掲載日:2026-6-6
麻しん(はしか)が流行しています。
ニュース等でも報道されている通り、各地で感染報告が相次いでおり、改めてワクチンの重要性が注目されています。麻しんの感染拡大を防ぎ、ご自身や大切な家族の健康を守るために、以下の点について今一度ご確認をお願いいたします。
- 予防接種歴を確認しましょう
過去に2回接種をしていない方、接種歴が不明な方は任意接種を検討 - 定期接種の対象(1歳、小学校入学前1年間)で未接種の方は早めに接種しましょう
- 麻しんが疑われる場合※は、事前に麻しんの可能性について連絡してから医療機関へ
※麻しん患者と接触した場合、または接触が疑われる場合
熱、発疹、咳、鼻水、結膜充血、目やに、などの症状が見られる場合
日本国内で麻しん(はしか)が増えています
でも、いったいどうして騒がれているのでしょうか?
麻しんは、麻しんウイルスに感染することで発熱、発疹が出る病気です。「ウイルスに感染して熱が出ることなんて、よくあること。どうして麻しんは、患者さんが一人いただけでも大騒ぎするの?」そんな疑問にお答えします。
非常に感染しやすい
麻しんウイルスはとても感染しやすいです。
「基本再生産数」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。一人の人が何人に感染させるか、という数字です。毎年流行するインフルエンザは1.3、新型コロナウイルスでは1.4~2.5と言われていますが、麻しんは12~18。インフルエンザの約10倍の感染力があります。
麻しんはどのように感染するのでしょうか。インフルエンザや新型コロナウイルスは「飛沫感染」。咳やくしゃみによって飛び散った飛沫にウイルスが含まれるため、マスクやパーテーションで予防できます。しかし、麻しんウイルスは「空気感染」。つまり空気中をウイルスがふわふわと飛び回って感染します。ですので、「同じ空間にいただけ」で感染してしまうのです。不織布マスクをしていても防げません。家、教室、病院の待合室の他、電車や公共施設などで、麻しん患者さんとたまたま居合わせただけで感染する可能性があります。
免疫のない人が麻しん患者さんと同じ部屋にいると、約90%の人が感染すると言われています。
気付かないうちに感染させているかも?
では、発症してから隔離すればよいかというと、それでは間に合いません。
熱と発疹が出てから麻しんと診断されることが多いのですが、「発疹が出る4日前から感染力を持つ」のです。症状が出る前、診断される前から他者に感染させてしまうため、防ぎようがありません。
重症になりやすく、死亡することも!
麻しんは、重症になりやすい感染症です。熱と発疹が出るだけ、ではありません。約3分の1の人に肺炎、中耳炎、脳炎などの合併症が起こります。死亡率は0.1%、つまり1000人に1人の割合です。特に1歳未満の子どもで死亡率が高いことが知られています。
また、特に1~2歳の小さな子どもでは、無事に治って一安心と思っても、数年後に脳炎(亜急性硬化性全脳炎)という非常に重い脳の病気になることがあります。
妊婦が感染すると流産・早産のリスクが上昇することも知られています。
治療法は?
残念ながら、麻しんの治療薬はありません。安静と水分・栄養補給、熱に対しては解熱剤、咳や鼻水に対してはかぜ薬などで対処します。重い肺炎や脳炎の場合には入院治療が必要です。
どんな人がかかりやすい?
- ワクチンを受けていない人、または1回しか受けていない人
- これまでに麻しんに罹ったことのない人
- 1歳未満の乳児
ワクチンは1回接種で93~95%、2回接種で97~99%の予防効果があります。
最近の国内での発生報告では、20~39歳が最も多くなっています。これは、この世代は小児期にワクチンを1回しか受けていない人が多く、接種から時間がたっているために免疫力が落ちてきている(Vaccine Failure)人が多いからだと考えられます。
定期接種では1歳になったら1回、小学校に入学する前の年に1回、の合計2回接種することになっています。もし2回の接種をしていない場合は、いつでも接種可能ですので、気づいたときに接種しましょう。
接種したか、罹患したかわからない!?
分からない場合は、抗体検査で免疫があるかどうかを確認できます。罹ったことはないが、ワクチンを打ったかどうかわからない場合は、ワクチンを接種することが推奨されています。
ワクチンの危険性は?「一度かかれば免疫ができる」?
麻しんワクチンは「生ワクチン」といって、毒性を非常に弱くしたウイルスで作られています。他の予防接種と同様に、発熱、発疹、注射部位の腫れなどが見られますが、軽度で、自然に治ります。重い副反応としてアナフィラキシー反応などが報告されていますが、ごく稀(0.1%未満)です。
自然感染した場合は終生免疫を獲得できますが、重篤な合併症や死亡のリスクがあります。ワクチンでの死亡は250万接種に1例との報告もあり、感染するよりも圧倒的に安全です。
(1). 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
(2). 学校における麻しん対策ガイドライン第二版作成 国立感染症研究所感染症疫学センター監修 文部科学省、厚生労働省 平成30年2月作成
(3). 森野紗衣子:新型コロナ流行後 再興した感染症:世界と日本 麻疹:臨床とウイルス 2025:53(2):100-108.