広報紙 vol.70しんゆりニュースレター

2024/2/1掲載

消化器内科特集

消化器内科特集|広報紙

マンパワーを生かして、あらゆる消化器疾患に対応します

  • 新百合ヶ丘総合病院
    消化器内科 部長
    どい ひろよし
    土肥 弘義 医師
  • 【プロフィール】
    2003年昭和大学医学部卒業。昭和大学医学部消化器内科(第二内科学)。09年ペンシルバニア大学消化器内科留学。12年昭和大学医学部消化器内科助教。16年国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター。18年より現職。
    日本内科学会認定内科医/日本内科学会総合内科専門医・指導医/日本消化器病学会専門医・指導医/日本肝臓学会認定肝臓専門医・指導医/日本消化器内視鏡学会専門医/医学博士
  • 新百合ヶ丘総合病院は、川崎市北部の地域医療に貢献するために2012年8月に開院し、2020年の増床を経て現在に至ります。私たち消化器内科は担当する臓器が多く、検査や治療の範囲も広いことから、開院時より多くの専門医が在籍しており、内科診療科の中心のひとつとして診療にあたってきました。病院の進化に合わせて、横浜市立大学肝胆膵消化器病学より派遣される医師も増員され、現在15人の消化器内科常勤医が診療にあたっています。

    消化器内科では食道・胃・十二指腸・小腸・大腸などの消化管に加え、肝臓・胆道・膵臓などお腹にある多くの臓器を担当しています。当院では、それらに関係する多数の消化器疾患のほとんどに対して検査から治療まで行うことが可能です。脂肪肝や炎症性腸疾患(IBD)など、近年増加傾向の疾患に対しては、専門外来も併設しています。

    また、近隣の開業医の先生からのご紹介や救急搬送される、急激に症状が出現した患者さんも積極的に受け入れ、必要時には内視鏡をはじめとした緊急治療も行うことができる体制を確保しています。

  • 新型コロナウイルス感染症で制限を余儀なくされた内視鏡検査も通常体制に戻り、2023年度はコロナ感染拡大以前と同等以上の検査件数になっています。スクリーニング検査だけでなく、小腸内視鏡や超音波内視鏡(EUS)を用いた精密検査、治療困難な腫瘍性病変に対する内視鏡治療や肝がんに対する局所・カテーテル治療の件数も年々増加しています。

    当科では急病だけでなく、がん患者さんの診療機会も多くあります。化学療法など繰り返しの治療が必要となる場合には長いお付き合いになることも多くあり、対話をしながら患者さん一人ひとりに向きあった診療を心がけています。当科だけで対応しきれない場合には、消化器外科をはじめ、放射線科、緩和ケア内科とも協力し、地域がん診療連携拠点病院として患者さんに安心して受診していただけるよう診療にあたっています。

    毎日、多くの患者さんが受診されており、待ち時間が長い時などはご迷惑をおかけすることもあると思いますが、引き続き近隣の開業医の先生方とも連携をとりながら、川崎北部地域の診療に貢献していきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

【目次】

【胆道・膵臓の検査・治療】

消化器内科部長  土肥 弘義

胆道(胆嚢・胆管)や膵臓の病気で、最も厄介な病気はやはりがんです。胆道がんや膵臓がんは治療が難しい病気のひとつですが、他の多くの病気と同様に早期発見すれば治癒できる可能性もあります。胆道や膵臓にもともとご病気がある方だけでなく、肥満や糖尿病などもがんの危険因子であることが知られており、身近な病気として考えることが大切です。

  • 超音波内視鏡検査超音波内視鏡検査
  • 胆膵内視鏡件数胆膵内視鏡件数

胆道がんや膵臓がんの早期発見に有用なのが、超音波内視鏡検査(EUS)です。胃カメラの先端に超音波装置がついた内視鏡を使用し、胆道や膵臓の近くにある胃や十二指腸の中から詳細な観察を行うことで、より小さいがんも発見することができます。さらに、疑わしい病変があれば、超音波画像を見ながらその病変を穿刺し組織を採取して病理診断することも可能です(EUS-FNA: 超音波内視鏡下穿刺吸引法)。

