ドクターコラム

自分の腎臓を守ってほしい! ~慢性腎臓病(CKD)を知っていますか?~

腎臓内科・透析内科 医長 稲永 亮平

掲載日:2022年2月25日

  • 慢性腎臓病とは
  • 慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、腎臓の働きが徐々に低下していくすべての腎臓病の総称です。CKDの患者さんは、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患発症の危険性が極めて高く、また最近ではコロナウイルス感染症の重症化因子の一つになっており、CKDが命と密接に関係する疾患であると認識されはじめました。CKDから自分の腎臓を守るためにどうしたらよいか、コラムを通して一緒に考えていきましょう。

慢性腎臓病(CKD)とは

腎臓は、血液から体内に蓄積した水分や老廃物を「尿」として排泄する重要な臓器です。

CKDは、「腎臓の障害(蛋白尿など)、もしくはGFR(糸球体濾過量)60 ml/分/1.73m2未満の腎機能低下が3カ月以上続くこと」と定義されますが、これは腎臓の「構造」が壊れている、もしくは尿を作り出す「機能」が低下していることを意味します。

健康診断では、尿蛋白の有無を尿試験紙法(-や+で表記される)で判断し、腎機能は血液検査のクレアチニンの値から計算した推算糸球体濾過量(すいさんしきゅうたいろかりょう)(estimated GFR:eGFR)を用います(クレアチニンを測定した場合、自動的に検査結果にeGFRが記載されます)。 

慢性腎臓病(CKD)が進行すると

CKDは、尿蛋白と腎機能(GFR)を組み合わせた「病期分類(CKDの重症度分類)」(図1)を用いて、その経過をみていくことが重要です。

慢性腎臓病(CKD)の重症度

上の図にある緑色→黄色→オレンジ色→赤色ほど腎不全が進行していることを意味し、心血管死亡(脳卒中や心疾患による死亡)や末期腎不全への進展リスクが高くなることがわかっています(図2)。CKDは腎臓だけの問題ではなく、全身の血管系の問題として考える必要があります。

CKDでの心血管死亡と末期腎不全

腎臓は沈黙の臓器と言われており、腎臓の機能がおおよそ30%以下になるまでは症状が現れず、自覚しにくいことが特徴のひとつです。逆に、腎不全の症状である倦怠感、食思不振、夜間頻尿、尿の泡立ち、むくみなどに気が付いて受診された場合、すでに腎不全が進行して発見されるケースも少なくありません。

慢性腎臓病(CKD)を早期発見する方法

CKDの発症や進行を未然に防ぐためには、何よりご自身で腎臓の異常を早期発見することが重要です。なぜなら腎臓は一度機能を失うと元に戻すことはきわめて難しいとされているからです。もちろん早期発見できれば治療により回復する可能性もあるため、最低でも1年に1回は健診を受け、血液検査(クレアチニンを測ることが重要!)と尿検査を合わせて行うようにしましょう(片方だけではCKDを見逃してしまうことがあります)。

腎臓に異常が見つかった場合は、速やかに病院で精密検査を行い適切な指導を受ける必要があります。また、腎機能(eGFR)の低下、血尿や蛋白尿が持続する場合は、一度は腎臓内科専門医の診察を受け、腎生検(腎臓に直接針を刺し、採取した組織を顕微鏡で調べる検査)で詳しく原因を調べることも重要です。

慢性腎臓病(CKD)の原因と治療

CKDは、メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病などの生活習慣病として知られている病態から発症することが多いです。2020年度末の透析学会の統計調査では、透析導入の原疾患の第一位は糖尿病を原因とする糖尿病性腎症、第二位は高血圧を原因とする腎硬化症であり、腎疾患と生活習慣病は密接に関係していることが分かります。

喫煙、食塩の過剰摂取、過度の飲酒、鎮痛薬などの多用などもCKDの発症と重症化に関与しており、CKDの治療は、日々の生活習慣の改善、食事療法や薬物治療による血圧管理、脂質管理、血糖管理、塩分摂取制限などを総合的に行うことが必要です。

CKDは早期発見、早期治療介入により、重症化し透析に至らないようにすることが可能な疾患となってきています。ご自身の腎臓に不安をお持ちの方は、是非一度腎臓内科を受診してみてはいかがでしょうか。