2020年1月号 ドクターコラム

多発性骨髄腫について

血液内科 部長 田内 哲三

罹患数は高齢化に伴い増加傾向

高齢者に多く発症するとされている多発性骨髄腫は近年の高齢化に伴い罹患数は増加傾向にあります。今から15年くらい前までは多発性骨髄腫の治療は40年間の暗黒の歴史が続いておりました(図1)。

多発性骨髄腫について
(図1)

すなわち、1960年代から行われているメルファラン、プレドニゾロン(MP療法)を超える抗がん剤治療が確立できなかったため、1980年代より行われるようになった造血幹細胞移植やサリドマイドでさえも患者さんの命を伸ばすことはできませんでした。

多発性骨髄腫の治療革命がおこったのは分子標的薬であるプロテアゾーム阻害剤(ボルテゾミブ)の登場です(図2)。

プロテアゾーム阻害剤
(図2)

新規薬剤の開発

ボルテゾミブの登場から次々と新規薬剤の開発が進み、現時点では多発性骨髄腫の患者さんに対しては10年間生きられることを目標に治療を行っております。多発性骨髄腫の患者さんは一人一人病状が異なることが知られております。腫瘍細胞も細胞形態が異なるだけでなく(図3)、腫瘍細胞が抱える遺伝子異常も個々で大きな差があることが知られています(図4)。

多種多様な骨髄腫の細胞形態
図3. 多種多様な骨髄腫の細胞形態

多種多様な遺伝子変異をもつ骨髄腫細胞
図4. 多種多様な遺伝子変異をもつ骨髄腫細胞

骨髄腫細胞の多様な形態

2019年の米国血液学会でも議論されているように、現在の多発性骨髄腫の治療は多彩な遺伝子変異をもった骨髄腫細胞を多面的な戦い方をして根絶させることにあります。ダラツズマブをはじめとした抗体医薬品(図5)に免疫調整薬、プロレアゾーム阻害剤等を駆使して腫瘍細胞を極力減らし、患者さんが70歳以下で、大きな臓器障害がなく、日常生活動作が自立している場合は自家末梢血幹細胞移植を挟んで治療を継続させます。

抗CD38抗体であるダラツズマブ
図5.抗CD38抗体であるダラツズマブ

「延命」から「治癒」へ

現在の多発性骨髄腫の治療は骨髄腫細胞を極限まで減らし「延命」から「治癒」へと変えていくことが目標となります。さらに患者さんの10年以上の生存を考えた場合、古典的なアルキル化剤等の二次発がんのリスクのある抗がん剤治療は慎重に選択すべきであることが2019年12月の米国血液学会でも議論されております。新百合ヶ丘総合病院においても米国、EU諸国で行われている最先端の治療を提供することが可能です。