診断や治療の方針は、ガイドラインにより概ね定められており、患者さんと担当医が相談して最終決定します。治療の長い経過の中では、トラブルが起こることもしばしばありますが、ほとんどの場合には対処する方法があります。例えば、黄疸が出現した際には、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を行い、狭窄部にステントを留置することで、黄疸の原因である胆汁の流出障害を改善できます。何らかの理由でERCPが難しい場合でも、先述の超音波内視鏡を用いて胆道ドレナージ(EUS-BD)を行うことも可能になりました。

当院では胆膵領域の第一人者である埼玉医科大学国際医療センター消化器内視鏡科の良沢昭銘教授、帝京大学溝口病院消化器内科の土井晋平教授が毎月来院し、検査・治療を行っています。当院でのERCPとEUSを合わせた胆膵内視鏡件数(今年度は推定)も年々増加しており、大学病院と比べても遜色ないレベルを提供できるように、日々の診療に励んでいます。

【肝臓の検査・治療】

消化器内科部長  今城 健人

近年、脂肪肝を由来とした肝硬変、肝細胞がんが急増しております。しかしながら、肝臓は沈黙の臓器といわれており、肝硬変や肝細胞がんまで至ってしまっても初期のうちは症状がなく、気づかれずに進行してから見つかることも少なくありません。これまで、肝臓の状態評価には肝臓に針を刺す、肝生検による病理診断が主流でした。ところが、近年、特殊な超音波やMRIを利用して肝臓の硬さを測定する、エラストグラフィというものが開発されました。痛みなく、簡便に肝臓の硬さと脂肪の量を測定することができます。肝臓のみならず、同時に膵臓などの悪性腫瘍もチェックすることが可能です。たかが脂肪肝と軽くとらえずに、ぜひ一度この検査を受けていただきたいと思います。

MRエラストグラフィについてMRエラストグラフィについて

また、当院では肝がん(肝細胞がんや転移性肝がん)に対して、局所治療(ラジオ波焼灼療法やマイクロ波凝固療法)、カテーテルを用いた塞栓療法や新しい化学療法を、門脈圧亢進症に対しては高難度の血管内治療にも力を入れております。特に局所治療では鎮静剤や鎮痛剤を使用しながら患者さんの苦痛をほとんど伴わないように治療を行うことを心がけております。手術や化学療法ができなくなってしまった肝がんの方も一度ご相談いただけますと幸甚です。

肝がん局所治療について肝がん局所治療について

また、医療機関の方々におかれましても、ぜひ当院へ患者さんをご紹介いただきたく、今後ともよろしくお願いいたします。

【消化管内視鏡治療】

消化器内科医長  土谷 一泉

消化管内視鏡(胃カメラ・大腸カメラ)では、食道、胃、十二指腸、大腸の観察や、病変の組織診断、吐血や血便に対する止血術、食道胃静脈瘤治療、異物除去、狭窄部のバルーン拡張や金属ステント留置などに加え、ポリープや早期がんの切除など、多岐にわたる治療を行っています。

当院では、早期がんなどの内視鏡切除として、専門性の高いESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)にも力を入れています。ここ数年は治療枠を拡充し、多くの早期がんの治癒切除を実現しています。今日では技術の進歩やガイドラインの改訂に伴い、内視鏡治療の適応は拡大し、ひと昔前までは治療が困難であった病変でも、負担の少ない内視鏡治療で切除することが可能となりました。

  • 亜全周切除を要する食道ESD亜全周切除を要する食道ESD
  • 専門的な話となりますが、食道(亜)全周病変、胃穹窿部(いきゅうりゅうぶ)/噴門部や終末回腸/虫垂開口部近傍などの高難度部位、内視鏡治療後の再発病変や点墨後症例、高度線維化や筋層牽引を伴う症例など、治療が困難な患者さんの紹介先としても当院をお選びいただく機会が増えてきており、安全・確実な内視鏡治療を実現するべく日々研鑽しています。

