看護師コラム

50歳以上の男性の皆さん、PSA検査を受けませんか?

がん化学療法看護認定看護師 有安 晴美

2022/5/28掲載

PSA検査とは

みなさん、PSA検査という言葉を聞いたことはありますか?PSA検査は、男性にある臓器である前立腺という臓器から血管に出てきたたんぱく質分解酵素の量を測定する検査です。この検査結果の数値によって前立腺がんの状態がわかる指標になっています。がんの治療は、早期発見、治療をすることが重要になります。

前立腺がんは、ゆっくりと進むがんなので、なかなか気づくことができません。そこでPSA検査を行うことにより、早期発見につながり、早期に治療を開始することができます。今回は、前立腺がんのことについて話していきたいと思います。

1981年より日本人の亡くなる方の1位は悪性新生物(がん)になり、今もなお1位を継続しています。今は、日本人の2人に1人ががんにかかると言われています。がん細胞は1日に5000個できていますが、そのがん細胞を免疫細胞がやっつけています。遺伝子が傷ついて異常細胞となるとがん細胞が作られ増殖していきます。全国的にコロナ禍となったことが原因で検診を受ける人の人数は現在減少傾向になっています。そのため、早期発見して治療をすれば大丈夫だったものが、進行した状態で発見されるケースも増えてきています。

前立腺がんの罹患数は増加している

2019年のがんに罹患した人の統計の総数は、1位 大腸がん、2位 肺がん、3位 胃がん、4位 乳がん、5位 前立腺がんとなっています。男性の第1位は、前立腺がんです。前立腺がんは、かかる人は増えていますが、なかなかこの情報を知っている人は少ない現状があります。

  • 食生活
  • 前立腺とは、男性の尿がたまる膀胱の下の尿道の周りを取り囲んでいる臓器で、栗の実のような形をしていています。前立腺がんの危険因子は、動物性脂肪食のある食生活、肥満、前立腺がんの家族歴、遺伝性乳がん卵巣がん症候群、高齢になるほど発生頻度はたかまります。日本人の食生活が欧米化していることも原因の一つと言われています。

前立腺がんは、前立腺の細胞が正常の細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生します。症状は、早期の前立腺がんは、多くの場合自覚症状がありません。尿が出にくい、排尿回数が多くなるなどの症状が出ることもあります。進行すると、血尿や腰痛などの骨への転移による痛みやリンパ節、肺、肝臓へ転移などがあります。前立腺がんは早期に発見すれば治癒することが可能です。多くの場合は、比較的ゆっくりと進行していきます。

PSA(前立腺特異抗原)とは、前立腺の細胞で作られるたんぱく質分解酵素です。前立腺に何か異常があると、PSAが血管内へ漏れ出します。その結果、血液の中のPSAの値が高くなります。前立腺肥大症や前立腺炎でも値は上昇します。PSAは、前立腺がんの状態を調べるための腫瘍マーカーです。PSA検査は、前立腺がんを早期に発見するための血液検査です。少量の血液で調べることができます。PSA検査の結果が基準値を超える場合は精密検査が必要です。PSA値が基準値未満であっても、定期的な検査をおすすめします。

PSA検査の重要性

アメリカで、PSA検査は意味がないといわれていたため、PSA検査の数が減少していました。それによって、最近、アメリカでは転移性の前立腺がんになってようやく発見される人が増加しています。以上のことから、PSA検査は、早期発見のために重要となっています。前立腺がんの家族歴がある方、人間ドックの方は、40歳からPSA検査をおすすめします。

  • がん健診を受けましょう
  • 何も症状がないから大丈夫ではなく、がん検診とともに、PSA検査を追加して、体調を確認していくことが重要です。検診では、がんでないのに「要精密検査」と判定される場合や、がんがあるのに見つけられない場合があります。検診の精度は100%ではありません。ただし、1回の検診でがんと診断できなかった場合でも、毎回検診を受け続けることにより、がんを発見できる確率は高まります。

    このため、がん検診は、適切な間隔で受け続けることが大切です。また、がん検診で「異常なし」と判定されても、気になる症状がある場合には、早めに医療機関を受診してください。がん検診は、早期のがんを見つけて早めに治療を行うことで、がんによる死亡率を低下させるメリットがあります。

50歳以上の男性の方は、がん検診にPSA検査を追加することをお勧めします。少量の採血検査で、前立腺がんの早期発見につながっていきます。家族や知人の方にもがん検診の重要さを伝えて、がん検診を行い、健康を保ち自分らしく生活していきましょう。

【引用参考文献】
・国立がん研究センター がん情報サービス
・佐々木常雄監修:がん薬物療法看護ベスト・プラクティス、照林社、2020
・国立がん研究センター内科レジデント編集:がん診療レジデントマニュアル 第8版、医学書院、2019
・2018年改訂 もっと知ってほしい前立腺がんのこと
・日本 対がん協会