掲載日:2026-7-7
アレルギー性鼻炎は、今や国民病と言われるほど罹患率の高い、よく知られた病気の一つです。
アレルゲンという物質を吸い込むことで、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりを引き起こす厄介な病気です。アレルゲンはスギやヒノキなどの花粉が有名で、この文字を読むだけでもかゆくなる人がいるかもしれません。
スギやヒノキは、一般的に本州では年明けから少しずつ飛び始め、5月の連休明けまで飛んでおり、ピークは2月、3月です。スギやヒノキだけに反応する花粉症の人は良いですが、夏場にも鼻の症状で困っている人もいます。どのような病態なのでしょうか?
花粉シーズンが終わっても鼻がムズムズする理由
くしゃみ、鼻水、鼻詰まりを引き起こすのは、スギやヒノキの花粉症だけではありません。ダニやハウスダスト、ペットなどにアレルギーのある方は、一年中症状に悩まされます。「寒暖差アレルギー」という名前もよく耳にしますが、厳密にはアレルギー性鼻炎ではないものの、温度差や湿度など急に空気が変わったときに起きる症状で、季節に関係ありません。また関東地方では、スギやヒノキ以外にも、イネ科の花粉は5月から10月まで、ブタクサやヨモギの花粉は10月に飛んでいますので(図1-3)、夏場から秋にかけての症状は、もしかするとこれらの花粉によるものかもしれません。
アレルギー性鼻炎はどうやって診断する?
アレルギー性鼻炎の確定診断は、血液検査や皮膚テストで行われます。ところが、予想に反してこれらの検査で陽性にならないことがあります。血液検査や皮膚テストは、免疫の異常が全身に及んだ場合に陽性となります。しかし、鼻粘膜の表面ではアレルギーの反応が生じているのに、全身の免疫系にはまだ異常が生じていない状態があります。
局所的なアレルギー性鼻炎(Local Allergic Rhinitis)と呼ばれる、2024年のガイドラインに初めて載った新しい病態です(表)。アレルギー性鼻炎の確定診断はつかないものの、スギやヒノキの花粉、ダニ、ハウスダストなどの関与が強く疑われる場合、この病態が影響しているかもしれません。
アレルギー性鼻炎は、花粉やダニのようなアレルゲンを吸入することで生じますが、アレルギー性鼻炎以外の鼻炎にも注意が必要です。寒い季節に温かい食事をした際、鼻水が止まらないことがあります。これは血管運動性鼻炎と言われ、自律神経の反射による症状と言われます。高齢者に多いですが、なかなか治療薬の効果が乏しく、ハンカチやティッシュを片手に食事してもらうことが多いです。お仕事で揮発性の物質を扱う場合、例えば工事現場の塗装業や美容室では、化学物質が原因となって症状が出ることがあります。これは気密性の高いマスクが予防法になります。
点鼻薬の「使いすぎ」が引き起こす悪循環
鼻詰まりがひどいとき、ドラッグストアで購入した点鼻薬を「シュッ」とスプレーすると、一瞬で鼻がスッと通る――。そんな経験がある方、あるいは日常的に使っている方は、少なからずいるのではないでしょうか。初めは良く効くけど、そのうち効かなくなってきて、1日1回が2回、3回に増え、1週間でやめられず、1か月、半年、1年と使い続けてしまいます。
これは耳鼻咽喉科医が一番注意しなければならない「薬剤性鼻炎」、いわゆる「点鼻中毒」です。一日中かつ一年中、鼻詰まりが気になって鼻をすすっていることが特徴です。
血管を収縮させる成分が入っている点鼻薬なので、初めは非常に良く効くのですが、使い続けると血管が収縮しなくなり、常にむくんだ状態になります。その病態が近年明らかにされました(文献)。血管が収縮すれば血液が隅々まで行き渡らなくなり、末端の細胞から新たに血管を作ったり血管を拡張させたりするホルモン(VEGFやNO)が分泌されます。そのため、粘膜がむくんでしまうのです。
この状態で鼻詰まりを改善させる手術をしてしまうと、血管が収縮しなくなっているため出血量が多くなってしまいます。薬剤性鼻炎の治療方法は、「ただちに点鼻をやめること」です。血管収縮作用のある成分の入っていない点鼻薬に変更し、1週間すれば元に戻ることが多いです。ご自身で使っている点鼻薬を確認していただき、血管収縮成分が入っている場合、お近くの耳鼻咽喉科に相談してください。
Alev Cumbul and Fuat Bulut. The importance of vascular epithelial growth factor (VEGF) and inducible nitric oxide synthase (iNOS) in rhinitis medicamentosa pathogenesis: An experimental rat model study. Histol Histopatho. (2022) 37: 261-267