  • 10㎝超の巨大病変に対する胃ESD10㎝超の巨大病変に対する胃ESD
  • 治療後再発病変に対する大腸ESD治療後再発病変に対する大腸ESD

早期がんはそのほとんどが無症状であり、意識して内視鏡検査を受けなければ発見することができません。内視鏡は苦しい・痛い・怖いとお考えの方も多いかと思いますが、当院では鎮静剤なども使用しながら、苦痛の少ない内視鏡検査・治療を提供できるよう努めております。早期に発見できた胃がんや大腸がんは根治が目指せる時代です。内視鏡検査や治療をご希望されている方は、ぜひ当院までご相談ください。

【炎症性腸疾患(IBD)】

消化器内科医長  鹿野島 健二

炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎とクローン病を代表とする、腸に慢性的な炎症が生じることで下痢・腹痛・血便といった消化管症状が続くようになる病気です。

腸管の免疫になにかしらの異常が生じて起こる病気であり、その原因はいまだよくわかっておらず国の難病に指定されています。リウマチに代表される膠原病(こうげんびょう)に近しく、皮膚や関節に症状が出現することもあります。未治療で放置することで大腸がんや腸穿孔(腸に穴が開く)を引き起こし、時として致命的になるほか、大きく生活の質(QOL)を損ねることがあります。

潰瘍性大腸炎潰瘍性大腸炎

若い人の病気と考えられてきましたが最近は高齢で発症する方も増えており、世界的に増加傾向の続いている病気です。今のところ根治法の確立していない病気で、腹痛や血便を解消し生活の質(QOL)を維持すること・腸管の炎症を制御し発がんや腸管手術を防ぐことが治療目標となります。

治療薬は年々進歩しており、患者さんの生活に合わせた治療法を提案可能になってきています。

当院では2023年4月よりIBD専門外来を開設しております。従来の治療薬で十分なQOL改善が得られていない方や、病態が落ち着いていても就職・転居・婚姻など社会生活の変化に応じた治療内容を相談したい方なども受診可能です。治らない病気だからと諦めず、お困りの際はお気軽にご相談ください。

消化器内科 医師紹介

消化器内科 医師紹介ページ

①卒業大学 ②専門分野/得意な領域
  1. 井廻 道夫(消化器・肝臓病研究所所長)
    ①東京大学医学部 ②肝臓病学・消化器病学
  2. 國分 茂博肝疾患低侵襲治療センタ―/内視鏡センター センター長)
    ①北里大学医学部 ②肝臓がんに対するラジオ波治療などの局所療法、EOB-MRI、MRElastographyによる診断、門脈 圧亢進症の治療(内視鏡的硬化療法、BRTOなど、門脈血栓溶解療法)
  3. 廣石 和正(副院長/消化器内科部長)
    ①昭和大学医学部 ②消化器疾患全般
  4. 袴田 拓(消化器内科科長/予防医学センター消化器内科部門部長)
    ①筑波大学医学専門学群 ②肝および消化器疾患、栄養医学、健診部門
  5. 土肥 弘義(消化器内科部長)
    ①昭和大学医学部 ②肝胆膵疾患・消化器疾患全般
  6. 今城 健人(消化器内科部長)
    ①金沢大学医学部 ②肝臓疾患全般、非アルコール性脂肪肝疾患 診療、肝細胞がん治療(ラジオ波焼灼療法・カテーテル治療)
  7. 鹿野島 健二(消化器内科医長)
    ①信州大学医学部 ②小腸・大腸(炎症性腸疾患/IBD)
  8. 河合 恵美(消化器内科医長)
    ①群馬大学医学部 ②消化器疾患全般
  9. 土谷 一泉(消化器内科医長)
    ①香川大学医学部 ②早期食道・胃・大腸がんの内視鏡切除、内視鏡治療全般
  10. 田邉 浩紹(消化器内科医長)
    ①山梨大学医学部 ②早期消化器がんの内視鏡治療、消化器疾患全般
  11. 目黒 公輝(消化器内科医長)
    ①島根大学医学部 ②胆膵疾患・消化器疾患全般
  12. 川村 允力(消化器内科医長)
    ①島根大学医学部 ②消化器疾患全般
  13. 西田 晨也(消化器内科医員)
    ①東京医科歯科大学医学部 ②消化器疾患全般
  14. 大塚 英(内科専攻医)
    ①山形大学医学部 ②消化器疾患全般
  15. 若島 將人(内科専攻医)
    ①昭和大学医学部 ②消化器疾患全般