栄養管理科コラム

「炭水化物(主食)を減らしすぎていませんか?」

栄養管理科 管理栄養士 吉田 咲子

2022/5/2掲載

減量やおかずを多く食べてしまうため、炭水化物(主食)を抜きにしたり、減らしていることはありませんか。今回は炭水化物の役割と摂取目標量についてお話します。

炭水化物の役割と摂取目標量

炭水化物は、ヒトの消化酵素で消化できる易消化性炭水化物と消化できない難消化性炭水化物に分類できます。(前回は難消化性炭水化物の食物繊維についてお話しました。)

  • 炭水化物の役割と摂取目標量
  • (易消化)炭水化物の最も重要な役割は、エネルギー源です。約4kcal/gのエネルギーを産生し、その栄養学的な主な役割は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣等、通常はぶどう糖(グルコース)しかエネルギー源として利用できない組織にぶどう糖を供給することです。

脳は、体重の2%程度の重量ですが総基礎代謝量の約20%を消費すると考えられています。基礎代謝量を1500kcal/日とすれば、脳のエネルギー消費量は300kcal/日になり、これはぶどう糖75g/日に相当します。上記のように脳以外の組織もぶどう糖をエネルギー源として利用することから、ぶどう糖の必要量は少なくとも100g/日と推定され、最低必要量はおよそ100g/日と推定されます。しかし肝臓からも必要に応じてぶどう糖が供給されるため、真の必要量は明らかにできないとされています。

では、どのくらいを摂取目標量とすればよいでしょうか。「日本人の食事摂取基準2020年版」より、健康の保持・増進、生活習慣病の発症予防の目的から、成人・高齢者・小児の目標量の範囲は摂取エネルギーの50~65%となっています。

例えば、1800kcal/日を摂取する場合、炭水化物の摂取目標エネルギー量は900~1170kcal/日となり、炭水化物量は225~292g/日となります。白米でいうと、おにぎり6個分(米飯600g)が936kcal、炭水化物量は223gとなり、1日の目安になります。

主食を摂ると太るの?

よく、主食を摂ると太ると聞きますが、炭水化物摂取制限の効果は肥満症患者および過体重者を対象とした多数の介入試験において炭水化物摂取量の制限によって総エネルギー摂取量を制限すれば減量効果を期待できるが、炭水化物摂取量の制限によって減少させたエネルギー摂取量を他の栄養素(脂質またはたんぱく質)で補い、総エネルギー摂取量が変わらない場合には減量効果は期待できないと示されています。

食事は偏らず、主食・主菜・副菜をそろえましょう。そのうち、半分くらいのエネルギー量は主食から摂取することをおすすめします。

※医師から食事療法の指示がある場合は、その指示に従いましょう。

【参考文献】
日本人の食事摂取基準2020年版、栄養がわかる体によく効く食材事典(学研プラス)、文部科学省 食品成分データベース