広報紙 vol.54しんゆりニュースレター

2022/7/1掲載

外科特集

乳がんの早期発見と早期治療を目指す
外科特集|広報紙

  • 新百合ヶ丘総合病院
    乳腺外科
    部長
    しのざき のぼる
    篠﨑  医師
  • 【プロフィール】
    頸科に3年間在籍。大学を定年後は、2014年より老健ミレニアムマッシーランド施設長を経験し、その後、2015年4月より現職。
    日本外科学会専門医・指導医/医学博士/日本乳癌学会評議員/日本臨床外科学会評議員/日本臨床外科学会特別会員/太陽の門福祉医療センター理事・評議員
  • 当院の外科は東京慈恵会医科大学から派遣され、消化器外科4人、血管外科2人、乳腺・内分泌外科1人、後期研修医1人の計8人で携わっています。外来・入院患者数、手術件数は年々増加しており、緊急手術を含め毎日手術を施行できる体制になっています。

    乳腺・内分泌外科では、乳腺疾患を中心に診療をしています。乳腺疾患とは、乳がん、乳腺腫瘍(乳腺線維腺腫、葉状腫瘍、乳管内乳頭腫、過誤腫、嚢胞など)、乳腺炎(授乳中の急性化膿性乳腺炎、乳輪下膿瘍、肉芽腫性乳腺炎)などです。

    当科の外来は、私が水曜日、木曜日、第1・3・5月曜日の午後となっています。他に、火曜日の午前・午後は大学から伏見淳医師が、一般乳腺外来と化学療法を必要とする患者さんを診療しています。第2月曜日の午後は風間高志医師が、第4月曜日の午後は武山浩教授が、それぞれ外来診療をしています。手術は火曜日に行っています。

    日々の外来には、検診後の精査、心配で来院する方など、多くの患者さんが訪れます。一人ひとりの患者さんの不安を理解し、家族歴・生活歴などもよく聴取して、漏れのない診断を心掛けています。

  • どのような患者さんの訴えもしっかり受けとめ、適した治療法を紹介し、納得いくまで患者さんとご相談しながら治療にあたります。

    検診や精査などで来院された患者さんには、外来で自ら超音波や組織検査を施行し、結果待ちの時間をできる限り短縮しています。がんと診断された手術施行適応患者さんについては、短期間に検査・手術を計画しています。化学療法先行例でも、治療までの時間は患者さんの不安感が大きいので、患者さんの話をよく聞いて不安軽減に努め、状態や治療について分かりやすく丁寧に説明し、早期の検査・治療に結びつけています。

    目指すのは、乳がんの早期発見と早期標準治療です。早期発見し早期治療すれば、治療も心身の負担なども少なくて済むからです。そして安心安全な診療を行うことです。

    何か気になることがございましたら、早めに乳がんの検査をすることをお勧めいたします。また近隣の先生方には、気軽に患者さんをご紹介していただければ幸いと思います。何卒よろしくお願いいたします。

【目次】

乳がんについて
乳腺・内分泌外科 部長 篠﨑 登

乳がんは、乳腺の上皮細胞から発生する悪性腫瘍です。乳管から発生する乳管がんと、乳汁を作る小葉から発生する小葉がんがありますが、その多くは乳管がんです。

  • 非浸潤性乳がん(早期乳がん)と浸潤性乳がん非浸潤性乳がん(早期乳がん)と浸潤性乳がん
  • 非浸潤性乳がん(早期乳がん)と浸潤性乳がん

    乳がんが、乳管や小葉の内部にだけ存在し、外部に露出していない状態を非浸潤性乳がんと呼んでおり、リンパ節などへの転移はおきないと考えられています。

    マンモグラフィー検診の微細石灰化で発見される乳がんや、乳頭からの血液分泌などが動機で発見される乳がんの中には、非浸潤性乳がんが多く含まれています。一方、乳管や小葉の外部に露出(浸潤)している状態を 浸潤性乳がんといっており、転移の可能性があると考えられています。

