広報紙 vol.46しんゆりニュースレター

2021年9月1日掲載

常勤医11名の新診療体制で、すべての整形外科外傷の治療にあたる

  • さわぐち たけし
    澤口  医師
  • 【プロフィール】
    1979年金沢大学医学部卒業。82~84年米国ピッツバーグ大学医学部整形外科留学。85年金沢大学医学部整形外科助手。89年富山市民病院整形外科医長。94年同部長。2012年同副院長。金沢大学医学部整形外科臨床教授。20年より福島県立医科大学外傷学講座教授および現職。
    日本整形外科学会専門医/大腿骨頚部・転子部骨折診療ガイドライン委員長/日本骨折治療学会名誉会員/日本人工関節学会評議員/日本脆弱性骨折ネットワーク理事/AO Trauma Asia Pacific会長/Fragility Fracture Network Global日本代表理事
  • 外傷再建センターは、昨年4月に外傷治療のエキスパート5人からなる診療体制でスタートし、本年7月からは11人体制となりました。全員が経験10年以上の専門医です。当センターの対象とする疾患は、整形外科外傷つまり運動に関する器官である脊椎、骨盤、上肢、下肢の外傷(ケガ)です。骨折はもちろん、皮膚、筋肉、血管、神経の損傷を治療します。外傷には生命にかかわる重篤なものからスポーツによるケガまで様々で、その重症度も異なります。また最近は高齢者の骨粗鬆症による骨折が急増しています。

    外傷治療は整形外科医なら誰でも治療できるものから、骨盤骨折、開放骨折、四肢切断など高度な知識と技術を持つ専門家でなければ治療が困難なものがあります。当センターは、各分野の専門家を揃え、受傷直後からすべての外傷に対応できます。

    また当センターの特徴は、急性期のみならず、外傷後の障害(骨折が治らない、変形して骨が癒合した、関節が動かない、感染した、神経が麻痺した)に対する再建治療を得意としています。さらに当院は回復期リハビリテーション病棟があるため、術後十分なリハビリテーションが可能です。現在、救急で搬送される外傷患者さんのみならず、治療経過の思わしくない外傷患者さんの他院からの紹介を数多

  • く受け入れて治療しています。

    スタッフの専門は、松下隆センター長は四肢再建で特に変形矯正、下肢延長、感染治療では日本の第一人者です。岡﨑裕司部長は複合組織再生術・難治骨折・変形矯正、峰原宏昌部長は重度外傷・多発外傷、工藤俊哉部長は手外科・重度四肢開放骨折・組織損傷・切断四肢再接着、髙群浩司部長は手外科・上肢外科・四肢外傷再建です。さらに腹部外傷を専門とする花島資部長が加わりました。

    私は骨盤・寛骨臼骨折、関節再建を専門としております。骨盤・寛骨臼骨折は40年前から手術治療に携わり、大きな障害を残すような多くの患者さんをほぼ元通りにできています。また股関節と膝関節は、人工関節、骨切り術、靭帯再建、関節鏡視下手術を行ってまいりました。人工関節は股、膝関節で約3,000例の手術を行っており、特に人工股関節は自身の開発したもので約1,000例に治療を行い良好な結果を得ています。現在は関節外科の技術を駆使して外傷後の関節障害の治療を行っています。

    当センターは、すべての整形外科外傷に対して最高レベルの治療が可能です。急性期外傷あるいは外傷後の障害でお困りの患者さんがおられましたら、いつでもご相談くださいますようお願い申し上げます。

イリザロフ法

センター長  松下 隆
イリザロフ組織再生部長 岡﨑 裕司

本法は1950年代に旧ソ連でつくられた輪型創外固定器(りんけいそうがいこていき)を用いた骨折治療法に始まり、開放骨折、関節近傍骨折(かんせつきんぼうこっせつ)や骨脆弱性骨折(こつぜいじゃくせいこっせつ)など、難治骨折外傷治療に必要不可欠な治療方法です。創外固定は、体外から体内の組織をコントロールできるツールで、症例に応じたオーダーメイド治療を得意とします。

本邦も1980年代後半以降、先天性疾患の単純脚延長を果敢に行い、この貴重な経験から、変形矯正・骨切り術、関節固定、高度軟部組織拘縮解除、牽引関節形成や骨軟部欠損への骨移動術など、新鮮外傷のみならず画期的な四肢再建治療方法へと繋がってきました。即ち、同法は外傷治療領域の技術的躍進に必須の治療法です。当外傷再建センターは国内外イリザロフ法の指導的存在でもあります。

