広報紙 vol.97しんゆりニュースレター

掲載日:2026-7-1

皮膚科特集

皮膚科特集|広報紙

「皮膚は私たちを守る大切なバリア」皮膚病を的確に診断、最善の治療を

  • 新百合ヶ丘総合病院
    皮膚科 部長
    皮膚疾患研究所所長

    あきやま まさし

    秋山 真志 医師
  • 【プロフィール】
    1986年慶應義塾大学医学部卒業。92年米国ワシントン大学医学部皮膚科学、生物形態学教室上級研究員。99年帝京大学医学部附属市原病院皮膚科助教授。2007年北海道大学大学院医学研究科皮膚科学分野准教授。10年名古屋大学大学院医学系研究科皮膚科学分野教授。15年慶應義塾大学皮膚科非常勤講師。20-25年名古屋大学大学院医学系研究科副研究科長。26年名古屋大学名誉教授。2026年4月より現職。
    日本専門医機構認定皮膚科専門医/医学博士
  • 皮膚科診療責任者の秋山真志です。私は2026年3月、15年半勤めた名古屋大学皮膚科教授を退任し、4月から当院皮膚科に着任いたしました。私は皮膚科医になって約40年ですが、東京を皮切りに、静岡、千葉、北海道、愛知の様々な地域で、また、大学病院や皮膚科医のほとんどいない地域の病院など、多様な環境のもと、あらゆる皮膚病の診療に取り組んでまいりました。

    診療の傍ら、皮膚疾患の研究も続けてまいりましたが、私の研究は常に患者さんの診療に寄り添ったものであることを目指してきたつもりです。研究における私の専門は、遺伝性皮膚疾患、特に、遺伝性の皮膚のバリア機能障害です。一般の皮膚病とは関係の薄い専門分野と思われるかも知れませんが、皮膚の一番大切な役割は外界からの異物や乾燥から私たちの体を守るバリア機能ですので、実は、多くの皮膚疾患が皮膚のバリア機能低下と関連しています。

    皮膚科は、人体の中で最も大きな臓器である「皮膚」と、その付属器(毛髪・爪・汗腺など)に関する病気を扱う診療科です。

  • 皮膚科の診療では、皮膚だけの問題である病気から、全身性の病気の一部としての皮膚の異常までが対象になります。内臓の病気と比べて、「たかが皮膚病」と軽く考えがちですが、かゆみ、痛みといった自覚症状や整容上の問題などによって、患者さんのQOLに大きく影響する場合も少なくありません。

    皮膚科の対象疾患は、アトピー性皮膚炎、乾燥性湿疹、接触皮膚炎(かぶれ)などの種々の湿疹、じんましん、乾癬、細菌感染症(とびひなど)、ウイルス感染症(いぼ、単純ヘルペスなど)、真菌感染症(水虫など)、脱毛症、にきび、良性や悪性の皮膚腫瘍(ほくろ、粉瘤など)と本当に多種多様で、患者さんの多い一般的な病気がたくさん含まれています。

    治療法も、外用療法、内服療法、注射や冷凍凝固治療などたいへん多彩で、最適な治療法を選択するのが皮膚科医の腕の見せ所です。私は、それぞれの患者さんの皮膚疾患を正確に診断し、その病態を患者さんにわかりやすく説明することで、患者さんと病気の性質と治療法についての情報を共有し、共に最善の治療法を決めていくことが大切と考えています。

【目次】

皮膚バリア機能低下は万病の元
皮膚・肌の大切なバリア機能を保つには?

皮膚の一番重要な役割は、「バリア機能」です。皮膚は私たちの体を外部環境から守る“最前線の防御システム”です。そのバリア機能を健全に保つことは、健康そのものに深く関わっています。皮膚のバリア機能は、皮膚の一番外側にある「角層」(いわゆるアカ)が中心となり、体の外側から内側へと、内側から外側への、2方向性のバリアとして働いています。外側から内側へのバリアは、細菌・ウイルス・各種アレルゲン(アレルギーの元になる物質)などの異物の侵入を防いでいます。他方、内側から外側へのバリアは皮膚からの水分蒸発を防ぎ、肌のうるおいを保ちます。

外側から内側へのバリアが弱くなると、感染症にかかりやすくなったり、アレルゲンの皮膚での感作(アレルゲンに対してアレルギーを持つようになること)が亢進して、アトピー・アレルギー性の病気の発症や悪化に繋がります。内側から外側へのバリアが弱くなると、皮膚の水分が失われ、肌荒れ、カサつきなどの乾燥肌になり、かゆみを生じます。皮膚のバリア機能の低下は、皮膚の健康を損ね、全身の健康にも影響するのです。

イラスト

では、皮膚バリアを健全に保つにはどうすればよいでしょうか。その答えは、一言で申し上げると「スキンケア」ということになります。スキンケアには、皮膚を清潔に保つ、保湿する、紫外線対策をする、という3点が重要です。その中でも、バリア機能を保つためには、保湿が一番重要です。皮膚からの水分の蒸散を防ぐ、内側から外側へのバリアの要は、皮膚表面のセラミド等からなる脂質(脂分)です。

この皮膚表面の脂質は、水分が蒸発しないように皮膚に蓋をする役目を果たしています。ですので、皮膚表面の脂分を減らさないようにすることが、保湿に繋がります。具体的には、入浴等の際に、石鹸でゴシゴシ洗ったり、熱いお風呂に長湯したりは、お勧めできません。入浴や手洗い、洗顔で皮膚の脂分を落としてしまった後は、保湿剤のクリームなどで脂分を補ってあげるのも効果的です。しっかりとした保湿で皮膚バリアを健全に保つことが、皮膚を、そして私たちを健康に導きます。患者さん一人一人の皮膚の状態に即したスキンケアをアドバイスできれば、と願っております。