乳がんの診断

患者さんの訴えや家族歴などを聴取し、視診・触診を行い、皮膚の形状・色調の変化、乳頭からの分泌液の有無、乳房腫瘤の有無、リンパ節の有無など直接調べます。次いで、X線撮影によるマンモグラフィー検査(MG)と乳房超音波検査を行います。その他にCT(主に転移の検索)やMRI(主に乳がんの広がりや小さな腫瘤などの検索)、PET検査装置も適時駆使し、診断ならびに手術後の経過観察などに利用し、より正確な診断と術後の経過観察に役立てています。

  • 3Dマンモグラフィー3Dマンモグラフィー
  • マンモグラフィー検査

    マンモグラフィー検査はX線装置なので微小な石灰化を発見するのが得意 です。X線の透過度の差異、すなわち正常乳腺の濃度とがんの濃度の差で識別する装置です。当院のマンモグラフィー撮影機はトモシンセシスという新しい 機能(3D)を持ち、鑑別能力がより高く、乳腺専門の放射線科読影医師との読影で二重チェックを施行しています。

    超音波検査

    乳房に超音波を当てて、体内のしこりをモニター画面に映し出す診断法で す。超音波で観察しながら針で組織や細胞を採取することもできます。

    細胞診

    外来で短時間のうちに行える検査です。当院では局部麻酔を用いています。穿刺吸引細胞診:注射器でしこりの中の液体や細胞を採取します。分泌物の細胞診:乳頭以上分泌物中の乳がん細胞の存在の有無を調べます。

乳がんの治療

乳がんの治療は外科療法(局所治療)、薬物療法(全身治療)、放射線療法(局所治療)が柱です。乳がんの性格を手術前に組織検査で調べて治療計画を行います。外科手術には、乳房切除術・乳房温存手術、腋窩リンパ節郭清術・センチネルリンパ節生検などがあり、薬物療法にはホルモン剤・化学薬剤・分子治療薬などがあります。それぞれ標準的な治療法を患者さんと相談して、一番適切だと考えられる治療法を選択・提供しています。現在、大学の教授以下多くの医局員の応援をいただき、大学病院レベルの治療を行っています。多くの面でチーム医療が必須な診療科の一つであり、チーム全員で「患者さんに寄り添った診療」を心がけています。

乳がんの検診

  • 乳がんの検診乳がんの検診
  • 乳がん検診では、早期の乳がんが多数発見されています。現在はマンモグラフィー検診が主流ですが、一部では超音波での検診が行われています。進行した乳がんだけでなく、非浸潤性の状態でも診断できることが多くなりました。

    乳がんは40歳代後半から50歳代に多いとされていますが、高齢者にも多くなっています。乳がんの早期発見のために、定期的に乳がん検診を受けることをお勧めします。

胆嚢結石の外科治療
消化器外科 科長 金井 秀樹

  • 腹腔鏡下手術を行う金井医師腹腔鏡下手術を行う金井医師
  • 腹痛の原因となる疾患の一つに、胆石症があります。胆石症は胆汁の流路に結石が作られる病気で、これにより黄疸や感染、炎症を引き起こすことが少なくありません。日本人の15%〜20%が胆石を有するといわれており、年々増加傾向にあります。その中でも、胆嚢の中に結石ができる胆嚢結石症が約80%を占めています。胆嚢結石症の治療は内服薬による溶解療法と手術による胆嚢摘出が主な治療です。無症状の胆嚢結石症は治療の必要がありませんが、胆石発作と呼ばれる腹痛を起こす場合や、胆嚢炎を併発する場合には治療が必要となります。

溶解療法の適応は、胆嚢機能が保たれており、なおかつ結石の大きさが1cm以下で石灰化がない場合に限られます。多くの場合は溶解療法の適応とはならず、手術治療が勧められます。手術は身体に3〜4箇所の穴を開けて胆嚢を摘出する腹腔鏡下手術を行います。この手術方法が適応にならない場合もありますが、傷が小さいため手術後の痛みが少なく、また身体への負担が少ないため、入院期間が短いことが特徴であり、退院後はすぐに仕事などの日常生活に戻ることも可能です。当院では重篤な基礎疾患がなければ、手術前日から3泊の入院期間を基本としています。腹痛で受診して胆嚢結石症と診断されたことがある方、検診や人間ドックで胆石を指摘されたことがある方は受診をご検討ください。

