広報紙 vol.78しんゆりニュースレター
2024/12/1掲載
脳血管内治療センター特集|広報紙
最先端医療機器を駆使した安全で高度な脳血管内治療を提供します
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新百合ヶ丘総合病院
脳血管内治療センター長 -
【プロフィール】
1991年順天堂大学医学部卒業。2005年順天堂大学脳神経外科学講座講師。13年順天堂大学脳神経外科・脳神経血管内治療学講座教授。21年順天堂大学脳神経血管内治療学研究センター長。23年東京慈恵会医科大学脳神経外科客員教授。24年大石脳神経外科クリニック院長。24年10月より脳血管内治療センター長。
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2024年10月1日付で脳血管内治療センター長に就任いたしました、大石英則と申します。私は1991年に順天堂大学を卒業後、脳神経外科医として20年以上にわたり脳血管内治療の研究と臨床に従事し、大学病院および関連施設で約7,500件の脳血管内治療を手がけ、多くの患者さんの命を救うことに全力を注いできました。今後もこれまでの経験を活かし、患者さんお一人おひとりに最善の治療を提供できるよう努めてまいりますので、よろしくお願いいたします。
さて、当センターには私以外にも、豊富な経験と高度な技術を持つ脳血管内治療のスペシャリストが複数名在籍しており、各々が専門性を発揮しつつ、チームとしての強みを活かした高水準な医療を提供しています。このチームアプローチにより、より安全で精度の高い脳血管内治療を実現し、患者さんに最善の結果をお届けできる体制を整えております。脳血管内治療は、レントゲン透視下でカテーテルを用いて血管内にアクセスし、治療を行う高度な技術です。当センターでは、最新型の脳血管撮影装置を導入し、安全性を確保しつつ、治療精度の向上に努めております。これにより、患者さんの身体的負担を最小限に抑え、入院期間の短縮を可能とする低侵襲医療が実現しています。
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治療対象となる疾患は、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤、脳梗塞を引き起こす脳主幹動脈閉塞、さらに硬膜動静脈瘻や動静脈奇形などのシャント疾患、頸動脈狭窄症などですが、当センターでは開頭摘出術前の栄養血管塞栓術や、難治性慢性硬膜下血腫に対する中硬膜動脈塞栓術なども積極的に行っており、幅広い疾患に対応しております。特筆すべきは脳動脈瘤治療に力を入れていることです。従来、脳動脈瘤の手術法は開頭クリッピング術が主流でしたが、近年ではコイル塞栓術(プラチナコイルを使用)という脳血管内治療が広く普及しています。フローダイバーター治療や瘤内フローディスラプターなどの新しい機器を積極的に導入しており、これにより、多くの患者さんに対して安全かつ効果的な治療が可能となっています。
当センターは、信頼される高度な医療を提供し、患者さんに安心して治療を受けていただける環境を整えておりますので、どんな些細な症状でも、どうぞお気軽にご相談ください。また、地域の医療機関様との連携をさらに強化し、信頼される医療提供体制を築いてまいります。
脳血管内治療(カテーテル治療)とは
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脳血管内治療は聞き慣れない言葉だと思いますが、通常の脳外科手術が皮膚を切開して脳の外側から手術を行うのに対して、カテーテルという直径1mmに満たない細い管を使用して、脳血管の内側から治療を行うため、脳血管内治療と呼ばれています。
主な治療対象は脳動脈瘤、脳梗塞、頸動脈狭窄、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻など多岐にわたりますが、特に脳動脈瘤や脳梗塞治療における治療の進歩は著しく、もはやなくてはならない治療方法となりました。脳血管内治療の進歩により、それまでは治療が困難であった脳動脈瘤や、点滴でしか治療できなかった重症脳梗塞も治療できるようになり、世界中で普及してきています。また頭部を切開する必要がないため、体力のない患者さんでも治療が受けられるようになりました。
当センターの特徴
当センターでは、患者さんが安心して治療に関するご相談ができるよう、脳血管内治療を専門とするスタッフを充実させております(日本脳神経血管内治療学会専門医3名、指導医4名)。
また近隣のクリニック、病院と連携して情報共有を行いますので、普段おかかりのクリニックからのスムーズなご紹介が可能です。適切なタイミングでの外来検査をご提案し(MRI検査)、必要に応じて短期間の検査入院(最先端の血管造影装置によるカテーテル検査)を行い、治療の適応について判断(必ずしもすべての患者さんが治療対象となるわけではありません)します。