皮膚バリアの低下によって発症する
病気の治療、予防法

1)バリア機能低下による皮膚の乾燥が原因の乾燥性湿疹、皮脂欠乏性皮膚炎

皮脂欠乏性皮膚炎は、典型的には、秋冬の空気が乾燥する季節にお年を召した方の膝や腰などに見られます。皮膚の乾燥だけで、直ちに湿疹ができるわけではないですが、皮膚の乾燥によりかゆみを生じ、それを掻いてしまうことで湿疹が生じ、さらに掻くことで悪くなります。「乾燥」→「かゆみ」→「掻いてしまう」→「湿疹」→「さらにかゆい」→「ますます掻いてしまう」→「さらに湿疹が悪くなる」という悪循環が生じてしまうのです。皮脂欠乏性皮膚炎の主な症状は、カサカサして、粉をふいたような皮膚の乾燥、ひび割れ、細かい亀裂、かゆみ、赤みです。すね、腕、腰回りなど、皮脂の少ない部位に起こりやすいのが特徴です。

皮脂欠乏性皮膚炎を悪化させる要因は、加齢による皮脂分泌の減少、冬場の暖房による室内の空気の乾燥、入浴習慣(熱いお湯に長風呂、石鹸でゴシゴシ)などです。加齢による皮脂の減少は、なんとも、致し方ありませんが、そのほかの要因は気をつければ、減らすことができるかも知れません。治療は、既に述べましたスキンケアと、できてしまった湿疹は早めに外用薬で治療するということになります。治療も予防も基本はシンプルで、「洗いすぎない+しっかり保湿」をお勧めしています。

イラスト

2)バリア機能低下による皮膚でのアレルゲン感作が原因のアトピー・アレルギー性の種々の病気

アレルギーの元になる物質を「アレルゲン」と呼び、アレルゲンに対してアレルギーを持つようになることを「感作」と呼びます。皮膚の外側から内側へのバリアは、たんぱく質でできているアレルゲンの侵入を減らし、アレルゲンに対して皮膚を介してアレルギーを持つようになること(経皮感作)が生じるリスクも減らしています。このバリアの低下はアレルゲンに対する経皮感作を起こりやすくします。

さらに、アレルゲンの経皮感作のリスク増大は、表面の角層のバリア異常だけでなく、皮膚の炎症(湿疹・皮膚炎)があることによっても起こります。角層のバリア障害によって、湿疹・皮膚炎が起こりやすくなり、湿疹・皮膚炎が起こると、それらは、さらに、皮膚のバリア障害の原因となります。すなわち、角層のバリア機能障害と湿疹・皮膚炎との悪循環が回って、皮膚からのアレルギーの獲得が進むことになります。皮膚からのアレルギー獲得は、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症へと繋がります。「えっ? 食物アレルギーも皮膚からなの?」と、思われる方も多いと思いますが、一度も卵を口にしたことがない赤ちゃんが卵アレルギーだったりするのは、このためです。

では、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーといったアトピー・アレルギー性の病気を予防するには、どうしたら良いでしょうか。まず、しっかりとしたスキンケアで、皮膚表面の角層のバリア障害を作らない、悪くしないということと同時に、できてしまった湿疹・皮膚炎を放置せず、迅速に治療するという2段構えの予防戦略が必要です。スキンケアと湿疹の早めの治療が、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症や悪化を防ぐ一番の近道ですので、「湿疹かな?」と思われたら、早めのご受診をお勧めいたします。

皮膚の病気、最近のトピックス
遺伝病の病名改訂

昨年、私たち、皮膚の遺伝病の国際エキスパートグループは表皮に関連した皮膚遺伝病の病名を全面的に改訂いたしました。国際新病名では、「魚鱗癬」「道化師様」といった、患者さんやご家族にとって不快と思われる用語は、用いられなくなり、代わりに、病気に関係する遺伝子の名前が病名に含まれました(例:旧病名…尋常性魚鱗癬、新病名…FLG-非症候性表皮分化疾患)。今回の病名改訂が、皮膚の遺伝病をお持ちの患者さんとそのご家族にとって、少しでもお役に立つことを願っております。

皮膚科 医師紹介

「皮膚科」診療科ページはこちら

①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格・公職等

秋山 真志(皮膚科部長/皮膚疾患研究所所長)

  1. 皮膚科一般、遺伝性皮膚疾患、特に遺伝性角化症
  2. 慶應義塾大学医学部
  3. 1986年 慶應義塾大学医学部卒業
    1992年 清水市立病院皮膚科
    1992年 米国ワシントン大学医学部皮膚科学、生物形態学教室上級研究員
    1994年 北里研究所病院皮膚科
    1999年 帝京大学医学部附属市原病院皮膚科学教室助教授
    2001年 北海道大学医学部附属病院皮膚科講師
    2007年 北海道大学大学院医学研究科皮膚科学分野准教授
    2010年 名古屋大学大学院医学系研究科皮膚科学分野教授
    2015年 慶應義塾大学皮膚科学教室非常勤講師
    2020年~2025年 名古屋大学大学院医学系研究科副研究科長
    2026年 名古屋大学名誉教授
    2026年4月 現職
  4. 日本専門医機構認定皮膚科専門医/医学博士

皮膚科 非常勤医師

飯島 正文

  1. 重症薬疹・接触皮膚炎・アトピー性皮膚炎
  2. 東京大学医学部
  3. 1973年東京大学医学部卒業。東京大学医学部皮膚科助手。80年米国立衛生研究所(NIH)留学。95年昭和大学医学部皮膚科教授。2002年昭和大学病院副院長。04年昭和大学病院病院長。12年昭和大学名誉教授。
  4. 日本専門医機構認定皮膚科専門医/医学博士