ドクターコラム

マイコプラズマ肺炎と風邪の違い

呼吸器内科 医長  赤司 俊介

掲載日:2024年12月6日

はじめに

  • 咳込む人のイメージ
  • 2024年、マイコプラズマ肺炎が全国的に流行しています。この病気は4年周期で流行する傾向があり、特にスポーツ大会やイベントの多い年に増加することから「オリンピック病」とも呼ばれることがあります。国立感染症研究所(感染研)によると、今年の患者報告数は過去最多を記録しており、前年の約40倍に達しています。

マイコプラズマ肺炎と風邪はどちらも呼吸器に影響を及ぼす病気ですが、原因や症状、治療法に大きな違いがあります。

1. 原因

風邪はライノウイルス、コロナウイルスなどのウイルスによって引き起こされますが、マイコプラズマ肺炎はMycoplasma pneumoniaeという細菌が原因です。この違いにより、風邪には抗生物質が効かない一方で、マイコプラズマ肺炎には特定の抗菌薬が有効です。

2. 症状

  • マイコプラズマ肺炎のレントゲン画像マイコプラズマ肺炎のレントゲン画像
  • 風邪の主な症状は、鼻水、喉の痛み、くしゃみ、軽い咳などで、発熱はあっても軽度です。一方、マイコプラズマ肺炎では、初期症状は風邪と似ていますが、その後乾いた激しい咳が数週間続き、場合によっては高熱や胸の痛みを伴うことがあります。また、重症化して入院治療が必要になる可能性もあります。

3. 診断と治療

風邪は症状に基づいて診断され、特別な検査は必要ありません。治療も対症療法のみで改善します。しかし、マイコプラズマ肺炎では、血液検査での抗体や咽頭での抗原検査で確認することもあります。また、胸部X線検査で肺炎像を認めることがあります。

治療では、マクロライド系(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)やテトラサイクリン系(ミノサイクリンなど)、ニューキノロン系(レボフロキサシンなど)の抗菌薬が使用されます。ペニシリン系やセフェム系などよく使われる抗生物質に効果はなく、マクロライド系の抗生物質への耐性菌も増えているため、肺炎の診断で抗生物質を内服しても改善しない場合には専門の呼吸器内科医師の診察を受けることが重要です。

4. 感染予防

マイコプラズマ肺炎は飛沫感染や接触感染によって広がります。2週間程度の潜伏期間があり、4−6週間の感染力を持ちます。小児の感染が多く、そこから家族の大人へ感染するパターンがよく見られます。感染予防には、マスクの着用、手洗い、咳エチケットが効果的です。新型コロナウイルスほど感染力は強くありません。風邪の予防策と基本は同じですが、流行時には特に注意が必要です。

おわりに

マイコプラズマ肺炎は、風邪に似た症状から始まりますが、長引く咳や高熱が特徴です。今年のような流行期には早めの診断と治療が重要です。咳が長引く場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。