  • 若年者骨端線損傷後変形治癒 矯正例◆若年者骨端線損傷後変形治癒 矯正例
  • 高齢者人工膝関節置換後骨折 治療例<◆高齢者人工膝関節置換後骨折 治療例
  • 大腿骨折偽関節 チッピング法(骨粉砕延長矯正法)◆大腿骨折偽関節 チッピング法(骨粉砕延長矯正法)
  • 開放骨折後骨髄炎・骨欠損  骨短縮後骨移動術◆開放骨折後骨髄炎・骨欠損 骨短縮後骨移動術
  • 開放骨折後骨髄炎 マスカレ変法◆開放骨折後骨髄炎 マスカレ変法

骨盤骨折・寛骨臼骨折

骨盤・関節再建部長 澤口 毅

骨盤骨折や寛骨臼骨折は、交通事故、高所からの転落などで発生します。特に骨盤骨折は大量出血を伴うことが多く、救命治療として大量輸血や緊急手術が必要になります。命が助かった後は、骨盤の安定性を獲得するための手術が必要です。寛骨臼骨折は、足の付け根の関節である股関節の受け皿である骨盤側の骨折で、関節のずれが残ると関節軟骨が破壊されて変形性関節症になるため、手術により完全に元通りに戻し、強固に内固定を行い、早期に関節の運動を始める必要があります。

骨盤はそれ自体複雑な形状であるのみならず、周囲に多くの血管、神経、消化器や尿生殖器が取り囲んで骨折の内固定を難しくしています。以前は手術されないか、手術しても骨折を元通りに戻すことができず、骨盤の変形による坐位異常、歩行障害、痛みが残存することが多くありました。また寛骨臼後の変形性関節症は避けることができないものでした。しかし現在は専門家が治療を行えば、ほとんど障害を残さず元通りに戻ることが可能になっています。

また現在、骨粗鬆症による骨盤骨折が急増しています。これは多くの場合、特に大きな外傷がなくとも自然に骨折を起こすもので、腰椎の病気と診断されて見逃されてしまうことが少なくありません。早期であれば骨を強くする薬で治療できますが、痛みの強い場合やずれが大きい場合には手術による固定が必要です。

《症例1》 33歳/高所(4階)より転落受傷。骨盤骨折+左寛骨臼骨折、左大腿骨骨折

  • 受傷時受傷時

  • 手術後9カ月手術後9カ月。痛みなく普通に歩行できるまで回復。
    大腿骨骨折も治癒している。

《症例2》 72歳/交通事故による左寛骨臼骨折

  • 受傷時受傷時

  • 手術後7カ月手術後7カ月。痛みなく普通に歩行できるまで回復している。

多発外傷

重度外傷再建部長 峰原 宏昌

多発外傷とは、複数の身体部分に重度の損傷が及んだ状態をいいます。初期段階からその可能性を念頭におき、総合的に判断して治療優先順位を決定することが極めて重要であり、全身的緊急度を重視し、生命に関わる損傷に対する救命処置を最優先とします。その際、全身・局所状態を見ながら段階的に整形外科的治療(DCO:ダメージコントロールオルソペディックス)を行っていくことが、状態を改善していく意味でも重要です。

DCOとしては、急性期は創外固定による一時的固定を行い、全身状態が落ち着いた後に根治的固定(二期的固定)を行う、というのが標準的な流れとなります。当センターでは重度骨盤・四肢外傷を含めた多発外傷治療を積極的に行っています。

《 症例 》 29歳男性/交通外傷

骨盤輪骨折

左:骨盤輪骨折  右:右大腿骨骨幹部骨折+右脛骨腓骨骨幹部骨折:創外固定による一時的固定

右大腿骨骨幹部骨折+右脛骨腓骨骨幹部骨折:創外固定による一時的固定

左:骨盤輪骨折 右:右大腿骨骨幹部骨折+右脛骨腓骨骨幹部骨折:創外固定による一時的固定

マイクロサージェリー

外傷マイクロサージェリー部長 工藤 俊哉

マイクロサージェリーとは、組織欠損や損傷に対して自己組織を移植することで改善をはかる技術です。ミクロン単位の微細な血管操作を用いることで、切断された四肢を繋ぎ合わせることや、血管付き骨移植・皮膚移植(皮弁移植といいます)により他院で治せなかった難治性の骨折・組織欠損を修復することが可能です。ただし、これにはマイクロサージェリーと骨折治療の両方において高いスキルが要求されるため、どの施設でも可能というものではありません。両方を兼ね備えた外傷再建外科医は全国的にも珍しく、一貫して皮膚~骨まで幅広い外傷治療が行える強みをいかして「交通外傷・労災外傷での転院治療」はもちろん、他院で時間が経っても「感染が治らない」「骨折が治らない」などの、後遺症・難治性感染症の治療も行っています。

