看護師コラム

ストップ!転倒 ~もし転倒しても、重篤な怪我にならないように~

医療安全管理者 上路 麻美看護師

2022/7/8掲載

  • 転倒予防,
                                  腰痛予防
  • 「スベっちゃだめよ!転倒予防、ムチャしちゃだめよ!腰痛予防」のポスターや、お笑い芸人による「お笑いも職場もスベリやムチャはアカン!!」の動画をご覧になったことはありますか?

厚生労働省では2015年から「STOP! 転倒災害プロジェクト」を推進しており、企業や各団体が様々な対策をしています。

私は医療安全管理者として「重篤な怪我になる転倒をなんとか減らしたい!」という切実な思いがありますが、病院内だけでなく職場や自宅でも、老若男女を問わず、「ストップ!転倒」の思いはどこでも誰でも同様です。

転倒・転落件数は交通事故死より多い

高齢者(65 歳以上)の不慮の事故による死因のうち交通事故による死亡者数が2,199人に対し、転倒・転落による死亡者数は8,851人でした。高齢者の転倒・転落による死亡者数は交通事故による死亡者数のなんと約4倍です。(厚生労働省 令和2年人口動態調査より)

厚生労働省 令和2年人口動態調査より(厚生労働省 令和2年人口動態調査より)

また、高齢者(65歳以上)の介護が必要となった主な原因は、「認知症」「脳血管疾患」「衰弱」の次に「骨折・転倒」が13.0%で第4位となっています。高齢者の「転倒・転落」は骨折や頭部外傷を招き、介護が必要になったり、最悪の場合死に至ることもあります。(厚生労働省 令和元年国民生活基礎調査より)

では「骨折などの重篤な怪我となる転倒」を予防するにはどうしたらいいでしょうか?

転倒・転落の要因は4つ、その対策は?

転倒・転落には4つの要因があると言われています。

  1. 管理:看護・介助者の見守りの有無や方法によるもの
  2. 方法:介助方法によるもの
  3. 環境:ベッド柵・床の状態・段差・明るさなど環境によるもの
  4. 人:感覚機能障害・認知症・薬物(眠剤・多剤服用)・遠慮など心的状況によるもの

当院の2021年度の「転倒による重篤な怪我」について詳細を調査したところ、88%が65歳以上で82%が70歳以上でした。また、転倒アクシデントのうち60%は入院・病棟の移動・部屋の変更などで環境が変化してから4日以内の転倒でした。更にそのうちの80%は「環境が変化して2日目の夜間帯」に発生していました。

環境が変化することで高齢者の転倒リスクは急激に上がることがわかりました。これは入院・病棟の移動・部屋の変更、あるいは旅行先などでも同様ではないでしょうか。「布団と思ってベッドの上に立ち上がろうとした」「いつもより暗かった」「トイレが遠い」「扉がいつもの逆」「段差に気づかなかった」など、環境が変化している時は転倒の注意が必要です。

また、入院すると病気や手術・薬の投与の影響により、転倒リスクは更に上がります。医療者から歩行時に介助が必要と言われた方は「いつもできていた」「人に迷惑をかけたくない」「自分でできる」と思っていても、病院に入院した時は遠慮せずにナースコールを押してください。看護師や理学療法士の介助を受けて歩行するようにしましょう。

転倒を予防しましょう!

厚生労働省のホームページでは「転倒予防・腰痛予防の取組」など、転倒の予防方法が紹介されています。

3つの転倒予防

  1. 整理整頓・・・歩きにくいとつまずきの原因になります。
  2. 清掃・・・床が濡れていたり、油がついていると滑ります。
  3. 運動習慣・・・転びそうになった時にぱっと手や足を出すためには瞬発力や筋力が必要です。

その他、転倒予防には「踵の高くない滑らない靴の選択」「両手が塞がらないリュックの使用」「つまずかないように散らかさない」「階段の滑り止めや手摺りの設置」なども対策の一つになります。

また、コロナ禍で運動する機会が減り、とっさの動きができなくなるなど、筋力の低下も重篤な怪我に繋がります。当院でもリハビリスタッフがご自宅でできる筋力低下防止の体操動画を配信していますので、ぜひご活用ください。

転倒による重篤な怪我を予防しましょう

さらに、女性・高齢者に多い骨粗鬆症は、ちょっとした転倒でも骨折につながります。食事や運動により骨粗鬆症を防ぎ、転倒による重篤な怪我を予防しましょう。