胸部大動脈瘤に対する枝付きステントグラフト内挿術(RIBS法)
血管外科 部長 金子 健二郎

  • ステントグラフト内挿術(図1)RIBS法:ステントグラフトに穿刺針で穿刺し(①)、穿刺部をバルーンで拡張し(③,④)、小口径ステントグラフトを留置(⑤,⑥)して頸部分枝の血流を確保する。
  • 胸部大動脈瘤、特に頭の血流を担う頸動脈を巻き込む位置にある弓部大動脈瘤に対する手術方法は、従来の外科的手術である弓部大動脈置換術が第一選択となります。しかし、高齢であることや、開胸歴、重度の基礎疾患を有し、手術困難となる患者さんも少なくありません。

    胸部大動脈瘤に対する手術方法として、2008年3月より企業製造の胸部ステントグラフトが薬事承認されました。胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)は低侵襲な手術であり、開胸手術が困難な症例に対して第一選択となり、急速に普及しております。

しかし、弓部大動脈瘤にTEVARを行う際には、頸部分枝の血流を遮断する必要があるため、いずれかの方法で、頸動脈血流を担保する必要があります。これまで、様々な方法でステントグラフトを用いた治療法が行われてきましたが、解剖学的な問題や、合併症の問題、瘤への血流を完全に遮断できないといった、様々な問題点が残っております。このため、我々はRIBS法(Retrograde In-situ Branched Stent graft)という独自の枝付きTEVARを行い、弓部大動脈瘤の治療を行なっております。RIBS法はメインのステントグラフトを留置後に、頸動脈や鎖骨下動脈から逆行性にアプローチしステントグラフトを穿刺針で穿刺し、穿刺部をバルーンで拡張後、小口径のステントグラフトを留置することで頸部分枝血流を確保する方法です(図1)。

  • 手術前(左)と手術後(右)の3D CT検査手術前(左)と手術後(右)の3D CT検査
  • RIBS法は弓部大動脈瘤を有する開胸手術困難症例に対し、低侵襲に治療が可能な完全血管内治療となっており、より広い手術適応で治療にあたっております。

外科医師紹介

(2022年6月現在)

外科・消化器外科

  • 田辺 義明(副院長、外科部長、地域連携推進センター長)

    日本外科学会専門医・指導医/日本消化器外科学会専門医・指導医/日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医/日本消化器病学会専門医・指導医/日本消化器内視鏡学会専門医・指導医/日本静脈経腸栄養学会認定医/日本医師会認定産業医/日本移植学会移植認定医/日本胆道学会認定指導医/日本がん治療認定医機構がん治療認定医/日本緩和医療学会認定医/医学博士

  • 小林 徹也(消化器外科部長)

    日本外科学会専門医/日本消化器外科学会専門医・指導医/日本消化器病学会専門医・指導医/日本消化器内視鏡学会専門医/日本大腸肛門病学会専門医・指導医/日本がん治療認定医機構がん治療認定医/日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医/医学博士

  • 金井 秀樹(消化器外科科長)

    日本外科学会専門医/臨床研修指導医/医学博士

  • 力石 健太郎(消化器外科医員)

  • 岩内 聡太郎(消化器外科医員)

血管外科

  • 金子 健二郎(血管外科部長)

    日本外科学会認定専門医/日本脈管学会認定専門医/日本心臓血管外科学会専門医/心臓外科学会専門医/日本血管外科学会評議員/日本ステントグラフト実施基準管理委員会認定胸部ステントグラフト指導医(TAG, TX2, Valiant, Talent, Relay plus, Najuta)・腹部ステントグラフト指導医 (Excluder, Zenith,Endurant, AFX, Aorfix)/血管内レーザー焼灼術実施・管理委員会認定下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術指導医/日本血管外科学会認定血管内治療医

  • 百瀬 匡亨(血管外科医長)

    日本外科学会認定専門医/日本脈管学会認定専門医/日本ステントグラフト実施基準管理委員会認定胸部ステントグラフト指導医・腹部ステントグラフト指導医/血管内レーザー焼灼術実施・管理委員会認定下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術指導医/日本血管外科学会認定血管内治療医/浅大腿動脈ステントグラフト実施医

乳腺・内分泌外科

  • 篠﨑 登(乳腺・内分泌外科部長)

    日本外科学会専門医・指導医/医学博士