広報紙 vol.53しんゆりニュースレター
2022/6/1掲載
患者さん一人一人の人生に寄り添った腎不全治療を
腎臓内科・透析内科特集|広報紙
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【プロフィール】
2013年杏林大学医学部卒業。15年杏林大学医学部第一内科(腎臓・リウマチ膠原病内科)入局。17年国家公務員共済組合連合会虎の門病院分院腎センター内科。医療法人社団恵周会白河病院。18年10月より現職。
日本内科学会認定内科医/日本腎臓学会腎臓専門医/日本内科学会総合内科専門医・指導医
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当院は44科を擁する総合病院で、地域を支える中核病院の役割を担っていますが、年々診療科も拡大し、入院治療を要する患者数も増加傾向にあります。近隣病院からは当科へ検尿異常、腎機能障害など多くのご紹介をいただき、また院内でも各科診療中に生じた急性腎不全、電解質(ミネラルバランス)異常など当科の専門治療を要する相談件数も増え、連携を強くもって治療のサポートにあたっています。
腎臓内科では、文字通り腎臓に関わるすべての内科的異常を診療しています。普段なじみのある消化器内科や循環器内科と比較すると当科の認知度は低く、病院によっては標榜がないところも珍しくありません。当科が取り扱う疾患として、多くの方は腎炎や腎不全などの腎臓内科でしか診療しない疾患を想像されるかもしれませんが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をはじめ、電解質異常、自己免疫疾患、透析を含む血液浄化療法と、その守備範囲はとても広く、合併症を有する患者さんを多く診察することから、常に全身のバランスを考えて治療を行うことを心がけています。
昨今では慢性腎臓病がテレビのCMに取り上げられ、その認知度は徐々に高まっています。
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腎機能低下を阻止し、末期腎不全への進行や心血管合併症を減らすことが国を挙げての最重要課題になっています。腎臓病が進行し末期腎不全に至った場合、多くの方は透析治療を生涯続けなければなりません。
週3回通院する血液透析と、自宅で毎日かかさず行う腹膜透析のどちらも時間的制約が大きく、透析の宣告は患者さんにとって簡単に受容できるものではありません。透析により「治療中心の生活」になりがちですが、私は患者さんに透析しながらも「自分らしく楽しく生きる人生」を歩んでいただきたいと、常日頃から考えています。表題は、私が腎不全治療を行う上で最も心掛けていることであり目標です。診療を通じて人生のお手伝いができることは、我々腎臓内科医の大切な仕事の一つであると感じています。
当科は2022年度より新しい仲間も増え、総勢6名の常勤医で診療を行っており、大学病院にも負けない総合力で治療を提供してまいります。腎疾患にお困りの患者さんがいらっしゃいましたら、いつでも当科にご相談くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
腎代替療法
(血液透析・腹膜透析・腎移植)
末期腎不全に至った段階で、患者さんとそのご家族には腎代替療法について別途時間を設けてお話しております。透析については血液透析と腹膜透析の二種類を提示し、導入後の生活がどのように変化するか専任看護師と連携して具体的に情報提供をしています。また、年齢や体力面から腎移植が可能な患者さんには積極的に移植実施施設への紹介を検討しており、実際に当院からの紹介で生体腎移植をされた患者さんも複数名いらっしゃいます。
当院では年間40名の患者さんに維持透析を導入しておりますが、約半数が腹膜透析から開始されています。透析を腹膜透析(PD)から開始する「PDファースト」を掲げており、他院と比較すると腹膜透析患者さんが非常に多いことが特徴です。腹膜透析の最大のメリットは、透析開始後も尿量を長時間維持することができ、残存腎機能を保持することで生命予後の改善をもたらすことができる点です。また、時間をかけて緩やかに透析を行うため、低心機能やご高齢の患者さんでも身体への負担なく過ごすことが可能です。当院に通院されている腹膜透析患者さんの平均年齢は、日本透析医学会の統計調査と比較すると高い傾向にあります。一人一人生活の目標をもちながら有意義な「PDライフ」を送っていただいており、我々の経験からもご高齢の方でも安心して行うことができる治療であると考えています。
当科で行う透析関連の手術
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テンコフカテーテル(腹膜透析用のカテーテル)の挿入を行う稲永医師
