屈みで改善:脊柱管狭窄症

  • 脊柱管狭窄症

  • さらに血流障害が進行すると、歩かなくても足先が痛む「安静時痛」が生じます。加えて、小さな足の傷が治らず、びらんとなり、また、紫色や黒色になることがあり、「潰瘍」や「壊死」と呼ばれる状態に至ります。通常の方であれば足に小さな傷ができても血行がよいため自然と治癒します。

    しかし閉塞性動脈硬化が重症化した患者さんの場合、血流が非常に乏しいため、足の小さな傷が治癒せず、これがびらんや潰瘍となり、さらに壊死に進行します。また、細菌感染を伴うことも少なくありません。「安静時痛」「潰瘍」「壊死」にまで進行した場合、「重症虚血肢」と呼ばれ、これは下肢閉塞性動脈硬化症の最重症型にあたります。足が壊死してしまうと、多くの場合、下肢切断は避けられませんが、血行再建術(血流を改善させる手術)を受けることで、切断範囲を最小限に留めることができます。

  • 動脈硬化02

  • 閉塞性動脈硬化症の治療の基本は、生活習慣病の是正です。食生活を含めたライフスタイルの見直しや、喫煙者であれば禁煙が重要になります。また、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病に対する治療も欠かせません。さらに、前述のように運動療法も非常に大切です。しかしながら、これらの保存的治療にて改善が得られない場合、血行再建術が検討されます。血行再建術はカテーテル治療とバイパス手術のふたつに大別され、また、両者を複合して行うハイブリット手術も存在します。以下にその例を示します。

当科での治療・・・保存的治療、外科的治療、血管内治療

カテーテル治療(血管内治療)

  • 間欠性跛行に対する腸骨動脈の血管内治療
    間欠性跛行に対する大腿の血管内治療

  • カテーテル治療は、局所麻酔の下、風船(バルーン)を用いて狭くなった血管を広げたり、ステントにて狭くなった血管を裏打ちしたりします。カテーテル治療は細くなった血管に有効ですが、例え閉塞した血管であってもカテーテル治療を行うこともあります。

バイパス手術

  • 間欠性跛行に対する大腿の血管内治療

  • バイパス手術は、全身麻酔の下、自家静脈(患者さん自身の静脈)もしくは人工血管を用いて詰まった血管を橋渡しします。バイパス手術は、完全に閉塞した血管や、狭窄や閉塞した血管が長い場合などに有効です。

ハイブリッド手術

カテーテル治療は狭くなった血管に有効です。また例え詰まってしまった血管であっても、閉塞した血管の長さが短ければカテーテル治療で対応できます。しかしながら、閉塞した血管が長い場合には、バイパス手術の方が有効とされています。カテーテル治療とバイパス治療の両者は一長一短であり、どちらが優れているとは一概に言えません。カテーテル治療は局所麻酔で施行するため侵襲が少なく、入院期間も短いですが、全ての病気に適している訳ではありません。一方、バイパス手術は全身麻酔を必要とし、入院期間もカテーテル治療に比べて長くなりますが、血流の改善は大いに期待できます。 近年はカテーテル治療を行うことが多くなっていますが、血管外科ではバイパス手術とカテーテル治療の両者を行っているため、患者さんの病気により適した治療法を選択できると自負しております。

最後に

下肢閉塞性動脈硬化症は、専門外来を受診することで適正な診断に至り、適切な治療を受けることで、より長く元気な足を維持していくことができます。また、動脈硬化を有する患者さんは、下肢の血管に留まらず、体中の主要な血管にも動脈硬化を来していると考えられます。早期に治療を開始することにより、動脈硬化の進行をくい留め、動脈硬化に由来する他の病気の発症を予防していくことにもつながります。特に動脈硬化のリスクを複数有する患者は注意が必要ですので、我々の専門外来でご相談下さい。