◆他院での骨折治療術後に耐性菌感染し、皮膚欠損・骨融解してしまった例

排膿が続き、発熱のほか骨が癒合していないため歩行困難

排膿が続き、発熱のほか骨が癒合していないため歩行困難

いったん内部の金属や汚染を除去する手術ののちに、非外傷側から血管付きの骨と皮膚を同時に移植して再建

いったん内部の金属や汚染を除去する手術ののちに、非外傷側から血管付きの骨と皮膚を同時に移植して再建

再建術後は感染の再燃はみられず、骨癒合も進む

再建術後は感染の再燃はみられず、骨癒合も進む

創部も目立たず、独歩に回復

創部も目立たず、独歩に回復

血管付きの移植骨は感染に強く、時間とともに太く丈夫になるのが特徴

血管付きの移植骨は感染に強く、時間とともに太く丈夫になるのが特徴

手外科・上肢外科

手外科・上肢外科部長 髙群 浩司

当院の外傷再建センターには日本手外科学会認定の手外科専門医が複数名在籍し、あらゆる手・上肢の外傷、外傷による合併症・後遺症の専門的治療が可能です。

指切断指再接着:指尖部も条件が良ければ接着可能です。

指切断指再接着:指尖部も条件が良ければ接着可能です。

手舟状骨偽関節:関節鏡視下手術により骨癒合が早期に改善します。

手舟状骨偽関節:関節鏡視下手術により骨癒合が早期に改善します。

指PIP関節内脱臼骨折:創外固定による骨折治療

指PIP関節内脱臼骨折:創外固定による骨折治療。

高齢者肘・肩骨折後の人工関節による関節再建

高齢者肘・肩骨折後の人工関節による関節再建:早期の機能改善が得られます。

消化器内科医師紹介

  1. 専門分野/得意な領域
  2. 卒業大学
  3. 専門医・指導医・資格・公職等(敬称略. 順不同)
  1. 松下 隆(外傷再建センター センター長)
    ①外傷、骨折、四肢再建、イリザロフ法、肘関節外科
    ②東京大学医学部卒業
    ③日本整形外科学会専門医/ICD制度協議会インフェクションコントロールドクター/日本骨折治療学会元理事長/NPO法人日本脆弱性骨折ネットワーク理事長

  2. 澤口 毅(外傷再建センター 骨盤・関節再建部長)
    ①多発外傷、骨盤外傷、関節外科
    ②金沢大学医学部卒業
    ③日本整形外科学会専門医/日本骨折治療学会名誉会員/日本人工関節学会評議員/福島県立医科大学外傷学講座教授

  3. 岡﨑 裕司(外傷再建センター イリザロフ組織再生部長)
    ①イリザロフ法による複合組織再生術、難治骨折、変形矯正
    ②愛媛大学医学部卒業
    ③医学博士/日本専門医機構整形外科専門医/社会医学系専門医協会社会医学専門医・指導医/日本職業・災害医学会労災補償指導医/福島県立医科大学外傷学講座教授

  4. 峰原 宏昌(外傷再建センター 重度外傷再建部長)
    ①重度外傷、多発外傷、骨盤骨折、四肢開放骨折
    ②北里大学医学部卒業
    ③日本整形外科学会専門医/北里大学救命救急医学元講師/AO Trauma Japan副理事長/日本骨折治療学会理事/福島県立医科大学外傷学講座教授

  5. 工藤 俊哉(外傷再建センター 外傷マイクロサージェリー部長)
    ①重度四肢開放骨折、組織欠損の再建、切断四肢の再接合・再建、手外科
    ②北里大学医学部卒業・形成外科入局後、順天堂大学医学部整形外科学教室入局
    ③医学博士/元順天堂大学浦安病院准教授/日本整形外科学会専門医/日本手外科学会手外科専門医

  6. 髙群 浩司(外傷再建センター 手外科・上肢外科部長)
    ①手外科、切断指の再接合、上肢外科、四肢外傷再建
    ②旭川医科大学医学部卒業
    ③日本整形外科学会整形外科専門医/日本手外科学会手外科専門医/日本整形外科学会認定スポーツ医

  7. 花島 資(外傷再建センター 腹部外傷外科部長)
    ①Acute Care Surgery(腹部外傷外科、急性腹症)
    ②北里大学医学部卒業
    ③日本外科学会専門医/日本救急医学会専門医/International DSTC Faculty

  8. 佐藤 宗範(外傷再建センター 医長)
    ①皮膚軟部組織損傷、手外科
    ②東京医科大学医学部卒業
    ③医学博士/日本形成外科学会専門医/日本手外科学会手外科専門医/日本熱傷学会専門医

  9. 豊永 真人(外傷再建センター 医長)
    ①難治骨折、外傷、イリザロフ法
    ②東京医科大学医学部卒業
    ③日本整形外科学会整形外科専門医/臨床研修指導医

  10. 仲野 隆彦(外傷再建センター 医長)
    ①手の外科、マイクロサージェリー、四肢骨盤外傷
    ②三重大学医学部卒業
    ③日本整形外科学会整形外科専門医

  11. 小西 浩允(外傷再建センター 医長)
    ①救急整形外傷
    ②奈良県立医科大学医学部卒業
    ③日本整形外科学会整形外科専門医