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当科で腹膜透析の導入が多い理由の一つに、透析に関わる診断や手術を我々自身で迅速に施行できる点にあります。日本全体でみると手術を行わない腎臓内科医の方が多く、また、腹膜透析を提供できる医療施設は限られ、慣れていない腎臓内科医にとってハードルの高い治療となり、全国的に腹膜透析が普及しない要因の一つになっています。
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血液透析で使用する内シャントの造設、シャント狭窄に対する経皮的血管拡張術(PTA)も施行しており、透析に関わる一連の手技を腎臓内科で完結できるように、積極的に取り組んでいます。
腎臓内科・透析内科医師紹介
(2022年5月現在)
① 専門分野/得意な領域 ② 卒業大学 ③ 専門医・指導医・資格・公職等
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篠﨑 倫哉(しのざき みちや)(血液浄化療法センター長、腎臓内科・透析内科部長)
①腎臓疾患全般、ブラッドアクセス・腹膜アクセス手術、透析療法(腹膜透析・血液透析)を含めた血液浄化療法
②九州大学医学部卒業
③日本透析医学会専門医/日本腎臓学会腎臓専門医・指導医/日本内科学会認定医/日本内科学会総合内科専門医
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稲永 亮平(いななが りょうへい)(腎臓内科・透析内科医長)
①腎臓内科、透析内科全般
②杏林大学医学部卒業
③日本内科学会認定内科医/日本腎臓学会腎臓専門医/日本内科学会総合内科専門医・指導医
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堀 圭一郎(ほり けいいちろう)(腎臓内科・透析内科医長)
①腎臓内科・透析内科全般
②岩手医科大学医学部卒業
③日本内科学会認定内科医
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宮下 加代子(みやした かよこ)(腎臓内科・透析内科医員)
①腎臓内科・透析内科全般
②東邦大学医学部卒業
③なし
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村木 直弘(むらき なおひろ)(腎臓内科・透析内科医員)
①腎臓内科・透析内科全般
②信州大学医学部卒業
③日本専門医機構認定内科専門医
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朝比奈 謙吾(あさひな けんご)(腎臓内科・透析内科医員)
①腎臓内科・透析内科全般
②山梨大学医学部卒業
③なし
透析室
医師、臨床工学技士、看護師は、24時間いつでも、緊急時の血液浄化に対応できる様、体制を整えています。透析の患者さんの送迎車
・月水金/火木土 (いずれも午前)
・土曜日、祝日も通常通りです(日曜日を除く)
【医事課コラム】 外国人患者さんの受入れについて
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2021年の夏には待望の東京オリンピックが開催されました。川崎市では等々力陸上競技場で、英国オリンピック・パラリンピック代表チームが事前キャンプを行い、また横浜市の赤レンガ倉庫では点火セレモニーが行われました。さらに東京都多摩市内でも聖火ランナーの公道走行が予定されていたものの、残念ながら中止となってしまいました。本来であれば盛大な祭典となるはずでしたが、コロナ禍のため海外からの観光=インバウンドの制限がかかるという残念な結果になりましたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のためには仕方のないことでした。
さて私は、インバウンド・在留外国人向けの資格、外国人患者受入れ医療コーディネーター(厚生労働省委託事業)の資格を取得しました。外国人患者受入れ医療コーディネーターとは、外国人患者の受入れ時の体制整備や、来院時に安全かつ円滑に医療を提供するための院内外調整を行う医療者資格です。
当院にも留学生やお仕事で来日中の方、在日米軍基地の方など多数の外国人患者さんが来院されます。医事課スタッフの外国人向け多言語対応には限界があるので、『やさしい日本語・多言語翻訳アプリ・簡単な英語』を駆使して対応しております。外国人対応には文化の壁・制度の壁・言葉の壁がありますが、まずは言葉の壁が取れるようにコミュニケーションを重視して対応しております。もしお困りの際は医事課までご連絡ください。
当院の医事課について
※医療ツーリズムの場合は自由診療になりますので、実費を徴収しております(日本の健康保険未加入・在留カードがない場合)。
※受入れには限りがあります。ご来院の際は事前にご相談ください。