治療となった場合は、現在国内で使用可能なすべての治療材料(デバイスといいます)を用いた高度な治療をご提供いたします。
対象疾患
- 脳動脈瘤(くも膜下出血の原因となる)
- 脳主幹動脈閉塞(脳梗塞を引き起こす)
- 頸動脈狭窄症
- 脳動静脈奇形(AVM)
- 硬膜動静脈瘻
- 脳腫瘍(髄膜腫など)
- 急性期脳梗塞(脳主幹動脈閉塞)
- 開頭摘出術前の栄養血管塞栓術
- 難治性慢性硬膜下血腫に対する中硬膜動脈塞栓術 など
【緊急手術】
- くも膜下出血(破裂脳動脈瘤)
- 脳梗塞(脳主幹動脈閉塞の発症8時間以内)
【予定手術】
- 未破裂脳動脈瘤
- 頸動脈狭窄症
- 脳動静脈奇形
- 硬膜動静脈瘻
- 脳腫瘍
脳動脈瘤の治療法
すべての脳動脈瘤が治療適応になるわけではありません。動脈瘤のできた場所、大きさ、形、くも膜下出血の家族歴などが考慮され、治療を行うべきかが判断されます。一般的には、瘤の形が不整なもの、大きいもの、複数あるものなどが治療対象となります。
治療法には、従来の①開頭術(切る治療)と②脳血管内治療(切らない治療)の2つがありますが、動脈瘤の場所、周りの血管や脳との位置関係によりどちらの治療法が患者さんにとって望ましいかを適切に評価した上で、最終的な治療法が選択されています。
脳動脈瘤に対する新しい治療法
① 脳動脈瘤に対するフローダイバーター治療
フローダイバーター治療とは、脳動脈瘤の入り口(ネックと呼ばれます)をカバーするように、細かいメッシュ状のステントであるフローダイバーターを、カテーテルと呼ばれる細い管を通じて展開留置します。これにより瘤内の血液が停滞し、血栓化が起きて脳動脈瘤が消失します。
実際の症例:54歳、女性。未破裂脳動脈瘤(左内頸動脈瘤)
② 脳動脈瘤に対する瘤内フローディスラプター治療
フローディスラプター治療とは、脳動脈瘤の中に、瘤と大きさがピッタリと合うフローディスラプターを、カテーテルと呼ばれる細い管を通じて展開留置します。これにより瘤内の血液が停滞し、血栓化が起きて脳動脈瘤が消失します。
実際の症例:39歳、男性。未破裂脳動脈瘤(左内頸動脈先端部動脈瘤)
脳血管内治療センター医師紹介
①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格・公職等- 大石 英則
(脳血管内治療センター
センター長)
①脳血管内治療、脳血管障害、脳神経外科一般
②順天堂大学医学部卒業
③日本脳神経外科学会専門医・指導医/日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医/日本脳卒中学会専門医・指導医 -
藤本 道生(脳血管内治療センター
副センター長/脳神経外科統括部長)
①脳血管内治療
②昭和大学医学部卒業
③日本脳神経外科学会専門医・指導医/日本脳卒中学会認定脳卒中専門医・指導医/日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医/宇宙航空医学認定医/医学博士 - 寺西 功輔(脳血管内治療センター
副センター長/脳神経外科(脳血管内治療部門)部長)
①脳血管障害全般、脳血管内治療
②順天堂大学医学部卒業
③日本脳神経外科学会専門医・指導医/日本脳卒中学会専門医/日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医/医学博士 - 柘植 雄一郎(脳神経外科(脳血管障害部門)部長)
①脳神経外科一般、機能的脳神経外科
②札幌医科大学医学部卒業
③日本脳神経外科学会専門医/日本脳卒中学会認定脳卒中専門医・指導医/日本脳神経血管内治療学会専門医 - 岡本 紀善(脳神経外科科長)
①脳神経外科一般
②昭和大学医学部卒業
③日本脳神経外科学会専門医・指導医/日本脳卒中学会認定脳卒中専門医・指導医/日本脳神経血管内治療学会専門医/日本リハビリテーション医学会認定臨床医 - 山本 航(脳神経外科医長)
①脳神経外科一般
②千葉大学医学部卒業
③日本脳神経外科学会専門医/日本脳神経血管内治療学会認定脳血栓回収療法実施医 - 眞上 俊亮(脳神経外科医長)
①虚血性脳血管障害、脳血管内治療
②順天堂大学医学部卒業
③日本脳神経外科学会専門医/日本脳神経血管内治療学会専門医/日本脳卒中学会専門医/医学博士 - 小此木 信一(脳神経外科医長)
①脳血管障害
②東邦大学医学部卒業
③日本脳神経外科学会専門医・指導医/日本脳卒中学会認定脳卒中専門医/日本脳神経血管内治療学会専門医/日本脳卒中の外科学会技術認定医/医学博士 - 清平 美和(脳神経外科医長)
①頭部外傷、脳卒中
②山口大学医学部卒業
③日本専門医機構認定脳神経外科専門医/日本神経内視鏡学会技術認定医/日本脳神経外傷学会認定専門医・指導医/日本脳卒中学会認定脳卒中専門医/日本脳神経血管内治療学会認定脳血栓回収療法実施医/医学博士