2021年3月号

摂食嚥下障害について

リハビリテーション科 小杉 剛

リハビリテーション科 言語聴覚士の小杉です。
今回は、私たち言語聴覚士が専門的にリハビリテーションを行う障害のひとつ、「摂食嚥下(せっしょくえんげ)障害」についてお話しします。

摂食嚥下障害とは

  • 摂食嚥下障害
  • 摂食嚥下障害(または嚥下障害)は、食べること・飲み込むことの障害で、食事や水分などがうまく食べられない・飲み込めないような状態をいいます。

    症状は様々ですが、うまく食べ物を噛めない・口からこぼれてしまう・飲み込むまでに時間がかかる・飲み込めてもむせてしまう・食後に痰が多くなるなどの症状が出やすいです。また、これらの症状が低栄養・脱水・肺炎などに繋がってしまうこともあります。

摂食嚥下障害の原因

摂食嚥下障害は原因も様々です。
成人の方に多い原因は脳梗塞などの脳血管疾患です。「食べる」という行為(食べ物の認識・口や舌による食物の咀嚼や移動・喉で飲み込む動作(嚥下反射))は、脳によって制御されている動作がほとんどです。脳血管疾患により、これらの行為を制御する中枢や神経回路がダメージを負ってしまうことで、「食べる」という一連の動作がうまくできなくなってしまうことがあります。

高齢者の方は、筋力の低下によって食べ物が食べづらくなり、咀嚼が不十分になることで飲み込みづらさが起きやすいです。また、のど仏の位置が下がってしまうことも原因になることがあります。私たちが何かを飲み込むとき、のど仏が上に迫り上がっていると思います。この迫り上がる動作が気管に食べ物が入らないようにするために重要な働きをしているのですが、のど仏が下がってしまうことで働きが起きにくくなってしまいます。

この他にも、口や喉の病気、首周りの動かしづらさなどでも摂食嚥下障害が起きることがあります。

摂食嚥下障害のリハビリテーション

摂食嚥下障害のリハビリテーションは障害になる前の嚥下機能を取り戻すことが目標ですが、症状が重い場合などはこれ以上摂食嚥下障害が進行しないことを目標にする場合もあります。

リハビリテーションの内容は口や喉の筋力を鍛える『間接的嚥下訓練』、ゼリーやとろみを付加した水を使って食べ方や飲み込み方を練習する『直接的嚥下訓練』、実際の食事を安全に食べる練習である『摂食訓練』があります。

言語聴覚士は、患者さんの症状や状態、目標に合わせてこれらのリハビリテーションを実施していきます。

また、医師と協働で内視鏡による喉の検査(嚥下内視鏡検査)や造影剤を飲み込んでもらって喉の動きをみる検査(嚥下造影検査)も必要に応じて実施して、摂食嚥下障害の原因・状態の把握にも努めております。

多くの方が生活の中で楽しみとしている食事。突然の病気によってこの楽しみが損なわれることがないように、少しでも長く食事を楽しめるように取り組んでいきます。

リハビリテーション科よりトレーニング動画のご紹介

飲み込む力が衰えると、飲み込んだ食べ物が気管に入り込み誤嚥を引き起こすことがあります。嚥下体操を行うことで、唾液がよく出て飲み込みやすくなり、誤嚥を予防することができます。
トレーニング動画「嚥下体操」編はこちらから